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165.『一生恥ずかしい』タツ

 腐れ縁ってのは、こういう事を言うのだろう。


 お互い気が合わない事は知ってるのに、何故か一緒に行動する羽目になる。


 陰気でめんどくさい幼馴染は、イベント開始してまず海に潜るって何考えてんだ?


 このゲームじゃ、基本的に海は鬼門らしい。


 鬼門が何なのかは知らないけども先輩達がそう言ってたんだから、何か鬼とか出るんだろう。


 いや、別に海に鬼がいるとかじゃなくて、鬼が出る門に例えてるって事だ。


 ……いまいち想像できない。


 でも多分やばいって事だと思っておけば間違いないだろう。鬼が出るんだし海はやばいぜ!みたいな?


 何か楽しそうだな。


 そんな事を考えている内に、あっという間に海に潜っていく幼馴染は、やっぱり何考えてるか分からん。


 昔からそうだけども、話が通じないんだよな。


 人の話を聞いてないっていうか、聞こえてないっていうか、それは仕方ないとして聞き間違いも酷過ぎる。


 多分そういう行き違いでなんか合わねぇな~ってなっちまったんだろうな。


 まぁいいや。変な幼馴染の事を考えてたって何も進まないし、得もしない。だったらさっさと周辺に何があるか調べた方がずっといい。


 何なら宝探し要素のヒントの一つでも見つかれば、なお良しって所か。


 とりあえず、周囲を警戒しつつ海辺から島の内陸方向に向かっていく。


 何しろ周囲はごつごつした岩ばかりで、隠れる場所なんて一つもありやしないし、足場も悪くていざ逃げるにも不適当と言わざるを得ない。


 出来るだけ身を低くしつつ、近くの森へとはいる。


 何も陽を遮るものの無かった場所から、急に森へ入ると一瞬にして目が眩んだように真っ暗に感じた。


 とりあえず一本の木の根元にかがみ込み、目が慣れるのを待つ。


 周囲がちゃんと見えて来た所で、立ち上がろうとすると、手を突いた木の根っこが妙な感触で思わず、その場にひっくり返ってしまった。


 固いはずの木の根がなんか妙に冷たく硬かっただけなのだが、予想もしない感触に一人で驚いてひっくり返り、もしも誰かに見られてたら一生思い出しては恥ずかしくなるだろう。


 「大丈夫?」


 見られてた……。


 うわーーーーー一生の恥ずかしい奴じゃん!


 じゃない!


 思わずその場に転がって間合いを取りつつ、起き上がると同時にナイフを引き抜いて構える。


 正直、自分でもよくそんな動きが出来たなと感心したい所だが、それどころじゃない。


 「ああ、待て待て!敵じゃない」


 「はぁ?プレイヤー同士は敵じゃないのか?」


 「そうだけども。そうじゃない」


 「それじゃ伝わらんだろ。今回のイベント結構な人数が参加してるし、手を組まないかって話だ」


 「手を組む?」


 「一時的に仲間になるって事!」


 「それは分かるだろ!条件としてはだな……」


 「ああ!敵がいっぱいいるから一旦4人組でやろうぜって事か!」


 「そうそう!」


 「そこが分からんって事あるのか?まあ理解出来たんだからいいとしてだ。お互いナイフ一本で、しかも食料も精々一食分。これじゃあっという間に詰むのは目に見えてるだろ?」


 「まぁ確かにな。早いところ探索して闇商人NPCだかを見つけるつもりだが?」


 「いいじゃん!とりあえずお互い装備が整うまでだけでも手を組んで探索しようよ」


 「人数が多ければ、他の連中もおいそれとナイフ一本で攻撃なんてしてこないだろうしな」


 正直な所、疑う余地は大いにあるのだが、とはいえ今自分は一人だし、逃げるにしても多分この二人より足が遅い。


 何しろスナイパー職の悲しい運命によりAGIを育てる余裕が全くないんだから、仕方ない。


 そうなれば一旦従うふりをして時間を稼ぐ……と言えば聞こえがいいが、何にもできないんだから従う他ないというのが、正確な所だし不甲斐ない。


 腹を決めるとようやっと周りが見えてきて、今しがた話していた二人組がどちらもトウモロコシの毛の様な白黄色っぽい髪色で、片方はやたらと小柄、もう片方は真逆にやたらとがっちりとした大柄体型の二人組だという事がちゃんと情報として頭に入った。


 「それで、なんで俺と組もうと?」


 「転んでたから」


 「一人でいたから、交渉しやすいと思ってな。なりふり構わず暴れたとしても制圧しやすいかと思ったってのもあるな」


 二人の話を聞き、そう言えば何か変なものを触って驚いて転んだのだったと、自分がいた木の根元をよく見てみる。


 すると、そこには金属の小さい箱があり、その冷たい感触に驚いたのだと今更分かった。


 「何それ?」


 「ヒントの入ったBOXだな。確か前回の動画にあった」


 「そうなのか?」


 とりあえず開けてみた所、なにやら紙とコインが入ってる。


 「何々?何が書いてあるの?」


 「待て!こんな所でいつまでも駄弁ってたら、誰かに見つかるかもしれん。とりあえず目立たない所まで移動しよう。相方はどこにいるんだ?」


 「海だけど?」


 「海って、あっちにいるって事?」


 「あんな遮蔽物も無い所にいたんじゃ、危ないんじゃないか?まぁまだどのプレイヤーもナイフ一本しか持ってないんだろうが……」


 「いやそれが、海に潜って行っちまって」


 「え!?危ないよ!それ!」


 「まさか、早々に死んじまってるなんて事ないよな?どうする?探しに行くか?」


 やっぱり海は危なかったらしい。ホントに手のかかる困った幼馴染だ。

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