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167.『何だかんだすぐに見つかるお宝』タツ

 ミルキーな味の貝のスープにパンを浸して齧り、ひと心地つく。


 そしてふと、スープとパンとして食べるだけじゃなくて、パンをスープに浸して、その味すら再現できるって凄いんじゃない?って、急に思ったのだが、皆は不思議に思わないのかな?


 これもこれまで幾多のフルダイブVR開発の中で蓄積されてきた技術って事なんだろうか?


 ……まぁ、自分で考えた所で答えなんか出る訳ないか。


 それよりも相変わらずと言うかなんというか、空気の読めない幼馴染には困ったもんだ。


 食材になってた貝は海に入ってたんだし、まだいいとして!調理器具とかは、いつの間に集めたんだっての!


 んで、一人だけ食うっていう神経!ホント!そう言うところだぞ!せめて見えないところでやれ!そういうのは!


 「ああ、えっと……ラビ君でいいんだよな?さっきそう呼ばれてたし……その飯奢って貰ってなんなんだが、それはどこで手に入れたんだ?」


 「調理器具とかですか?海から入れる空洞みたいなところにクーラーボックスみたいなのが置いてましたよ?」


 大柄で冷静な方が、ラビに質問してくれている。自分もそれが気になっていた。


 「宝箱だな。ヒントはどうやって見つけたんだ?」


 「ノーヒントですね。偶然怪しい隙間を見つけたんで入ってみただけって感じです」


 ラビの言葉に腕組みして、黙り込む大柄な方……そういえば……。


 「僕はP.W.でこっちはG.R.だよ」


 「へ?」


 思わず変な声で答えてしまったが、小柄な方は相変わらず急に思った事を言うもんだから、頭がついていかない。


 「名前!君がタツで、あっちがラビでしょ?だから僕達も名前知っておいた方が良いと思って」


 すごく助かる!ちょうど今大きい方とか小さい方とか面倒だなって思った所だった。


 突拍子もないようで、小さい方が相手の思考を読むのに長けてるのか?


 「あの……アルファベット2文字とか何かの略っぽいですけど、何の略なんでしょうか?」


 そして相変わらず空気の読めない幼馴染は、あまり聞かないでもいい事を聞く。


 名前なんてネタで決める事だって多いんだから、相手が言い出すまで突っ込まない方がいいだろうに。


 「うんとね~僕達は家がどっちもトウモロコシ農家でさ~僕んちがピュアホワイト作ってて~あっちがゴールドラッシュ作ってるんだよね~」


 「おい!あまり個人情報をこういう場で垂れ流すなって!」


 だからトウモロコシみたいな髪してるのか!


 「だからトウモロコシみたいな髪してるんですね!いいですねそういうの!自分はAI任せにしちゃったから……」


 「道理で妙に芋っぽいっていうか、欧米圏の田舎者風だと思ったよ」


 「そういうタツはファンタジーじゃん」


 地味すぎる火星の砂みたいな色をしたくせっ毛の幼馴染に、思いっきりディスられた。確かに格好つけすぎた気はしないでもない。


 「まぁ、お互いの名前も分かった事だし、さっきのタツのヒントの謎解きでもしないか?」


 つい会話が逸れていく自分達を窘めてくれるG.R.と組めたのは運が良かったのかもしれない。


 アイテムボックスにつっこんでおいた小箱を取り出し、中身を取り出す。


 まず、コインは10枚と、それに何やら描かれた紙が一枚だ。


 「あれそのコイン、銀色なんだ?」


 そう言いながら、ラビは金色のコインを見せてきた。


 「ヒントBOXのコインとトレジャーBOX(宝箱)のコインじゃ、価値が違うからな。その辺は商人に会えば分かるだろ。それより今はヒントを見よう」


 やっぱG.R.は頼りになるな。勢いで参加した自分とは情報量が違う。


 そんな事を考えつつ、紙を広げると、何やら落書きの様な、それでいて意味ありげな線が描かれている。


 「ナニコレ?分かる?」


 「いや、悪いけど俺はちょっと分かんないかな?G.R.は?」


 思わず今の所一番頼りになるG.R.に振ってみたけど、難しい顔をして首をかしげている。


 抽象的過ぎて何が何だか分からないヒントに、困惑を隠しきれない。


 謎解きって言うからもっとなぞなぞ的なアレかと思ったのに、適当な線で何が分かるっての!


 「タツ、それ逆さまじゃない?」


 急にラビがそんなことを言い出すので、ひっくり返してみたが、結局ただの線でしかない。


 「これで何が分かるの?」


 無邪気にP.W.が聞いてくるが、分かる訳もない。だってただの線なんだもん。


 強いて言うなら、妙に右斜めに傾いた線だな~って位か?


 「ひっくり返したけど、こっからどうすんだ?」


 変な事を言う幼馴染に意地悪半分で問いかける。


 「どうしようか?隠してある場所のヒントがないや」


 「え!何か分かるの?」


 「いやいやいや!こんなんで分かる訳ないだろ!」


 P.W.が純粋にラビの事を信じそうなので、突っ込みを入れておく。っていうかただの線で何が分かるっての!


 妙に目を細めつつ、周囲一帯を見渡すラビ。


 多分だけど、自分だけが知ってる幼馴染の癖。


 この幼馴染は生まれた時から耳が悪い……だからなのか、何か考える時に妙に周囲をよく観察する。


 目で見えるありとあらゆる情報を取り込んで、安心するのだろうか?


 その真意は分からないものの、凄く目に頼る。そして次は指だ……思った瞬間には腰に差してあるナイフをいじり、近くの岩を撫で始めた。


 「タツ……その紙借りていい?」


 言われるがまま、紙を差し出す。


 すると、紙を目の前に掲げながら、さっきまで遮蔽物にしていた岩と見比べつつ、後ろへと下がっていく。


 「ここだ」


 言うが早いか、ナイフで地面を突き刺すと、大きなクーラーボックスが出てきた。


 さっきまで光る地面と言えば、ラビが喜びそうな枝とか草とかしょーもない物しか出てこなかったのに、あっさりとナイフで刺しただけじゃ出てこな無さそうなサイズのクーラーボックスが文字通り地面から飛び出した。


 「何で分かったんだ?」


 G.R.の問いにあっさりと答えるラビ。


 「コレ漢字で『岩』って書いてあるから」


 言われてみれば、妙に斜めにかつ細長く『岩』って書かれてるわ。こんな感じなのかよ!謎解きって!

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