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31.『赤襟殺人事件-目星-』コットの事件簿

 「えっとぉ……初めてプレイヤーが死ぬ所見たからどうしようか相談してたんだよね?」


 「う、うん」


 「そしたらね……」


 「ちょっと待った!さっきいきなりラビが倒れたって言ったよな?普通銃声とか聞こえるもんだが、どんな音だった?バンッとかバーン!だけでもヒントになるんだが?」


 「え?聞こえなかったよね?」


 「う、うん。聞こえなかったから、最初何があったんだろう?って思った」


 ……おかしい。ラビは頭を撃たれて死に戻った。コレは多分確かな筈なのに、銃声は聞こえなかった?そんな事あるのだろうか?


 「なぁ、何か聞き逃したとかはないのか?」


 サラッとジョンが話を振るが、確かに今は何でもいい違和感一つでも手がかりになる。


 「え?でも、気がつかなかったし……」


 いかん!傷ついた少女達を深追いしてしまった。悪いのは全て犯人だと言うのに、これ以上何も知らない女の子を傷つけることはできない。


 そうあれば今自分に出来る事、それは!今ある情報から、当時の状況をイメージする事だ。


 ……そういう事か!


 「分った。二人は当時はじめて人が撃たれる所をみて気が動転した!だから銃声に気がつかなかったんだ!」


 「え?そんな事あるかな?」


 「うーん……確かにあそこで人が撃たれるなんて、思ってなかったけど」


 やはり、そうか!人は予想できない事や経験してないことに対して、かなり鈍感だったりする。


 謎は大体解けた!


 「ふーん、だとしたらもう少し警戒心を持ったほうがいいぞ。何しろこのゲームは隙を見せれば奪われるからな」


 「え?なんですかそれ?そんな強盗みたいな?」


 「そんな怖かったんですか?このゲーム」


 「い、いや違う!知らないのか荒野の掟を!」


 このゲームをやってる人間なら当たり前の決め台詞に反論する女子に、更に動揺するジョン。


 この姿を見て、自分の灰色の脳に電流が走った。


 「ふぅ……なるほどね……」


 「え?何がです?」


 「もしかして、素材屋さんを撃った人が分ったんですか?」


 「いや、期待するな。絶対分ってない」


 期待に目を輝かせる女子と反比例するように目が死ぬジョンだが、今回は間違いない。


 「いいか?『隙を見せれば奪われる』コレは当初RPGのPKを一切禁止しようって言うムーブメントに対して、このゲームがPKを推奨した時にキャッチフレーズにした言葉だ。なんならクエストが進めば、NPCすら言う程有名な台詞の筈が、この子達は全く知らない様子!それはそうだ。この言葉は新人を卒業してはじめて貰える言葉だからさ。つまり!」


 「「「つまり?」」」


 「犯人は古参かベテランの中にいる!」


 「範囲広!」


 何かサブマシンガン使いの少女がつっこんでくるが、こうやって少しづつ可能性の枠を狭める事が重要なのだ。いきなり容疑者を3人に絞るのは自分が好きな数百巻続く探偵漫画位だ。


 すると、唐突に拍手の音が聞こえて、店の入り口を一斉に振り向くと、そこには黒髪ショートの美形ながら、顔半分に刺青を入れ、そして強調される胸からはっきりと女だと主張してくるニヤニヤとした危険人物、ステンが扉の縁に頭をもたれ掛け、それだけでも絵になるようなポーズで立っていた。


 「相変わらずの迷推理、僕は関心せざるをえないよ」


 「何だよ……何か用か?」


 「相変わらず、ロディはつれないね~?僕はいつでも君達を受け入れる準備万端だって言うのにさ!いつまでも意地張ってないで、僕の元にきなよ!二人共間違いなく大事に扱うよ?だって僕の相棒はロディで、ロディは僕の相棒なんだから!」


 「相変わらず勝手な事言ってくれる。大体今の俺はジョンだって何度も言ってるだろ?そんな簡単な事すら覚えられないような奴と組む気はないね」


 相変わらずの痴話喧嘩、仲がいいのか凄くいいのか分らんが、夫婦喧嘩は犬も食わない。


 しかし、自分の脳はどんな些細な違和感も見逃さない。何しろジョンの奴がいつもよりちょっと余裕を感じるし、何となくそれをステンが見抜いてるのも分る。そしてその理由は……。


 「犯人は!……」


 「僕じゃないよ。何故か毎度僕が犯人にされるけど、一回も当った事無いからね」


 「いやでも……ジョンの相棒……」


 「おい!コット!」


 ジョンに止められてしまったが、まず間違いないだろう。何しろ古参で尚且つジョンの相棒の座を狙っているのがステンだ。そうなると邪魔になるのは必然的に相棒候補のラビって事になる。


 利害の不一致から来る殺しで間違いないと思うのだが?


 「あ、あのぅ続きはまた今度の方がいいですか?」


 「いや聞かせてくれ」「僕達の事気遣ってくれるのかい?君達も可愛いね!」


 殆ど同時にに話すジョンとステンに少し気後れしつつもちゃんと話しの続きをしてくれる2人組み。


 「あの……そう、素材屋さんが撃たれてすぐになんか落ち着いた感じの、マッチョ?が話しかけてきたの」


 「なんか、ツンツンしたオレンジの髪に不思議と小っちゃいマシンガン手に持って……」


 オレンジ髪のマッチョで髪がツンツンしてた?そんなの十中八九ブルじゃないか?


 あのデカイ図体に迫られて急に話しかけられたら、さぞかし驚いたことだろうと、想像し思わずにやけた瞬間、灰色の脳に雷が落ちた!


 「今度こそ、謎が全て解けちまった」

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