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27.絶望『必ず取り返す』

 身の回りの物が一通り揃った所で、一回ログアウト。翌日再ログインして、早速工場区へと向う。


 何しろ今自分にとって必要な物はステータスのSTRと〔金属板〕の二つ。これらが有ればクロスボウを強化して、もっと奥地まで進めると思う多分。


 早速クリーナーを探して歩いていると、今日はあちこちから人の話し声が聞こえて、少しログインしている人が多いのかな?と言う印象。


 うっかり獲物が被って争いごとになっても面倒なので、出来るだけ人から離れるように移動していた時、ふと不穏な声が耳に入った。


 『おいおい、隙を見せると奪われるぜお嬢ちゃん達』


 お嬢ちゃん?と周囲を見回すと見覚えのあるシルエットの二人組みがいた。


 新人の街にも女性は偶に見かけるが、二人組みで動いているのは多分この2人しか今の所見ていない気がする。


 何か嫌な予感がしたので、二人に走り寄り、声を掛けた。


 「あの!二人共!危ないかも……」


 「あっ!素材屋さんじゃん!今日も素材集め?余ったらまた売ってよ!まだまだ改造できるっぽいんだよね~」


 「ねぇ、何か言ってるよ?」


 ダン!!!


 低い重低音のあとカラカラと乾いた金属音が続き、そのまま視界が真っ暗になった。


 そのまま体が動かない。よくよく見ると視界の端の方に数字が見えて、何やらカウントダウンが始まっている。


 「え、ええ……何コレ」


 「多分撃たれたよね?どうしよう」


 「どうしようって……逃げる?」


 「でも、素材屋さんこのままじゃ……」


 「ん?どうしたんだ二人共、知り合いが死に戻ったのか?」


 「は、はい誰かに撃たれたみたいで……」


 「撃たれた?ドローンにやられたんじゃなくてか?」


 「……多分ですけど、頭に何か飛んできたみたいで、そのまま倒れちゃったんで」


 「銃声は聞こえたか?」


 「聞こえなかった?と思います」


 「なる程な……君達は一回街に戻った方がいい。基本的に新人をPKする様な事はないが偶に変な奴とか、訳有りの奴とかもいるから気をつけろよ」


 「は、はい。行こう」


 「う、うん。それじゃ」


 ここでカウントが終わり、いつの間にかマスドライバーの前に立っていた。


 「はぁ……」


 思わず溜息が出てしまう。まさかあんな場所でPKされるとは思っていなかったと言うのが正直な所。


 しかしこのゲームを始める前にちゃんとPKのゲームだと調べていたのだから、何にも言い訳できない。


 2人は誰か親切そうな人と会って街に戻ったみたいだからいいとして、問題は自分が何を落としたかだよな……アイテムボックスを確認する。


 まずお金は全部無い。と言っても少し狩りをすればすぐに溜まる金額だし困るほどじゃない。


 予め銀行の存在を聞いて、預けておいた甲斐があったというものだ。


 他には矢もあるし餌もあれば毒もある服類も残ってるし、食べ物も減ってない……。


 ふとステータスを確認すると案の定と言うか、完全に空腹になっていたので〔火星狸の燻製〕を取り出して食べる。


 「死に戻ると一発で空腹になるのか~気をつけないとな~」


 いきなりPKをされたショックから少しづつ気持ちを取り戻し、軽く伸びをした所でハタッと気がつく。


 銃がない!


 いつも脇腹に差してあった所為で、うっかり忘れていた。


 重量オーバーでアイテムボックスにしまってあったのに、無くなってる!


 よりにもよってディテクティブスペシャルを落とすなんて……。


 一気に体温が失われ、目の前が暗くなる。


 他にも色々入ってたのに、一番なくしちゃいけないものから消えていく。理不尽すぎる。


 「あれ?ラビ?どうした暗い顔して?何かいつも暗い顔してるなまた金がないのか?」


 無意識で街中を歩いていたら、ジョンさんに声を掛けられた。


 「あの……ディテクティブスペシャルを落としちゃって」


 「落としちゃってって……落とせないだろ?一応装備品は落としても一定距離離れればアイテムボックスに戻ってくるし、大会ルールとかで戻ってこない場合もあるが、それでも大会が終われば……PKされたのか?」


 「はい……」


 「あ?マジかよ!!新人は狩らねぇって協定守れない奴がまだいんのか!相手は?どんな奴だ?」


 「分りません。何かこの前の2人組みを狙ってるのかと思ったから、二人に声を掛けた瞬間撃たれて……」


 「見てないのに何で狙ってるって分ったんだ?」


 「何か、隙を見せると奪われるぞ?って聞こえたんですけど……」


 「???どういう状況だ?相手は見えてなのに声は聞こえた?」


 「いや、あの……<聞耳>で聞こえたんだと思います。結構声が遠かった気がするので」


 「そうか、ラビは<聞耳>使ってるのか。あれ使いづらいだろ?何でもかんでも音拾って雑音だらけだって聞いてるぞ?」


 「いや、別にそこまでではないですけど……」


 「そうなのか?まあいい。その話だとラビを狙ったのか、この前の二人を狙ったのか分らないが、だとしても新人狩りには変わらんし、ちと知り合いに声を掛けておく。それでラビはどうする?」


 「どうって?」


 「ディテクティブスペシャルを無くしたままでいいのか?って事だ。多分同じ型の銃は売ってるとは思うが……」


 「取り返します!」


 思わず大きな声が出て、自分で自分の声に驚いた。


 「どうやってだ?」


 「声だけは覚えてます。見つけて取り返します」


 「もしそいつが売り払ってたら?」


 「それは……」


 「安心しろ。このゲームでは流通してる銃全部にナンバリングがされてる。ステータス画面に今迄自分が使ってきた銃が勝手に記録されてるから後で確認してみな。銃砲店に行ってそのナンバーで問い合わせれば、売られてる銃はすぐに分る。問題は誰かがお前のディテクティブスペシャルを所持している場合だ」


 「とにかく自分を撃った相手を問い詰めるしかないですね」


 そうなれば、手段は一つだ。まず銃砲店に確認に行って、無ければ環境実験区画に行って素材を集めてこよう。

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