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33.『赤襟殺人事件-真相-』コットの事件簿

 予想通りと言うかなんと言うか、ブルの居場所は案の定あっさりと見つかった。


 まぁ、当人は隠れる気も何も無いのだから当たり前だろうが、第二街区でなにやら新人達に話しかけている所に、声をかけた。


 「よう、ブル……こんな所で、何やってるんだ?新人の街にいるなんて珍しいじゃないか」


 「どうしたんだ?揃い踏みで?」


 「おいおい、質問してるのはこっちなんだが、まあいいや。こっちの二人組みの嬢ちゃんに見覚えはあるな?」


 「……そりゃな。工場区で新人が撃たれた所を見てた子達だろ?それがどうした?」


 平静を装っている様だが、はっきり言って内面が透けて見えるぜ?動揺してるんだろ?


 思わずニヤツキながらブルに一歩近寄ると、小首をかしげながらこちらを見返してきた。


 「まぁ、なんだ?お前も知ってるだろ?コイツの病気」


 「……なるほどな。別に知らない仲じゃないし、うちのガンスミスじゃ手の回らない所はいつも助けて貰ってるしな付き合おうか」


 「いい度胸だ!ブル!俺の推理を聞き終わってもその余裕が続くかな?」


 「多分大丈夫だと思うよ僕は」


 「ならば言わせて貰う!犯人はこの中にいる!」


 「いや、だからブルが被疑者なんだから話を聞くって事じゃないのか?」


 「そうなんだけど!こういうのは様式美だから!」


 「で?俺が何の犯人なんだ?」


 「最近巷を騒がせる新人狩りPK!それはお前だ!」


 「俺じゃないぞ」


 「ほれ言った事じゃない。他探しなよ」


 「いや、早いんだよ!何の推理もしない内から『俺じゃないぞ』で終わるとか、絶対おかしいだろ!」


 「何で俺だと思ったんだ?」


 「流石ブル!大人だな!それはこの二人の証言から明らかだ。何しろこの二人はラビが撃たれたのに、銃声が聞こえなかったと証言している!つまり、サプレッサー付の銃を使うお前の仕業だ!」


 「根拠が薄いな。証拠はあるのか?」


 「お前がやっていないと言う証拠もないだろ!寧ろ状況がそう語ってる!」


 「まぁ、確かに工場区は新人が戦闘を覚えやすいように内部構造は単純だし、遮蔽物はあれども、隠れる場所は少ない。よっぽど熟練の隠蔽使いでもなければ、隠れきるのは難しいかも知れん」


 「だろ!そうだろ?やはりブル!お前が……」


 「だがな~やったと言う証拠よりやってないと言う証拠を出す方が難しい。消極的事実の証明や悪魔の証明って奴だな。よって誰かを疑う場合にはやったという明確な証拠を出す必要がある」


 「くっくっく!語るに落ちたな!」


 「いや、何も落ちてなかったと思うよ?僕は」


 「俺も何がおかしいのか分らなかった」


 更には二人組みまで頷きあってるが、自分が今まで一体何冊の推理漫画を読んできたと思っているのか?


 「ふん!いいか?大体そういう屁理屈をこねる奴が犯人なんだ!」


 「駄目だこりゃ……」


 「まぁ、付き合うのはこんな所だな。じゃあ今度はこっちに付き合ってもらおうか?」


 「な!まだ認めないのか?」


 「はいはい、ヤメヤメ!残念ながらコットは名探偵の器じゃないよ。腕のいいガンスミスなんだから、そこまでにしておきなよ」


 「ま~なんだ?いい線はいってたぞ」


 「被疑者にフォローしてもらってる内は、確かに名探偵は無理だな」


 「ぐぬぬぬぬ……」


 「さっきラビって言ってたな?お前達あの撃たれた新人の事知ってるんだろ?会わせてくれないか?」


 「あ?まさか!口封じの為に!」


 「いや何回死んでも生き返るこのゲームで口封じってどうやるんだよ!」


 「じゃあ、何の為ですか?」


 おずおずとグレネードランチャーを持つ大人しそうな方が声を掛けると、ついに真相が明らかになるときが来た。


 「撃ったのは俺の後輩なんだよ。別に悪気はなかったんで、謝って事を済ませろって言ったんだが、何をどうやったか一向に見つからずじまいでな。もしかしたらログイン自体してないのかと思ってた所なんだ」


 「何!撃ったのは後輩で、謝って済ませようだと!撃って……まあゲームだしな~事故なら仕方ないか?」


 「一応聞いておくが、どういう状況だったんだ?」


 「ああ、本当はうちのクランの隠し玉の予定だったんだが仕方ない。丁度その時新人卒業クエストでもある工場区ボスを倒した所だったんだが、そこで手に入れたスナイパーライフルで、つい撃っちまったらしい」


 「何でだい?スナイパーライフルなんて初心者の内からそう簡単に当てられないだろ?」


 「なんと言えばいいか……荒野の掟を教えたら、その気になって引き金を引いちまったらしい。そしたら運がいいのか悪いのか、ばっちりビギナーズラックが仕事してくれてな」


 「じゃあ、ラビのディテクティブスペシャルはどうするつもりなんだ?」


 「勿論返すさ。新人同士の行き違いって事で、今回は納めてもらいたい。もし出来るならあんた等が立ち会ってくれると助かる」


 「まぁ、俺は構わないぞコットの迷推理で迷惑掛けたし」


 「僕も時間が掛からないなら構わないけど、ところでブルの後輩ってのはどこにいるんだい?」


 「ああ、良くも悪くも素直すぎる奴でな。少し脅したんだ。新人なんか狩ってると的にされるぞって……そしたらそれを完全に信じ込んで、全く街から出れなくなったらしいんで、ちょっと外の空気吸ってこいって環境実験区画の方に行かせた」


 「何でまたそっちに?」


 「いや、そっちの方が人も少ないし、少しリラックスできるかと思ってな。それで?コットはどうしたんだ?」


 また一つ難事件を解決しちまった。


 確かに犯人はブルじゃなかったが、ブルの後輩だったのならほぼ正解というか、実質解決と言っていいだろう。


 まさか銃声が聞こえなかったのが、スナイパーライフルで遠距離からの発砲だったからと言うのは予想出来なかったものの、今後の糧にしようじゃないか。


 「ふぅ……今日もマスドライバーに反射する夕日が目に染みるぜ」


 「完全に事件解決した顔になってる」

 「え?なんで?」


 その時マスドライバーの方から人影が近づいてきて、こちらに気がついたそぶりを見せると、同時に情けない声が漏れた。


 「先輩……やっぱ俺狙われてます……」


 どうやらこの事件、かなり根深いものになりそうだ!

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