175.『うちの幼馴染に仕切りは無理』タツ
「それじゃあ、とりあえず闇商人でも探しに行く?」
何だかんだ交渉?の末、うちの幼馴染がとりあえず仕切る感じになったものの、どうにも先行きが怪しいというか、こいつ仕切るとか多分無理だろ?
何しろ幼い頃からゲームするか、映画見るか、そんなんばっかりで周りと碌に付き合わないし、その所為で親同士が仲がいいからって俺がいつもこいつの家に遊びに行かされてた。
まぁ、別に誰と遊んだってかまわないんだが、一人でいるのが好きな奴に無理やりかまわされるのも子供心に面倒ではあったか。
そんな事を思っていると、かげまる?から衝撃の一言が飛び出す。
「予選にはいない」
「ん?」
思わず聞き返してしまった。
だってずっと闇商人を探して、ここまで歩いてきたんだよな?
「ああ、そこはきっちり騙されてたんだ?」
「闇商人は本選にならないといない。って言うか予選の間に準備をして、本選予選の合間に買い物、どうしても弾やなんかが足りない場合は闇商人を探す他ないって流れだ」
じゃあ、何の為にこれまでうろうろしてたんだ?
「だったらずっと身を隠してれば良かったんじゃ?」
「多分二人を始末するポイントを探してたんだろう」
あっ!そういう事か!それにしても、それならP.W.が銃を手に入れた時点でやればよかったのに。
チラッとP.W.を見ると肩をすくめているが、その動作が何を意味するのかはちょっと分からなかった。
とりあえずは、殺り損ねて荷物持ちって訳だが、一応自分も警戒はしておく。
正直な所、近距離戦闘だと武器相性的に多分自分が一番不利になるだろう。
だからと言って、油断していい訳でもない。
気持ちを入れなおして、全員を見渡してから発言する。
「じゃあ、どうする?」
「2択だね。ラビの食料を頼りに持久戦で粘るか、5人組っていう人数の利で積極的に敵の数を減らしに行くか」
「好きにしろ。指示には従う」
チラッとうちの幼馴染を見れば、両眉がちょっと垂れ下がってる。
多分、どうしよう?とか思ってるんだろうな。
全く昔からいつもこうだ。とりあえず困って黙ってる内に、何とかやり過ごしちまう。
そう言うところが気に食わないんだが、ここは一つ俺が仕切るか!
「あ……じゃあ、罠の張りやすい場所探して待ち構えつつ持久戦しましょうか」
困ってたんじゃないんかい!いや……多分困ってたんだろうな。そしてとりあえず全部乗せで解決しようって訳か。
まぁ、うちの幼馴染にしては悪い解決策ではないんだろうが、問題は場所と罠の<設置>だよな。
罠自体は先輩のTEAMに使い手がいるから見せてもらった事もあるが、何か結構複雑な機械が必要なんだよな。
赤外線とか、音感センサー、振動センサー、光学センサーとかとクレイモア地雷?とかC4とかそう言うのを接続する必要が合った筈。
んで、それらのセンサーをジャミングする機械とかもあったんだけども、いずれにせよこのサバイバルな状況で、どうすんのか?って話だ。
「場所なら心当たりがある」
そう言うと、歩き出すかげまるに、とりあえず付いて行く他ない。
かげまるを先頭に、ラビP.W.G.R.俺の順で並び、一列で向かうが、これ大丈夫なのか?
かげまるもラビも二人を警戒してないと、危ないぞ?俺は遠距離型なんだからさ!
妙にドキドキしつつ、森を抜けると急に目の前が開けた。
丘と言うにもやや微妙な高さから見下ろす景色には、石を積んだ壁が半端に途切れ途切れになり、廃墟を思わせるものの家という程にはちゃんとした建物は無さそうだ。
その中で偶々目に映る人影が二つ。
どうやらバラバラに行動しているが、どうやら廃墟を探索中らしい。
その場に伏せて、一人に狙いを定め、撃つ。
ダーン!
と、ライフルの音が空気中に消えていいくのが耳に心地いい。
もう一人を見やると、壁に背を当てて隠れているつもりらしいが、残念ながらこちらは上から見ているので、もろ見えだ。
ダーン!……
また、銃声が空気に溶けて消えていく。
なぜか非難がましい目で見ながら両耳を押さえている幼馴染は放っておいて、廃墟の方へと向かってKillメダルは自分が回収させてもらう。
倒した二人の武器は、サブマシンガンとハンドガンだったため、弾をP.W.に渡し、あとはとりあえず預かる形とした。
更にヒントも手に入ったので、見てみるとまた抽象的な線が描いてあるだけだ。
「どうするの?宝探しする?それとも罠の張りやすい場所への移動を優先する?」
P.W.が誰にとも言えない感じで、皆に問いを発する。
っていうか、ここが罠を張りやすい場所じゃないんだ?
そりゃそうか、だって今の自分みたいに上から狙撃すれば一発だもんな。
何か森から出たから、何となくここの事かと思っちまった。
「敵は排除したんだし、宝探しでいいんじゃないか?」
どこか投げやりな感じでG.R.が言うものの果たしてどうしたもんか?
「じゃあ、ここに罠張ってみましょうか?」
いや、もう、いつもの事なんだけど、何でうちのアホな幼馴染はそういう判断になるんだ?




