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176.無知『何にも知らない』

 「おい!話聞いてたか?」


 呆れ声の幼馴染だが、本当に子どもの頃からちょっと自分が思うのと違うとすぐにこういう声を出す。


 「聞いてたよ。つまり宝探しするにもあんまり安全じゃないよね?って事じゃないの?」


 「そういう事……なのか?いや誰もそんな事は言ってないよな?安全を取るなら移動した方がいいし、リスクとっても本選を考えるなら宝探しした方がいいって感じだろ?」


 「だから、安全に宝探しするなら、ここに罠張ればいいじゃん?」


 「いや、さっき俺が上から狙撃してたの見てたろ?ここは上からのぞき放題なんだし、罠なんて張った所で意味無いだろ?」


 「狙撃地点は決まってるんだから、誰か待ち伏せさせておいて、正面からくる相手だけ罠にかければいいじゃん?」


 「そんな都合よく、行くかっての!」


 「どうしていかないの?」


 「いや、それは考え方が安易すぎるっつってんだよ!そもそもどうやって割り振りする気なんだ?上で見張る役に、宝探し役に、罠張り役だろ?この5人の内二人が裏切り者だって分かってんだろうよ」


 「分かってはいるけど、今は従うって言ってるじゃん」


 どうにも、やっぱりこの幼馴染とは話が合わないって言うか、昔から自分が何か言うと必ず碌な根拠もなく反発してくるんだよな。


 「ん~ああ~二人とも?周囲を見てみな?」


 それまで静かにしていたP.W.が急に声を掛けてきたので、つい驚いて、周囲を見渡す。


 「え?夜」


 「いつの間にそんな時間経ってたんだ?」


 あっけにとられる自分とタツ。


 それもその筈、周囲がいきなり真っ暗で、ほんの数メートル程度しか離れてないP.W.の顔すらちょっと別人に見えるほどの暗闇に包まれている。


 それでも、P.W.だと判別できるのは随分と大きな焚火?キャンプファイアーみたいなものが焚かれているからに他ならない。


 だんだん目が慣れてくると、キャンプファイアーの周りを人が行き来しているのが分かるが、イベント中にこれだけ人がいて戦う訳でもなく、ボソボソと囁きを交わしているだけ。


 何とも怪しげな雰囲気にのまれていると、再びP.W.が口を開く。


 「二人ともキャンプは初めて?」


 「キャンプ?」


 「父親となら言った事あるけど?」


 タツが素っ頓狂な事を言っているが、昔からなのでちょっと放っておこう。


 「違う違う。ここは一見屋外だけど、完全戦闘禁止のセーフエリアでさ。このイベントに限らず色々な場面で出会う事になるフィールドだよ。本当に知らないの?」


 「知りません」


 「そんなのあったのか」


 「……二人ってあんまり攻略見てない?」


 「見てないって言うか、ねぇ?」


 「自分は先輩から教えてもらってるけど」


 「ふーん、こういうこと聞くのアレかもしれないけど、二人とも相当若いでしょ?」


 「まぁ、VR出来る年になったばかりだし」


 「うん」


 「そういうことか~青少年情報規正法ね……このゲームだとどうしても銃関連とか多いし、引っかかっちゃうか~……じゃあさ~現状知る限りの情報を教えてあげるから、裏切ったのなかったことにしてくれない?」


 急なP.W.からの提案に思わず言葉が詰まる。


 「別に、裏切られたからどうこうってつもりはないですけど」


 「そういうゲームなんだもんな?多分」


 「二人とも素直だね~簡単な話金貨銀貨Killメダルを山分けにしてくれればそれでいい。本選までもべったりって訳にはいかないと思うし、ああ、当然KAGEMARUへの支払いが済んだ残り分の山分けって話ね」


 チラッとタツを見ると、別にいいんじゃね?とばかりの顔をしているので、まずかげまるにKillメダルを残り20枚渡す。


 「恩に着ます!御館様!」


 「親方様?って何?」


 「大工とかじゃねーの?」


 「くく……二人とも本当に擦れてないと言うかなんて言うか……。ああそれじゃあ情報だよね。まず予選通過おめでとう」


 「へ?いつの間に?」


 「それで、キャンプ?にいたのか?」


 「そこからか~二人が喧嘩してる間に予選は終わったよ。だから生き残った人達は皆今取引の真っ最中って訳」


 「取引ですか?」


 「Killメダルで仲間復活させたりとか?」


 「勿論それもあるね。詳細は焚火の周りにいるNPCに尋ねたらいいんじゃない?僕が何か言うよりずっと信ぴょう性があるでしょ」


 成る程と思い、早速焚火に近づこうとすると、G.R.に襟を掴まれ戻された。


 「え?何?」


 「いや、話を聞いてる最中に行こうとするなよ!」


 「うん、そうだね。取引できるのはNPCだけじゃない。プレイヤー同士でも可能なんだよ。予選フィールドで手に入れた物品の取引をして本選に皆備えてるって訳。暗くてちょっと見えづらいかもしれないけど、山の方のフィールドに向かった連中は金属系素材に強い。防具や武器のグレードアップ素材なら彼らから買うんだね。平原に向かった連中は鳥や獣の素材だね。素材を直で売るより生産スキルで何がしかの物品に変えてると思う。そして僕たち森プレイヤーだけど……」


 「毒とか売れますかね?」


 「誰が使うんだよ。枝とか草とかそんなんばっかり」


 「森は木材が強いんだけど、あと……そのまま食べれる食品系だね。ベリーとか」


 「ベリーなんてありました?」


 「全然気が付かなかった」


 「ラビがあちこちで拾い物してる間、僕たちがさぼってたとでも思ってるの?ちゃんと集められるものは集めてたっての。サバイバルと名がついてる以上、食品は一定の需要があるからね~。という訳で後は自分が欲しものの為にそこら辺の人とうまく交渉してみな。ちなみにNPCが売ってくれるのはあくまで最低限の物品だからそのつもりでね」


 そう言って、暗がりに消えていくP.W.とG.R.の二人、残された幼馴染と顔を合わせるが、いつまでもこのままじゃいけないと、行動を開始する。

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