表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
165/187

164.岩場『海じゃん』

 引き寄せては返す波が、妙に黒くごつごつと尖った岩に当たっては白い波しぶきを打ち上げる。


 「すげースタート地点だな」


 「ここしか空いてなかったんだから、仕方ないじゃん」


 「そりゃ分かってるけどよ」


 タッグチームイベント当日、例の掲示板の元に集まったら、開始と同時にここにいたって感じ?


 ワープと言っていいのか、まばたきの間に目の前が海、そして高い波しぶきがぶっかかり、既にびしょぬれ状態。


 早々に濡れるのは諦めて受け入れ、さてどうするかという所だ。


 とりあえず荷物に関してはコットさんから聞いた通り、初期の服とブーツ、腰のベルトには大型の作業ナイフを提げており、アイテムボックスに水と食料が入っているが、精々一食分って所か?


 「とりあえず……」


 「移動して商人NPCだかを探すか?」


 「いや、お金も無いうちから探してどうするの?」


 「そりゃ、俺達がこの状態なのと同じように周りの連中だって多分同じだろ?お互い攻撃力が無いうちに重要なポイントだけでも探っておいた方が、何かと後々有利だろ?」


 確かにタツの言う事も筋が通ってるとは思うけど、個人的には先にやれる事があると思う。


 「折角目の前が海なんだから、水中の素材集めて行ったらいいんじゃないの?」


 「はぁ?碌な武装もないのに海の中なんて自殺行為なんじゃないか?」


 「いや、多分だけど岩場から離れなければ食用の貝とか採れる筈だし、食べる物が少しあるだけでも、この先違うんじゃないの?」


 「食用の貝って言ったって、どうやって調理するんだよ」


 「作業用ナイフでどこまで生産できるか次第だとは思うけど、ダメなら作業台を探すしかないね」


 何やら思案気なタツが、答えを出すのにはそう時間はかからなかった。


 「分かった。正直他の連中で海の中に潜ろうなんて奴いないだろうし、逆張りって事で今回は乗るぜ。俺は周辺に何かないか探してるから、無理はするなよ?当然だけど海から出る時も他のプレイヤーに見つからないようにな」


 と、言う事で一旦二手に分かれる事になった。


 海の中の危険は承知の上だし、慎重に岩場を伝って海中を覗く。


 とりあえず、魚影は無し。


 ゆっくりと潜り、岩肌をなぞるように進んでいく。


 早速、岩肌に貝が大量に張り付いたところを見つけ、作業ナイフで剥がしていくと〔とこぶし〕って言う貝だそうで、食用である事が分かった。


 更に潜ると底は砂地になっている。


 砂地は魚が隠れてる可能性が高いので要注意なのだが、ちょっと気になる場所があったのでナイフで掘ってみると〔アサリ〕が出てきた。


 一度空気を吸いに水上に戻り、もう一度潜ってみると、砂地は気になるところだらけだ。


 次から次へと掘っていけば〔アサリ〕だけじゃなく〔ハマグリ〕〔アオヤギ〕なんかが手に入った。


 調子に乗って次から次へと掘り進んでいると、何やら自分が伝って来た岩場に隙間と言うか、あからさまな空洞がある?


 とりあえず一回呼吸を戻してから、再度見るとかなり怪しい。


 行ける所まで行ってみるかと空洞を進めば、割とすぐに上から光がさしている所が見つかったので、その光に向かって進む。


 あっという間に海から出ると、そこは岩に囲まれた空間で砂地にクーラーボックスが一個放置されていた。


 まぁ、この状況で開けない手は無いかとそのボックスを開く。


 〔携帯コンロ〕〔万能調味料〕×50〔使い捨て食器〕×50〔イベントコイン〕×10


 「……なるほど、こういう事か」


 思わず口に出てしまったが、いわゆるこれが宝探し要素なんだろう。そして意図せず自分は見つけてしまったと、そういう事だ。


 兎にも角にもこれで食べる物だけは見通しが立ったし、悪くはない気がする。


 調理の目途が立ったんだからと、魚には十分警戒しながら近くの貝を掘り漁っていく。


 すると、ふと見覚えのある海藻が目についたので、採取すれば〔白粘液〕用の海藻だった。


 そのまま、海藻と貝をひたすら漁り続けたが、ふと我に返る。


 正直な所、まだまだ採り足りない気持ちではあったが、タッグマッチと言う性質上、タツに定時連絡も必要だろうと、急に冷静になり岩場からそっと上がる。


 タツが今どこにいるか分からないが、周囲に敵がいるとも知れない状況で、あまり目立つ行動はしたくない。


 そろそろと、岩場から島の内側に向かうと、割とすぐに森と言っていいのか、鬱蒼とした雰囲気の木々が広がるフィールドになるっぽい。


 〈木工〉使いの変態なら、寧ろこっちが主戦場になるのだろうが、果たして自分には有利に働くか微妙な所か。


 タツも周辺の様子を窺うとしか言ってなかったしどうするか……。


 いつでも海に逃げられるように、海岸線をひそひそと移動していく。


 すると、見たようなシルエットに気が付き、ぱっと身を潜めた。


 案の定それはタツであり、何かを探している風だったが、問題は近くに二つ人影がある事だ。


 状況から考えて、タツが他のプレイヤーに見つかった挙句2対1で逆らえず、とりあえず従ってると考えるのが無難だろう。


 そう考えると……とりあえず自分が一人奇襲して倒せば、逆の2対1を作れて、有利になる?


 ならば、やってやろうじゃないかとナイフを引き抜き、そっと二人組の一人に近づいていく。


 確か、詐欺師のお姉さん曰く、首を掻っ捌けば殺せるはずだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ