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15.準備『効率が悪くとも自分で揃える他ない』

 保安官に紹介された薬屋にいたのは独りのシワシワのお婆さんだった。


 案の定毒を初めとした液体を詰めて保管する瓶はここに売っていたが、矢が2クレジットの中、5クレジットは中々に値の張る代物だ。


 しかし、保安官曰く自分の使っているクロスボウは状態異常を得意とする武器らしいし、ここは先行投資と考えて、10個ほど買っておく。


 現状まだ大きな収入のない自分としては、出来るだけ節約しつつ自給自足で生活する事から始めたいが、こればっかりは仕方ない。


 更に自分が<製作>持ちで、謎のハーブの様な葉っぱを拾った事から〔錠剤〕と呼ばれる薬の作り方も教えて貰えた。


 正直な所このゲームのNPCは一見愛想がない様に見えて、勝手に向こうから色々と教えてくれる事が多い。


 まぁ、それで困ってるというより、凄く助かっているという話だが〔錠剤〕は飲むと一定時間HPの自然回復速度が上昇するらしいので、実質初期の回復役的な道具と見て差し支えないだろう。


 ちなみにその〔錠剤〕を入れて装備して持ち歩くケースを一個50クレジットで買わされたが、これも先行投資としよう。


 一先ず全部必要な物は揃った筈だと、工房へと戻り、今作れるものを確認する。


 まずは、一案大事な矢だが木工施設と思われる場所で拾った〔枝〕を消費して〔粗末な矢〕を作れた。


 更に、作業机にそれを持って行くと〔蜂の毒針〕をくっつける事で〔毒木矢〕となる事が分った。


 しかし、毒針に関しては毒を抽出できる筈だし、一旦作るのは待って、先に薬関係の施設を使用する。


 〔Gハーブ〕(拾った緑のハーブの様な葉っぱ)を使用する事で〔錠剤(自己治癒)〕を作成可能。ちなみに〔錠剤ケース〕には10個までストックできた。


 次に〔蜂の毒針〕10個を使用することで、〔毒液〕を一瓶確保できた。毒を抜いた毒針はただの〔蜂の針〕へと変わって戻ってくる。


 その針と〔粗末な矢〕を合成する事で〔仕掛け木矢〕となるが性能としては店売りの矢より若干弱そう。


 ちなみに<製作>とは関係無しに、〔毒液〕に〔仕掛け木矢〕の先端を浸すと毒を吸って〔毒木矢〕になるのだが、もしかして一々瓶に毒を詰めるのって無駄なのか?


 ……いや今後麻痺毒って言うのを手に入れられれば〔麻痺木矢〕とかになるかもしれないし、無駄って事はない筈!一応〔仕掛け木矢〕もある程度確保しておく事にする。


 問題は2種類の矢をどうやって持ち歩くかだ。


 今までは最初に新人に優しいガンスミスのコットさんから貰った矢筒というのだろうか?矢を仕舞える筒に突っ込んで肩にかけて持ち歩いていたのだが、種類が増えるとそう言う訳にも行かない。


 一応昨日買った50本のセットは撃ち切っているし、〔毒木矢〕だけ筒に入れて持ち歩くしかないか……。


 また狩りをしてお金が貯まったら、別の筒もどこかで買うとしよう!


 とりあえず、出来る事はやった。あとはステータスだが、まずは一つDEXに振る事で<精密>を手に入れる。


 これはアクティブスキルなので、これでセット枠は埋まるが、どうやら使用すると一定時間ステータスDEXに補強がかかり、命中精度や<製作>に影響があるとか。


 使用方法は簡単で左手を下に向けて設定した指をツークリック。これだけでアクティブスキルのショートカットになるらしい。


 ちなみに<製作>もショートカットで起こす事は出来るが、工房のように何でも作れるわけではないので、要注意だ。


 残り3つはSNSに振っておこう。


 そんなこんな準備は出来たが現在火星は夜で、外に出るのは厳しいと思われる。


 そこで街中で受けられるクエスト、ドブネズミ駆除で今日の所は稼いでおこうと、保安官舎へと向う。


 「よう、溝鼠!何の用だ?」


 「お陰さまで拾った獣の素材を交換して準備が整ったので、クエストを受けに来たんですが」


 「そりゃいい心がけだな。だが今お前に斡旋出来るのは溝鼠の駆除だけだが、どうする?」


 「丁度それを請けたかったのでそれでお願いします」


 「ふむ、前回は右も左も分らん蛆虫用だから、報酬もそれなりだったが、ここからは少しシビアになるぞ?」


 「……損が出なければ、請けたいんですけど」


 「ふん!正直だな!だがそれでいい。慈善活動でやらせる訳じゃない。今回は〔鼠肉〕5クレジット〔鼠皮〕7クレジット〔鼠歯〕10クレジットの買取だ。はっきり言って普通の奴は請けない」


 「弾代の方が高いですもんね。運よく2つづつ常に出ればギリギリって所ですか」


 「そうだ。だがそれ以上は出せないし、今の所それでいい。何しろ大量発生さえしなければ、俺達の残飯を漁って地下道で何となく生きてるだけの生き物だ」


 「じゃあ、なんで敢えて狩る為のクエストがあるんですか?」


 「そりゃ、新人未満共が食えるようにって言う上のお達しと、餓えるとマスドライバーの配線なんかを齧りかねないって言う危険性から、ある程度安全マージンを取るためだな」


 「分りました。請けます」


 「ほう?いい心がけだ。溝鼠相手だからって油断するなよ?お前みたいにまともに働こうって奴が死んでも困るからな」


 保安官の声を背に再び下水路に向う。

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