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171.『なんかもう暗殺者じゃん』タツ

 森奥で隠れながら食事としゃれこんだところに敵襲……と思いきや、また手を組まないか案件。


 ヒントと交換で食料ってのはあながち悪い話ではないとは思うけども、手を組むってのはどうなんだろうか?


 すでにこちらは4人組で、いずれは決着をつけなきゃいけない身だ。


 とはいえ、この4人で最後まで生き残れるかなんて予想も出来ない、そもそも今がまだ序盤なのか、中盤なのかすら分かってないしな。


 何だかんだ、思ったよりは手早く銃を手に入れられる環境だってのは分かったが、もしかすると食料を調達する方が難しかったりするのかもしれない。


 まぁ、そりゃFPSだし、大抵のプレイヤーはなにがしか得意銃器がある訳で、うちの幼馴染みたいなのは寧ろ特例だってのはよく分かってる。


 しかも、かなり遠い所から接近に気が付いて、隠れたりするし、プレイスタイルが意味分からないんだよな。


 そんな事を考えつつも、G.R.が不意打ちを食らわないようにしっかり敵に照準を定め、ライフルを伏せ撃ちで構える。


 結構至近距離なので、寧ろやりづらくも感じるが、ここは自分が外すわけにはいくまい。


 正直な所、攻撃力は皆とんとんって所だろう。


 P.W.はある程度数を当てなきゃならないサブマシンガンだが、この距離ならほぼほぼ撃ち込めるし、G.R.はショットガンなので、至近距離に近づくほど、大きなノックバックで反撃を食らいにくかったはず。


 むしろ自分の有効射程が一番合ってないのだが、G.R.にフレンドリーファイアを出さずに一発で決めるなら自分だろ?それが狙撃手ってもんじゃん。


 「どうやら、本当に丸腰の様だな。それで、なんで俺達が食料を持ってるって分かった?」


 G.R.の交渉が始まる。


 「そ、そりゃあ、これだけ匂いが充満してれば遠くからでも何となく分かるぜ」


 言われてみれば、いつの間にやら貝の焼いた香ばしいにおいが漂ってる。フルダイブVRってのは本当に変なところ作りこまれてて、何が自分達の居場所を知らせる気配に繋がるのか、本当に分からないもんだ。


 「そうか、確かにそうだな、分かった。とりあえず手を組むかどうかは置いておいて、食料とヒントの交換といくか」


 「あ、ああ……それでいい。頼むよ……」


 やはり丸腰で銃を持ってる相手との交渉は緊張するのか、微妙に言いよどんだ雰囲気の相手だが、とりあえず今食料を持ってるのはラビだし、皿持って出てくるか?


 ……アレー?出てこない?


 あいつ何だかんだ空気読めないし、まだ出て来ちゃダメなんじゃないかと勘違いしてるのか?


 「なぁ、おい?交渉はまとまったんだが、やめておくのか?」


 「いや、あんたが代表なんだろ?こっちはこの通りヒントを渡すぜ?」


 そう言いながら例のヒントBOXを取り出しG.R.に見せている。


 妙に気まずい空気が流れ、どうしたものかと思ったら、


 ガサガサ


 草むらを分ける音がして、P.W.が出てきた。


 片手にはさっき調理してた焼き貝を持って、もう片方の手で摘まんで食べている。


 「えっと……うちで調理した物は、アレなんだが、貝食べられないとか無いよな?」


 「あ、ああ勿論!貝大好きだぜ!」


 そう言うと、ニヤリとしたP.W.が一歩前に出て皿をポイっと、軽く投げる。


 思わず皆揃ってその皿に目を取られると、


 パラパラパラ……


 妙に非現実感のする軽く乾いた射撃音が響き、交渉に来た男を撃ち抜いた。


 「お、おい!」


 「な、なんで?」


 「だって、近くに仲間が、隠れてるんでしょ?」


 P.W.の言葉が終わるか終わらないかの所で、相手はヒントBOXから何かを取り出した。


 ダーン!


 今度は妙に重い響きが空気を振動させ、男が吹っ飛ぶ。


 G.W.が至近距離でショットガンをぶっ放した所為だと気が付いた時には、木にぶつかった男がダランと、崩れ落ちる所だった。


 急な展開と、妙に静まり返った森の様子にどうしたらいいものかと、迷っていると暗がりから音もなくラビが現れた。


 「ドロップ品確認しておく?」


 何事も無かったかのように今倒したばかりの相手を漁る。


 「はぁぁ……どういうことか説明してもらえるか?」


 何かため息をつきながら疲れた声を出すG.R.にP.W.が答える。


 「だから、こいつには仲間がいて、僕たち同様に隠れて狙ってたって訳。匂いがどうとか言ってたけど、多分どこかで偶々見かけて尾行したんじゃないの?」


 「それでその仲間ってのは?」


 「もう、殺したよ。ドロップ品はライフルと生肉と毛皮と銀貨と白金貨、調理道具は無かったから本当に空腹度はギリギリだったのかもね」


 そんな事言いつつ、今しがた倒したばかりの相手からは手に収まる程度の小型拳銃と白金貨を手に居れた様だ。


 「それは、ラビが使いなよ。銃持ってないのラビだけなんだし」


 「そうだな。デリンジャーだから有効射程もかなり短いし、ナイフの距離に合うかもしれないしな」


 「そう?じゃあ、自分が使う」


 そう言って、ナチュラルにベルトにデリンジャーを挿すが、何かもうナイフとデリンジャーってなんかもう……。


 「あと、タツはそろそろ出て来なよ。ごはん再開しよ!」


 P.W.に促されて、いまだに自分だけ草むらに寝ころんでいたことに気が付いた。

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