155.『ミステリーの世界』アルバー
「犯人はラビ!お前だ!」
「へ?」
「な!なんだって!!!!」
コットさんの宣言に思わずミステリーの何も分かっていない助手の様な声を上げてしまった。
ちょっと恥ずかしかったが仕方ない。何しろ自分は未だに碌な手掛かりどころか取っ掛かりもない状態で、既に犯人を断定するなんて、あまりにも鋭すぎる!何て言う推理力だろうか!
本当は自分で犯人を見つけたかったし、大勢の前で推理など披露してみたかったが、所詮はただのミステリーファンに過ぎない自分の推理力ではあの自身に満ち溢れるコットさんには及ばなかったろう。
それどころか変な推理をして恥をかいたかもしれないと思えば、今回は勉強だと思ってよくよく名探偵の動きや推理を勉強するべきだ。
自分ですら噂に聞いたことにある名探偵コット!灰色の頭脳に電流が流れる時、その閃きに多くの人がため息をするという。兄から聞いた噂だが、どうやら本当の事だったらしい。
「えっと……何で自分が犯人だと思ったんですか?」
「ふっ!それは、死因が毒殺であるというから一瞬で導き出された……毒使いと言えば、ラビ!お前しかいない!さぁ、何故このお披露目パーティの主催者を殺したのか、教えてもらおうか?」
「いや、それだと根拠が薄弱すぎるから、一旦『犯人はお前だ!』を保留にしておこう」
自分でも、それはちょっとと思ったところでジョンさんから待ったがかかったので、ほっと一安心。
「いや、でもラビは多種多様な毒を大量に保有してるんだぞ?」
「じゃあ、主催者は多種多様な毒で殺されたのか?まだ司法解剖も済んでない内にあまり勝手な事を言うもんじゃない。それにだ、動機が分からないのはまだ仕方ないとして、どうやって毒を盛ったのか先にそれだろ?」
確かに!ジョンさん!さすが名探偵コットの相棒だけあってとても鋭い指摘だ。
成る程な~一瞬コットさんちょっとダメじゃんとか思ってしまったけど、そうじゃないんだ。
閃きのコットさんとそれを支える冷静なジョンさん二人合わせて名探偵って事なんだろう。
「飲食物に入っていたのか、はたまた時限装置の様に薬を飲まされていて溶けだしたところで死んだのか、もしくは……」
「直接射ち込んだ?だとしたら、何故被害者は気が付かなかったんでしょう?」
「確かに、ラビだったらクロスボウで撃つか、はたまた薬を直でぶっかけるかそんな所だろう」
「いずれにせよ司法解剖を待たなきゃ分からない訳ですね。それじゃあ別の点から犯人の洗い出しをしてみましょうか?」
「それこそ、動機だろうな。なぜパーティの主催者は死ななければならなかったのか、そしてブラックホールは健在なのに、なぜか消えたブローチの行方と消えた理由って所になるのか?」
「ブローチの台座ならありましたけどね」
そう言って、ラビさんが手に持っていた金属を見せてくれるが、確かにそれっぽい。
「これはどこで見つけたんだ?」
「水槽のすぐ近くです。理由は分かりませんけど、暗かった時に金属の落ちるような音がした気がして、近くを見てたら出てきました」
「で?中の黒い宝石は?」
「それは分かりません、でも一個気になってる事はあります」
ここで、ラビさんも推理に参加する様だ。
なぜかずっと水槽の近くをうろうろしているし、皆が死体を見ている時に周囲に落ちている物から、無くなったブローチの台座を見つけるなんて、ちょっと目の付け所が違うとは思っていた。
「何だ?ラビの気になる事って?」
「漆黒のノワールの予告状の内容を知りたいんですけど、見せてもらう事ってできますか?」
何言ってるんだろうか?それはブラックホールを盗みに来るっていう内容だった筈じゃ?
そうは思ったものの、保安官さんが透明な保護袋のままラビさんに予告状を見せているので、自分も一緒に横から覗かせてもらう。
-親愛なる鉱床管理者様へ-
前略
この度、貴方が所有する火星の秘宝が一つ、漆黒の宝玉を頂戴いたしたく参上します。
大変貴重な物ゆえに、とても大切にされている事とは思われますが、この星にとって非常に重要なアーティファクトでございます。
回収し、然るべき場所にて保管させていただく所存です。
その事につきまして一切手段を択ばないつもりですので、大いに戦力を整えて公の舞台にお上がりください。
-火星の記憶に触れし者 漆黒のノワールより-
と、まぁ大体こんな感じだ。
どこにもブラックホールなんて書いてない!貴重な漆黒の宝玉を頂くって言うのはブローチについた石の事だったのか?
そうなると、既に漆黒のノワールは目的を果たした事になる?
だとして、一体何が気になるというのだろうか?仮に目的を果たしたとはいえ、このパーティ会場からは逃げられない筈。
つまり身体検査をすれば出てくるんじゃないか?だとすれば、かなりずさんでお粗末な計画って事になるが、果たして漆黒のノワールの正体は誰なんだろう?
「今度こそ分かっちまったぜ……」
「犯人がか?」
「いや、それについてはもう少し落ち着いて考えてみる。それより今回の犯行、漆黒のノワールが漆黒の宝玉欲しさに被害者であるパーティ管理者を殺した可能性がある!」
「えっと、だから?」
「それだけだ!」
いや、ずっと自分はその線で考えてましたけど?コットさん本当に大丈夫だろうか?




