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29.『赤襟殺人事件』コットの事件簿

 俺は街から街へと流れるしがないガンスミス。


 この火星ではいつも争いが絶えず付き纏い、戦いに縁の無いガンスミスですら巻き込まれる事も少なくない。


 そんな中ただのしがないガンスミスの用心棒をかって出てくれたのが名無しのジョンだ。


 こいつも色々と事情のある男だが、腕は立つし人柄もそう悪い奴じゃない。そこそこ長い事一緒に組んで街から街へと流れている。


 そんな中、新人の街での逗留をしていた時の事。


 新人の街と呼ばれるだけあって色々と制限が多く、自由を求める者達はあっと言う間にどこかへ去って、記憶の片隅に追いやってしまうようなそんな土地柄だが、誰もが一度は世話になった街。


 俺のような争いごとに向かない人間には一服の清涼剤のようにほっと一息つける数少ない憩いの場だ。


 しかし、なぜそんな心休まる時間を神は許しちゃくれないのだろうか?


 殺人事件が起きてしまった。


 被害者はラビと呼ばれるクロスボウ使いの少年?何度か話した感じだと、あまり人馴れしていない雰囲気の男の子って感じだったが、コイツが撃たれたらしい。


 ある日ジョンがいつにない剣幕で店に戻ってきたと思ったら、その勢いで知り合いを集めて戦争でもおっぱじめんばかりの殺気に、思わず宥めすかして事情を聞いた結果がそれだ。


 ジョンが何となくラビを気に掛けている事は知っている。多分あのリボルバーが結んだ縁なのだろう……しかしその肝心のリボルバーが奪われては、ジョンなら黙ってはいない。


 だからと言って軽挙妄動は抑えるべきだ。


 なぜならまず第一に、新人しかいないこんな場所で本当の新人を狩るなんて、何のメリットもないって事だ。


 コレで少なくとも犯人は愉快犯かそれに順ずるものであるという事が言える。


 ちなみにコレは推理でもなんでもなく、経験から来るものだ。何しろ今みたいに協定が結ばれる前は新人狩りなんてのは当たり前に横行していたし、それで消えて行ってしまった連中も少なくはない。


 ちなみに犯人がラビを新人と見分けられない理由はまず無い。何しろ新人の証拠と言ってもいい最初のクエストでもらえる目立つ赤いスカーフを巻いていたからだ。


 ちなみにそれを巻いている事から新人の事を赤襟と呼ぶ事があるほどに誰もが知ってる基礎知識となっている。


 そして次に、相手が愉快犯で通り魔的犯行の場合はそのまま姿をくらますだろう。


 しかし、肝心のリボルバーは売りに出していない。つまり、犯人はコレクター気質である事が窺える。


 そうなると、通り魔的と言うよりは計画的と見るべきではなかろうか?


 はっきり言ってこのゲームではPK推奨、銃を売ったからと言ってそこから足がつくなんてそんな事は無いので、大抵戦利品はすぐに売り払って金に変える。


 よっぽどレアな銃ならいざ知らず、ラビの銃は500クレジットで買った廃品同然の品だ。


 これでもし犯人がコレクターの場合、また折を見て同じ犯行を繰り返す可能性が高い。


 勿論この街で何度もやるのか?と問われれば100%と言えないまでも、可能性はかなり高いと見る。


 何しろ前述どおり、今は新人狩りに対して協定があり、敢えて狩らないという方針だ。


 にも関わらずやるって事は、新人を狩る事に何かしらの意味を見出していると考えるべきだろう。なればこそ、騒ぎを大きくせず犯人が動きやすい状況を作って泳がせると言うのが今の最善手じゃなかろうか?


 そして犯人が新人狩りをする意味とは……今はまだ情報不足だ。まずはラビが撃たれた状況を確認する事から……折りよく第一発見者が店にやってきたようだ。


 「こんにちは……あれ?コットさんの店ですよね」


 「ああ、コットの奴は今ちょっとおかしくなってるから、俺が店番してたんだ。それで今日は……」


 「何もおかしくなってないぞ?二人が第一発見者かよく来た。事情を聞かせてもらおうか?」


 「え?あの……銃の改造の件で……」


 「駄目そうだよ……まずは付き合おう?素材屋さんの件でしょ?多分」


 「う、うん。えっと、工場区画でいつも通りお金を稼ぐ為に二人でドローン狩りしてたんです。そしたら素材屋さんが話しかけて来て、こちらも挨拶を返したら、頭に何か当って倒れて死んじゃったんです」


 くっ!辛い話だ。この少女達も目の前で人が死んでそれはもう深い心の傷を負った事だろう。


 それでも、今はラビの為、これ以上新人達の被害を増やさぬ為、心を鬼にして当時の状況をよく聞いておかねば!この悲しみ、苦しみは全て犯人にぶつけてやる!


 「や、やっぱりおかしくなってる……」


 「偶にあることだから、あまり気にしなくていい。それより続きを聞かせてくれ」


 ジョン……平静を装いながらも、やっぱりどこかで焦ってるな?こんな時こそいつでも冷静沈着な俺が、この灰色の頭脳で事件を解決してやる。


 腕っ節の弱い俺が頭脳担当、めっぽう強いジョンが戦闘担当、そうやって俺達はやってきたんだ。


 「あの、ところで素材屋さんってどうなったんですか?」


 「ああ、気落ちしてたが今は持ち直して、必ずやり返すって言ってたぞ。何か考えがあるらしい」


 そして、ラビ!絶対仇はとってやるからな!

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