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178.賞品『本当にもっとちゃんと下調べするべきだった』

 宵闇にキャンプファイアーの明かりだけを頼りに周辺をうろつく。


 そこかしこに目につくのは、地面に直接置かれた赤い毛足の長いマットとその上に並ぶ物品。


 Killメダルと交換で買える自動販売用の露店マットらしい。


 並べるだけ並べてあって、人がいない露店も少なくないので、多分マットの上の品物が盗まれたりすることはないのだろう。


 とりあえず必要な物を手に入れようと一周どころか5周り位したが、只今絶望中。


 「よう?やっぱり見つからないのかよ?」


 「タツは手に入ったの?」


 「一応な。スコープが手に入ったんで、弾だけ調達したぜ。いざって時の為のハンドガンも俺が使っちまっていいんだろ?」


 タツが見せてくるのは、いわゆるオートマチック拳銃だ。


 弾倉にあらかじめ弾を入れておいて、マガジンごと交換するアレなんだけど、自分はリボルバーしか使ってこなかったので、正直扱いが怪しい。


 という訳で、今の自分の装備はまずデリンジャー、露店で買った投げナイフとナイフホルスター、毒や薬を入れて持ち運べるウエストポーチ、AGIに補正のある靴とVITに補正のあるズボン、申し訳程度のベストって感じ。


 最低限は見繕ってきたのだが、肝心な物……。


 そう、クロスボウがない。


 本当にどこにも売ってない、って言うかどうせ誰も使わないだろうって、捨てたっていう人が露店にいた!


 まぁ、そりゃアイテムボックスに限りもあるし、使うものと売れる物中心になるのは分かるけども、誰も持ってないのは酷くない?


 思わず天を仰ぐと、憎らしいほどに星空がきれいだ。


 この星空は、果たして火星の星空を再現してるのか、はたまた空想か、それとも地球の星空をサンプリングしてるのか?


 「何かお困りの様だね」


 そう言って天を仰ぐ自分の顔を覗き込んで来たのは、P.W.だった。


 「困ってますけど」


 「そう?情報は出すって約束だし、何かあれば何でも聞きなよ。その前にコレね」


 そう言って差し出してきたのは、キャリーケース?旅行に持っていくような随分と大きなものだが、一体何だって言うんだろうか?


 「変な顔してるけど、コレ全部ラビが僕たちに預けた物だからね?」


 「あっ!預けっぱなしだった」


 「うん、だから大容量鞄に全部詰めて持ってきたから、これはサービスしておくよ」


 「大容量鞄?」


 「……そこからか~えっとまずアイテムバッグは分かるよね?そしてアイテムバッグは中身を詰めたままアイテムボックスに詰められるていうのも……」


 「それは分かります。普段はアイテムボックスの中、アイテムバッグだらけなので」


 「うん、そっか……じゃあ大容量鞄も知らないか。大容量鞄は見ての通り持ち運びに不便なんだけど、代わりに中のアイテムをしまえるマスが、多いのが特徴なんだよね。これだと100マスあるから、これだけでもかなり……」


 「それは凄い!そんなのがあったなんて!これはイベント終わったらすぐにでも探しに行かないと!」


 「いや、別にイベント終わったらそのままこれ使えばいいじゃん」


 「え?でも死んだらドロップしちゃうんじゃ?」


 「ああ、それも言わなきゃか。本選ではドロップするのはKillメダルだけだよ」


 「え?」


 「だから、予選さえ通過すれば今現在持ってるアイテムも装備も全部持ち帰れるの。こんな面倒な仕様のイベントがそれなりに人気なのは便利なイベントアイテムを持ち帰れるってのも一つの要因だね」


 「そうだったんだ」


 「うん、だから宝探しも慎重かつ積極的にやった方がいいし、仲間集めてでもなんとか予選だけは抜けた方がいいって訳」


 「とりあえず、予選抜けただけでも良しとしなきゃいけないか……ところで、なんでKillメダルだけはドロップするんですか?」


 「そりゃあ、賞品との交換に使うからじゃん」


 「賞品との交換?」


 「えっと、イベント賞品のカタログとか見てないの?」


 「いや、賞品のコンパウンドボウが欲しくて参加したんですけど……」


 「じゃあ、Killメダル何枚と交換ってなってた?」


 「分かりません」


 「欲しい物があるなら、その分殺さなきゃならないからね~。次回大会にKillメダル持ち越しとかは出来ないからそのつもりで」


 「それは、そうですよね。何回も出てればいずれ手に入るってのもありがたいとは思うけど、賞品じゃなくなっちゃいますもんね」


 「う~ん、まぁ、それこそ最低限露店の敷きマットでも交換しておくんだね~。場所は限られてるけど、イベント以外でも使える場はある代物だし」


 「そうなんですか?」


 「何なら、自分でこのイベント出るのが面倒だからって、高値で買ってくれるプレイヤーもいるよ」


 「他では手に入らないんですか?」


 「ん~イベント用アイテムだからね~、他のイベントでも手に入れられるけど、まぁ面倒ではあるよね」


 P.W.の言う事は現実的な気がする。


 この先クロスボウなしで、本選を生き残れるとも思わないし、需要があるものと交換して終るって言うのも一つの手ではあると思う。


 チラッと、タツの方を見るとやっぱり微妙な顔をしている。


 そうと決まれば、金貨や銀貨を残しておいても意味は無いし、イベントアイテムを買えるだけ買って、最後にKillメダルの用途についてよく考えよう。


 もう一度露店を見て回る事にする。

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