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38.遅滞『実はかなり出遅れているらしい』

 結局の所、矢筒を皮を利用して作り直し改造するところから始まって、複数種類のボルトを持ち歩く事になった。


 腰のベルトから吊り、膝上のベルトで固定する矢筒には〔改造ボルト〕〔毒ボルト〕〔麻痺ボルト〕〔炸裂ボルト〕を別けてしまってある。矢筒は一応区切ってあるが、間違えて使わないようにするには少し練習が必要だろう。


 今までは瓶に針先を漬ければ勝手に吸い上げてくれたのだが、ボルトにそんな能力は無いので、予め中空のボルトの中に仕込んで置くしかなかった。


 攻撃力は上がったものの、利便性はマイナスと言う所、しかし瞬間的に矢を使うにはこれで良かったのかも?まぁ、全てにおいて完璧という訳にはいかないけど、状況や装備に合わせて上手くやっていくしかないだろう。


 ちなみに〔改造ボルト〕はただの中空の金属矢だが、刺さると出血状態にすることが出来る。多分、中空のボルトから血が抜けるという設定なのだろうが、グロ表現はされていないので、そこは良かった。


 さて、問題は敵の防御力を下げる酸をどうするかだ。


 何しろ自分の攻撃力は非常に低い。防御力低下デバフはマストと言っても過言ではない!過言か?しかし、中空ボルトは金属製で酸とは相性が悪く、酸は仕込む事が出来なかったのだ。


 何にせよ使える手札が減るのは困るので、方々……と言っても顔馴染みの店やら訓練場やら歩き回り、手に入れたのがまさかの水鉄砲。


 自分が手に入れた銃器の三番目がこんなおもちゃになるとは……ガラスで出来たそれは、片手に収まる程度の透明なアレで、中に酸を入れても平気だが、飛距離は10m前後とかなり微妙性能。


 あとはもう、瓶を投げつけるしかない。


 と言う事で左手でも抜けるようにホルスターと、薬剤の瓶ホルダーに、〔錠剤〕用ケースホルダーと、かなり左手も忙しくなりそうだ。


 いずれにせよ切れる手札を<調合>中心に広げていき、選択肢広げつつ何とか戦えるように身の回りを整えた。


 そんなある日の事。


 「ラビはマジでいつまでクロスボウ使うんだ?」


 「え?駄目ですか?」


 いつものコットさんとのやりとりが始まってしまった。


 「駄目ってか、責任感じちまってさ。何だかんだラビには結構期待してるって言うか、面白い奴だなって思ってるんだぜ?新人の内からPKされてもやった相手探してやり返す所とか、このゲームには凄い向いてるなってさ。俺はあまり戦うの得意じゃないからガンスミスなんてやってるけど、戦う奴が嫌いな訳じゃない。そんな中でラビは見てて面白いし、つい何かと口出ししたくなっちまう。だからクロスボウは程々にしてもっとお前に合ったメインウエポンに変えてもいいんだぜ?クロスボウの熟練度が溜まればその分他の熟練度が溜まりにくくなるんだしさ」


 そんな事言われても自分には銃のあの大きすぎる音がきついのだ。


 自分に好意的に接してくれる人だからこそ言えない。落胆されたり期待を裏切ったりするのが怖い。


 「おい!コット!だから言ってるだろ?ラビのメインウエポンはディテクティブスペシャルなんだよ!でも小型拳銃は撃ち合う武器じゃないだろ?だからラビは動きを止めるのに特化したクロスボウなんだよ!」


 ジョンさんが何故かいつも自分の肩を持ってくれるが、いい人なんだろう。だがそれ以上に何か執着も感じる。


 「いや、それは分かるけど、だってよ……タツどころかあの女子二人組みまで新人終わったのにまだラビは赤襟のままなんだぞ?そりゃ成長の仕方は人それぞれかもしれないけど、最初期の初期でこんなに差をつけられたら心配にもなるだろうが?」


 「ばっか!お前は本当に馬鹿だな~『大器晩成』って言葉知らないのか?ラビの器はワールドクラスなんだよ!別に躓いてる訳じゃねぇ!今は土壌を丁寧に整えてる段階なんだっての!俺やステンを思い出してみろ?散々馬鹿にされたよな?でもステンは今や……」


 「お前らはなんか最初からスペシャルな感じしてたじゃん?ラビは何か……普通じゃん?だったら普通にもっとちゃんとした選択肢を教えてやるのが新人に優しいガンスミスだろ?」


 「はぁ……そんなお前にこんな言葉をpresent for you!『大賢は大愚の如し』俺の勘が言ってんだよ。ラビは只者じゃねぇってよ」


 「勘ってさぁ。俺が新人にここまで入れ込む事無いのは知ってるだろ?誰にでも優しく丁寧にがモットーよ?そりゃさ?でもそれはこのゲームが好きだから新規ユーザーが少しでも長くこのゲームを楽しめるようにって話じゃん?」


 「おいおい、よく考えろよ?ラビのメインウエポンはディテクティブスペシャルだぞ?いいか?お前のすぐ外れる予想とは違うんだ。マジの推理力を持って、弾丸一発の重みを知る新人だぞ?俺やお前の常識で縛っていい相手だと思うのか?もう少し信じて好きにやらせてやったらいいんじゃないか?」


 コットさんが長考に入ってしまったので聞いてみる。


 「あの……自分ってそんなに不味い感じなんですか?」


 「う~ん、まぁ、なんだ?そろそろ新人卒業を真面目に考えてもいいんじゃないか?」


 「装備も整ったので次の段階と言うのは考えてましてけど、どうすれば?」


 「そりゃ、そんなに難しくないだろ?誰にいつもクエスト受けてたんだ?面倒でもコツコツクエスト受けてれば、ちゃんと次の段階に行けるぞ?ゲームなんだから」


 なる程!つまり、自分が次に行くべき場所は!

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