表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/187

18.挫折『まだ全然弱かった』

 興味の赴くまま4番街区……この街の最西端に向うと、やはり大きな門が設置され、その両脇に兵士が立っていた。


 「お前、そのスカーフ新人か?」


 「はい、そうです」


 「ここから先は街の外だ。準備は十分か?スカーフを見る限り溝鼠は狩れる様だが、この先は環境も厳しい、昼は暑く夜は寒いぞ。暗くなった場合の準備はどうだ?」


 どうやら話す事は東も西も同じ事のようだ。


 「出来ていないんですけど、新人でも狩りできる地域って無いですか?」


 「それなら、工場区画から外に出ない事だな。それより外の環境は苛酷なものだ。まずは準備を十分に整える事だ」


 「はい、そうします」


 「工場区画ではまだ人も住めぬ頃、一帯に基地を作る為の無人機が生産されていた。しかし、何が原因か暴走、勝手に火星の荒野を開発し始める機体、獣を狩る機体……様々な機体が生まれ、お陰でテラフォーミングは進んだが、残念ながらこの無人機達は勝手に増える方法を取得し、その機体達は人を平気で攻撃する。まだ工場区画の無人機はさしたる武装もしていないが、今後無人機を見たら敵と思うがいい」


 う~ん?つまり、ドローンなのに人間のコントロールを受け付けないのか?しかも勝手に増えるって事は、どこかに工場があるってことだよな?


 そうか、基地を作る為の無人機だし、そういう施設を増やすデータ?なりプログラムなりされてるのかな?


 ドローンって普通は人が操作してる物だと思うけど、火星上のドローンを手作業で動かす訳ないし、AIが搭載された完全な自動機械って感じかな?


 大体自分の中でこれから戦う敵の事を想定できた所で、門をくぐる。


 目の前に広がるのは、確かにイメージ通りの工場だ。


 天井近くにぶら下がるクレーンに、何が流れていたのか何レーンも連なるベルトコンベア、そこらに転がるスパナ?とかレンチとか……。


 何となくうっすらとグリスの臭いがするのも、いかにも工場って感じだ。


 背負っていたクロスボウを構えて、慎重に中へと入っていくと、やや遠くに動く物体が見えた。


 物体と表現してるのは、何かこう……丸っこいと言うのか、なんに使うかまったく用途が思い浮かばないと言うのか、平らな地面を滑るように動いている。


 何をしているかは全く想像がつかない……。


 とりあえず、街の入り口から入ってすぐの敵だし、そこまで危険って事は無かろうと、矢を発射。


 レベルが上がり、SNSとDEXに振っているお陰か、今はクロスボウの射程ギリギリの敵でも撃ちもらす事は無い。まぁクロスボウの射程が短い可能性もあるのだが、かなり安定したのは事実だ。


 ダメージを受けてこちらに滑るように向ってくるドローンに二射目を射掛け、更に三射目!


 獣ならとっくに死んでるはずが、全然速度を落とさずに向ってくるドローン……ここは一旦距離を取ろう……。


 一生懸命入り口に向って走り後ろを振り向くと、全然距離が変わらない?


 ……AGIに全然振ってないから、自分の足も遅いんだ……。


 已む無く走りながらつがえた矢を発射するも、まだ平気で向ってくる。


 そして、再度逃げようとした所で追いつかれ、轢かれた。


 足を強打され、そのまま転がるとドローンは勢いのまま少し滑り、また方向転換してこちらに向ってくる。


 方向転換の間に矢をつがえて、射出した5射目!まだ駄目!もう一回轢かれて転がされた。


 今度は方向転換している内に距離を取ろうと、入り口に向って走りながら矢をつがえ、もう入り口と言う所で振り返り、6射目を射出。


 残念ながら動きを止めないドローンにまた轢かれる!と体をこわばらせた所で……。


 ダァァァァァァン!!!!


 と重く響く音に耳がキーンと来た。


 足から力が抜けて、その場に崩れ落ちると、


 「大丈夫か?やはりまだ新人には荷が重かったようだな。装備を整えて出直すといい」


 そう声をかけてくるのは門の所にいた兵士だった。


 流石に大きな銃だけあって発射音も桁違いだ。もしかしたら普通の人はピンチになったらここまで逃げてきて兵士に助けてもらうのだろうが、自分にはそれすらしんどい。


 一応ドローンに触れると手の中に〔廃品〕と言うのが残った。これが話に聞く生産用ドロップなのだろう。


 そして付近に光る床もあったので、慎重に周りを見ながらその床を調べると〔シャフト〕と言う棒が手に入った。これが噂の矢の素材かとアイテムボックスに放り込んでおく。


 今の所自分の耳にはさっきの床を滑るように動くドローンの音は捉えてない。正直視認範囲よりかなり広く音を拾えるこのスキルは便利だし、何気にスキルポイントも振ってその範囲も広げ中だ。


 あちらこちらから拾える音を頼りに近づき、音とその正体を紐付けている所だが、ドローンの音と言うのは今回覚えたし、これからは安易に遭遇しないよう気をつけよう。


 しかしまさか、矢を6発も撃って倒せない敵が街から出たすぐにいるなんて思いもよらなかった。


 コレは真面目に何か考えないと、先に進めない。


 グルグルと今ある手札と、増やせそうな手札を考えながら街を引き返し、ある意味自分のホームポイントとも言える一番街区へと向う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ