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25.掃除『リサイクルで生きている』

 「うう……重い……」


 最初は何かゲームの不具合でラグが発生しているのかと思いきや、単純に自分の重量が重すぎてまともに動けないだけだった。


 理由は簡単だ。装備を更新した所為で、総重量がキャパオーバーしてしまったというだけの事。


 まぁ、装備の許容量はSTRで変動するわけだから、今迄1で粘っていた自分が悪い。


 やむを得ず一旦ディテクティブスペシャルをアイテムボックスにしまう。


 軽量とは言え銃は銃だ。自分の総重量にしっかりと加算されていて当面出番のないこいつを仕舞っておく他なかろう。


 重さの無くなった脇腹に少し不安を感じながら保安官舎へと向う。


 「よう、ドブネズミ。相変わらず辛気臭い顔をしている様だが、今日は何の用だ?」


 「え?何か臭いですか?どこかにお風呂とかありますか?」


 「ちげーよ。いつもいつも悩みを抱えた顔でココに来るから、何をそんなに悩む人生なんだ?って聞いてんだよ」


 「そうでしたか。あの……工場区で倒したドローンの素材をどこで売ったらいいか聞きたくて来たんですけど」


 「ほぅ……クリーナーを倒したのか?それじゃあ、これからはお前の呼び方を変えんとな。掃除屋」


 「掃除機を倒したのに掃除屋なんですか?寧ろ掃除の邪魔をしたと思ったんですけど」


 「ふん!人様の区別がつかずになんでもかんでも襲い掛かって吸う事しか出来んポンコツの方こそゴミ同然だろ?まぁでもそのゴミのお陰でこっちの生活は成り立ってるんだがな」


 「はぁ、そうなんですか?」


 「ふん!その集めた金属のゴミを廃品回収屋に持っていけば、幾らかで売れるだろう。そしてその廃品を利用して俺達の生活に必要なものが出来てるんだ」


 「そのお店も非合法ギリギリなんですか?」


 「そりゃな。地球の連中は火星の物資を必要としてるし、その為にお前らを送り込んだ筈が、地産地消と来たら嫌にもなるだろうさ。とは言えこちらも食っていかなけりゃしょうがない。もし拾った〔廃品〕を高く売りたきゃマスドライバーに持って行きな。地球の連中は喜ぶと思うぜ」


 それだけ言うと、また手で追い払われたので保安官舎を出る。


 多分今の話をまとめると、廃品回収屋かマスドライバーでドローンの素材を売る事が出来るが、マスドライバーで売ると地球に持っていかれてしまうと言う事だろう。


 出来れば高く売れる方が自分としては助かるが、暮らしていけなくなるのはそれはそれで困るし、今の所大金が出る予定も無いのだから、廃品回収屋の方でいいかな?


 大通りから少し奥まった怪しげな小道に色んな配線やら機械部品が無造作に転がる一角があり、そこを更に奥へと進むと、振り乱した黒髪が特徴的なげっそりとした眼鏡の男の人が暗い店内でスタンドライト一つ灯けてなにやら作業している。


 「お邪魔します」


 「邪魔はされたくないがね。何か用かい?」


 中々気難しそうだけど、とりあえず余ったものを売るだけの事だし、さっさと片付けてしまおう。


 「工場で集めた素材を売りたいんですけど」


 「ほう……わざわざこっちに売りに来るなんて珍しいね。金属なんかは地球が喉から手が出るほど欲しがっているというのに、何でまたマスドライバーに持っていかないんだい?」


 「火星で生活するにはこっちで売った方がいいと聞いたんですけど?」


 「うん、確かにうちに売ってくれれば、代わりに何がしか生活に役立つ物を売りに出そう」


 とりあえず売る事は問題なさそうなので〔廃品〕〔金属板〕〔簡易回路〕〔簡易動力〕〔金属粉〕〔火薬玉〕それに空中ドローンから毟った〔小型回転翼〕も今の所使い道がないので売ってみる。


 〔金属板〕はちょっと勿体無い気もしたが、売る事で何が出てくるのか興味があったので、一個だけ。


 すると店主さんが奥から持ってきたのが、小さいファンに、何かの配線、小さいバッテリー?、チャフグレネード、ミシン?、ギザギザの歯がついた台?……。


 どうやら本当に生活用品ばかりで、装備品らしきものは無い。


 ただチャフグレネードは銃砲店で買うより半額なのでコレは買いだ!


 「日中外に出ると暑いから、ファンとこの配線とバッテリーを繋いで空調服にすると良いよ」


 何に使うのかと不思議に思っていた物の説明を始めてくれる店主さん。何だかんだいい人なのかもしれない。


 そうなると<製造>を使って服を作りつつ、このファンとかと組み合わせる必要があるという訳か。


 ……その為のミシンって事か!多分○○台系の何かだこれ!


 つまりこれらも買うしかない。夜になると寒いとは聞いていたが、昼は暑いのか火星。


 まだ街から繋がる地域しか行った事無いからよく分らないけど、きっと外は苛酷な環境なんだろう。


 早速買える物を買って工房へと向かう。


 ポンチョや皮のつなぎ、それに帽子は暖かい系の服だから、逆に涼しい物も作っていかねばならない。


 そうなると自然と加工出来るのは初期装備の地味な色のカーゴとシャツになってくる。


 ミシン型の〔服飾台〕にそれらと買ったばかりの空調服セットを載せると〔初心者空調服〕が選択出来たのでAcceptを押す。すると腰にファンのついた薄茶のツナギになった。


 とりあえずこれで、昼夜の服はそれぞれ出来たし、今までより更に奥へと向ってみてもいいかもしれない。


 気持ちが昂ぶり、順調に進んでいると思っていると、大きな落とし穴があったりするものだ。

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