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158.真相『ちゃんと達成できるミステリークエストでよかった』

 「水槽は元々食堂の物だし、そのまま戻されるが、それが何だね?」


 「現場の証拠物件として、保安官が押収することは出来ませんか?」


 「出来なくはないが……」


 「待ってください!我々も商売があるんで、流石にそれは困りますよ」


 「との事なんだが、どうしても押収しなければならない理由があるのかね?」


 「そりゃ、その店主さんが漆黒のノワールだからですよ」


 保安官さんとの会話していると、急に辺りが騒然とし始める。


 一体何が起きたのかと周囲を見渡せば、何故か自分達を取り囲むように人が集まっていた。 


 「おい、ラビ!そんな事言って大丈夫なのか?」


 コットさんが心配そうに声を掛けてくるが、一体何がダメなのだろうか?


 「わ、私はしがない食堂のおやじだよ?一体全体何で私が怪盗などとでたらめを言うんだね?」


 「でたらめ?あの暗闇の中で平気で移動してたのにですか?他の人は多少慌ててはいても殆ど移動はしていなかったように見えましたよ?それともあの暗闇の中で移動した事に合理的な理由があるんですか?」


 「ちょっと驚いて少しばかりの距離を動いてしまっただけだろう?寧ろ突発的な状況下で不合理な行動を偶々しただけの事を咎めてる君の方がおかしいんじゃないかい?」


 「別に咎めてはいませんよ?ただ、貴方がでたらめだと言うから変な行動を指摘しただけです」


 「でも言われてみれば、確かにあの時被害者である私の上司は飲み物を取りに行って、店主殿の近くにいたような気がしますな」


 自分と漆黒のノワールの会話に事務員さんが後押しをしてくれる。


 「じゃあ、私が屋敷の主人を殺したというのですか?いつもご贔屓にしていただいているというのに?どうやって?」


 「それは気になりますね。もしかして飲み物に毒を入れたとか?でも飲ませたにしては死に方が不自然だって言ってたし、そもそも飲み物を取りに行っただけで、被害者は飲み物をまだ手にしてなかった気が……」


 アルバー君もなんか参加してきたんだけど、皆は何を言ってるんだ?


 「いや、食堂の店主が殺したなんて言ってませんよ?漆黒のノワールですよね?って聞いてるんです」


 「何言ってるんだ?ラビは?」


 「いや、コットさん……さっきも思ったんですけど、何で殺人犯と漆黒のノワールが同一人物じゃないといけないんですか?泥棒と殺人は別ですよね?」


 「いや、でもブローチが消えたのと死んだタイミングがあまりにも合致しすぎてたじゃないですか!狙ってやったとしか!」


 「アルバー君それは違うと思う。今回の場合、漆黒のノワールが先にブローチを盗んで、ちょうどいいからって殺人があったんだよ」


 「じゃあ、誰が殺したっていうんだ!」


 「コットさん……自分達の受けた依頼ってなんでした?漆黒のノワールの盗みを阻止することですよ?そして、盗まれる可能性があるのは二つ。ブラックホールか、ブローチの石かその二つを保安官が押収さえすれば片はつくんです」


 「だとして、ブローチの石が今どこにあるかなんて……」


 「アルバー君?水槽見てみなよ!いっぱい黒い石が沈んでるからさ。多分最初からそこに隠すつもりで持ち込んだんじゃないの漆黒のノワールさん?」


 「いや、これは偶々……」


 「偶々が多いですね。でも、隠せる場所がそこしかないなら、押収してもいいんじゃないですか?」


 「待ってください!証拠は?私が漆黒のノワールだという証拠はあるんですか?」


 「ありませんよ?」


 「じゃあ!」


 「でも、他にブローチの石を隠せそうな場所がないんだから保安官が事務所で水槽を丁寧に調べてから返却すればいいだけの話ですよね?自分はそれで今回の犯行を阻止できると思ってます」


 「ふむ、押収するには十分な理由に思える。引き取らせていただくよ?」


 そう言うと、制服の人達が集まってくきた。


 すると突然漆黒のノワールの手が服の懐に伸びたので、すかさず投げナイフを放つ。


 肩口にナイフが刺さり腕の動きが止まった所を保安官が抑え込む。


 「くっくっく……仕方がありません今回は素直にお縄につきましょうか」


 急に声のトーンが変わった漆黒のノワールは、今までどうやって店主さんの声色を真似ていたのか不思議なほど中性的な声をしている。


 「ふむ、見事だね。依頼達成としよう」


 保安官に告げられ、いつの間にか周囲のざわめきも止まっていた。


 両手に手錠を掛けられゆっくりと建たされた漆黒のノワールが去りざまに質問を投げかけてくる。


 「いつから、偽物だと気づいていましたか?」


 「それは、最初に会った時カレイの事を知らなかったからですね。自分が食堂に行った時、一番最初に料理してもらった魚がそれでしたから」


 「これは迂闊でしたね。まさか顔見知りが探偵に混ざっているとは……まぁいいでしょう。漆黒の宝玉は預けておきます。もしかしたら君に火星の記憶と縁がないとも言い切れないし……」


 「火星の記憶?」


 残念ながら答えを聞く前に漆黒のノワールは連行されて行ってしまった。


 「そう言えば、結局ブラックホールはどうなるんでしょうか?」


 アルバー君が誰に聞くともなく質問を投げかけてきた。


 「どうやらただの黒真珠の様ですし、どなたかの手に渡るのではないですかな?」


 と、事務員さんが解説してくれたのだが、確か事務員さんがどんな人の心も惹きつけてやまない不思議な石って言ってなかったっけ?


 「確かに言いましたな。しかし現物を見てみればただの黒真珠で間違いないですな。火星のテラフォーミングの影響で貝類が時折異常なほど大きく成長するので、その過程で出来た物でしょう。まぁ、地球の方々からすれば、環境破壊と汚染が進んで手に入りにくい貴重な一品なのでしょうな」


 「今回の来客は地球の方々なんですね?」


 「ええ、そうですな」


 「なぁ!ラビ!依頼達成はいいが、殺しの方は謎が解けてないじゃないか!気持ち悪くないのかよ?」


 「いや、それはさっきコットさん自身で解いてたじゃないですか?」


 「はぁ??」

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