168.敵襲『はやくも銃撃戦』
ひとまず宝箱を開くと目についたのが、黒い箱みたいな物と小さな作業台、それに金色のコインが20枚。
コインが海の中の宝箱より多いのはいいとして、この小さな作業台が気になる……。
取り出してみるとホントにただの木机なのだが、アイテムボックスに収納して確認すると万能タイプの作業台だった。
「これ、イングラムM11か?」
「詳しい事は分からないけど、サブマシンガンっぽいよな?」
「じゃあ、誰が使うか決める?」
「ヒントを見つけたのはタツだし、宝箱を見つけたのはラビなんだからそっちが優先だろ」
早速、拾った〔砂〕を取り出して作業台に乗せると〔ガラス〕が出てきたので、一旦すべてガラスにしてしまい、さらにそこから〔ガラス瓶〕を作っていく。
「いや、俺は狙撃手だし、あっちは見ての通り変わり者だから、二人が使うなら二人に譲るぜ?」
「ホント!?助かる!」
「そういう訳にはいかんだろ。今は手を組んでるとはいえ、銃を持てば戦力に偏りが出る。俺達が裏切ったらどうする気だ?」
ガラス瓶が出来た所で、今度はハーブ類を作業台に乗せて行けば、回復用のタブレットを作れるようなので、あるだけ薬に変えてしまう。
「そうれはそうだけども、使えない物持ってても仕方ないだろ?寧ろ一々そういやって教えてくれる奴に撃たれるなら仕方ねぇよ」
「撃たないって!撃つ時はちゃんとお互い納得してから撃ち合おうよ!」
「いや、そんな上手くいくわけないだろうが!どっちもお人好し過ぎるって!それとラビは、どうなんだ?」
「え?呼んだ?」
とりあえずタブレットの入れ物がないので、種類ごとに瓶詰めしていたのだが、何か話を振られた。
「宝箱から銃が出て来たからどうするかって話だよ」
「うん!サブマシンガンなんだけど、どうする?」
そう言って見せられたのは、最初に思いっきりスルーした黒い箱みたいなやつだ。
確かによく見れば引き金もついてるし、サイズ的にサブマシンガンなのだろう。ちょっと大きめの拳銃にも見えなくは無いんだけど、くっついてるマガジンの長さが、何となくサブマシンガンだよって主張している気がしなくもない。
「ラビはサブマシンガンは使えないのか?」
「自分はクロスボウ使うんで、サブマシンガンは使わないですかね……危ない!」
唐突に首筋に悪寒のようなモノが走り、近くにいたP.W.を掴んでその場に伏せる。
ターン!
すると、発砲音を森に響き渡った。
すぐさま近くの木の近くに伏せてそれぞれ隠れたが、まだ敵影は確認できていない。
「タツ!もしナイフ使えないなら貸して!」
自分が声を上げると、自分が隠れていた木に銃弾がぶつかり木の幹の爆ぜる音がした。
そして、同時に自分の足元にナイフが三本投げつけられる。
「僕のも使っていいよ!」
「俺のもだ。正直自信は無い」
「持ってけ!何する気か知らねぇけど、狙撃銃が無きゃ俺は何もできねぇからさ!」
すぐさま三本のナイフを拾い上げ、適当にベルトに差して、木を背中にそっと立ち上がる。
多分だが、相手は単発のライフル使いだと思う。
一発の間隔が妙に長い所から言って、タツみたいな狙撃銃使いか、変態の人みたいな単発のライフル使い。
威力と命中精度が高くて射程距離も長いいやらしい武器だ。
「僕が囮になるよ。代わりにこのイングラムM11は僕が使わせてもらうね」
そう言うなり、適当な方向へ弾をばらまきながら、飛び出すP.W.に向けて銃弾が一発発射された。
素早い動きで転がって銃弾をかわしつつ、別の木に隠れたP.W.が無事なのを見計らいつつ自分も敵がいるであろう方向へと走る。
首筋から背中にかけて、ゾクッとした感覚と同時に飛びのいて、木の陰に隠れると、また一発近くを弾が通り抜けていった。
再装填までの時間も勿体ないとすぐさま駆け出すと、同時にP.W.も駆け出し、二人でひた走る。
P.W.が何かの拍子に転がって、木に隠れたが自分はひたすらまっすぐ走る。
するとやっと敵影が見えた所で、敵が相変わらずP.W.を狙っているのが確認できた。
そのまま突っ込み、ナイフを投げつけると、肩の急所に刺さりライフルを支えていた左腕が、だらんと垂れ落ち、驚いたような顔でこちらを見てくる敵。
そこに横合いから、ナイフを振りかざした人間がもう一人現れたので、眉間にもう一本ナイフを投げつける。
その間に、強引に片手でライフルをこちらに向けてきた敵の眉間に、ナイフを投げつけ、これで三本消費した。
そのまま抱き着くようにタックルし、喉に最後のナイフを突き立てる。
そのまま振り返り、使った事もないライフルを強引に奪い取って、硬直が解けたばかりの敵にゼロ距離射撃をぶちかます。
熟練度がないとはいえ、この距離では外しようもなく、衝撃で一歩下がる間にライフル使いに突き刺したナイフを引き抜いて、そのまま目の前のナイフ使いの敵の急所を抉る。
ナイフを手放さず、引き抜きながら一歩引くと、
パラララ!
っと軽い音がして、P.W.がライフル使いにとどめを刺していた。
両手を上げた目の前のナイフ使いだが、程なくして、力を失って木に寄りかかるとそのままずるずると崩れ落ちて動かなくなった。
「やるー!」
「え?ああ、どうも」




