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177.「相棒ってなんだ?」ジョン

 街や村には大抵、酒場がある。


 趣やなんかは場所によって変わる事もあるが、やる事は大体変わらない。


 お酒を飲んで談笑する?談笑から情報収集に繋がる事もあるだろう。


 更には、地下闘技場や賭博場などややアンダーグラウンドな世界への入口。


 そしてもう一つが、酒場の奥に並んだ個室。


 その個室の一つに、相方……相棒と言うには背中を預けるタイプでもないし、知り合いと言うには長く一緒にこのゲームをプレイしすぎた……じゃあ友達?見ようによってはそう見えなくもないのかもしれない。


 そんな微妙な距離感ながら気の置けない相方が、来ているというので、ちょっと寄ってみた。


 「よう、珍しいなお前がこんな所に来るなんて」


 「何だ?ジョンか。そりゃ酒場の個室に来る理由なんてそうそう無いからな。お前のイベントは決闘ばっかりだし、それなら現地で見りゃいい訳だし」


 「まぁ、な。それで何のイベントの中継見てるんだ?」


 「あ?この時期この街って言ったら一つだろ?タッグバトルさ。無人島サバイバルのやつ」


 「へ~そんなマイナーなイベントに興味があるなんて、長い付き合いなのに初めて知ったがな」


 そう、酒場の奥の個室には大きなモニターが設置されていて、イベントの中継を見る事が出来るのだ。


 何しろイベントと一言で言ってもルールは多種多様、自分が出るような決闘イベントなら、普通にリアルタイムで決闘を見るのがいいだろうが、他の大抵のイベントと言うのは特別なフィールドが用意されてる場合がほとんどだ。


 そうなれば、当然ながら直に見物とはいかない。


 何なら今回の無人島サバイバルなんかは、イベントにかかる所要時間もかなり長い為、そもそも時間経過の仕方が同じゲーム内でもだいぶ違う。


 簡単に言うと、こっちの1時間が向こうの1分程度、10時間プレイしたつもりでも10分しか経って無いとなれば、当然外から無人島サバイバルを見た所で、超早送りにしか見えないって事になる。


 その辺の調整をして、中で何が起きてるのか見えるようにしてくれるのが、この個室って訳だ。


 とはいえ、自分にしてもコットにしてもさして他人のイベントに興味もないので、あまり利用する事は無かったのだが、どんな風の吹き回しだ?


 「イベント自体は、ただの宝探しと撃ち合いだろ?そこまで食指が動くもんでもないが、今回はラビが出てるんだ。応援みたいなもんさ」


 「成る程な……ラビが、ね」


 そう言いながら、椅子の背もたれを腹側に、抱きかかえるようにして座る。


 「クロスボウが手に入らなくて中々苦戦してるみたいだぜ」


 「へ~クロスボウがね。そりゃあラビも辛い所だろうけど、そうじゃない!」


 「な、なんだよ急に!」


 思わず大きな声が出てしまい、コットが持ってた酒をこぼしてしまったが『なんだよ急に!」はおかしいだろ!


 「コット!お前って奴は、昔からおかしな奴だったけど、何を血迷ってるんだ?」


 「何も血迷ってなんか無いだろ?ラビが自らイベントに出ようってんだから、応援してやったっていいじゃないか?」


 「そりゃそうだ!勝っても負けても温かく見守る!それが今の俺達のスタンスだよな?だけど、このイベントは何のイベントだ?」


 「無人島サバイバル?」


 「じゃない!タッグバトルだろ!なぁ、タッグバトルにまさか一人で乗り込んだわけじゃあるまい?」


 「そりゃ、相方見つけて一緒に参加してるが?」


 「そこだよ!相方ってそんな簡単なもんじゃないだろうが?なぁ?ラビの相棒って誰だよ?」


 「ラビはいつも一人だろ?」


 「俺だよ!」


 「それは現状、ジョン……お前の希望であって、ラビはそんなつもりないだろ?」


 「そうだけども!だからって見ず知らずの相手とタッグバトルなんて良くないだろ!」


 「見ず知らずじゃないぞ?ブルの所の……ほれ、ラビを殺してラビに殺されたタツっていたじゃん?どうやらもともと知り合いらしいぞ」


 「そ、そうなのか?え?じゃあラビは今後タツとタッグを組んで活動するのか?」


 「いや~?なんか利害の一致で偶々って感じだったけどな」


 「ほんとか?本当に偶々なんだろうな?そこの所ちゃんとしてくれないと俺も流石にこいつを抜かずにいられないぜ?」


 「いや、ここは銃器の無断使用禁止だからやめておけよ」


 「ここでじゃねぇ!タツって奴のどたまに食らわせるっつってんだ!」


 「いやいやいや、ここでブルと揉める事になって損するのはお前だろ。ちょっと冷静になれって」


 「俺はいつでも冷静だ!」


 全くコットの奴は何にも分かってない!何が分かってないって、本当に何も分かってない!相棒ってのはもっと、こう、お互いが絶対裏切らないっていう確信っつうか、何も言わずとも伝わる繋がりっつうか、そう言うのを大事にしなきゃならんのに、一度殺しあったくらいで、つるむとかそう言うのじゃないじゃんか!


 「ジョンよ……お前に相棒が必要なのは俺もよく分かってるけど、押しつけは良くないって!当面はラビの成長を見守るって決めてんだからさ。信じようぜ?相棒なんだろ?相棒を信じれなくてどうすんだ?なぁ、アルバー君もそう思うだろ?」


 コットが声を掛ける方を見やると、いつの間にやら先日出会ったドローン使いだったかの未成年が扉を開けて所在無さげに立っていた。


 「えっと?」


 「アルバー君も一緒に見学してたのさ。ちょうど予選が終わったんで飲み物を取りに行ってたんだが、そんなにラビとタツの事が気になるなら、ジョンも一緒に見て行ったらいいんじゃないか?」


 そりゃあ、見るとも!ラビの相棒は俺がふさわしいし、俺の相棒はラビしかいないんだからな!

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