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148.時神『詐欺師のお姉さんの顔が広い』

 「あれが、うみねこか~」


 遠く海を眺めやると海岸線辺りを白い鳥が揺れるように飛んでいる。


 調べたところによると猫に似た声で鳴くって書いてあったが、そこまで似てない。多分昔の人の感覚では似てると思ったんだろう。


 「あれはカモメだ」


 「道理で、猫とは似つかない声だと思った……」


 今、自分がいるのは町の時計台、人を殺しかけた件の年季は既に明けている。


 どうや、相部屋のNPCによる暗殺を防いだ事で、一気に評価されたらしい。


 鉱床警備を続ける選択肢も出されたが、十分に素材はたまったし、そもそもお金にも困っていない。


 それどころか暗殺を防いだ事で50万クレジット貰えたので、懐も温かくなる一方だ。


 後、あそこに残る理由があるとすれば、暗殺事件の事についてもう少し深堀するくらいの事だろう。


 何しろ、一番偉い鉱床管理責任者が情報提供していたわけだし、相部屋のNPCが逃げる時に使った飛行ユニットってのも誰があそこに隠したのか分からないし、何より賞金首だからって暗殺者をわざわざ送り込む理由もちょっとよく分からない。


 賞金掛けてるんだからそのうち誰かが殺すだろうって感じじゃ駄目なんだろうか?


 普通に考えて、あの狙撃手のうみねこさんが邪魔で殺しに来たとするのなら、なぜあのタイミングだったのか?


 いろいろ気になる事はあったのだが、諸々まとめて事務の人が任せてくれというので、諦めて町に戻ることにした。


 結局自分が知る事が出来たのは、有名な狙撃手NPCは賞金首としてそれぞれ鳥の名前を付けられているという事、そして体制側?地球の人達は狙撃手が苦手なので何かと賞金をつけるという事、狙撃手を狙うのは身軽で機動力の高い偵察兵が多いという事くらいか。


 まぁ、少しはスタート地点から進んだことで、この火星にある対立とかそういうストーリーパートが進んだのだろうと受け取っておく。


 「どうだ?雄大な景色だろう?俺はここからの眺めが好きでな……」


 そしてさっきから話しかけてくるのは相談屋のベルさんだ。


 町に戻ってきて、とりあえずまだイベントも始まっていないようだったので、そのまま前回の続きをしようと、町を適当に散策していたら鉢合わせてしまった。


 別に嫌とかそういうのではないのだが、自分が一人で歩き回るつもりだったのを案内してくれるというのは、どうにもありがたくもあり、そこまで気を使てもらう程の事でもないなと思ったり。


 それでもおススメの時計台からの景色は確かに雄大だ。


 町を見下ろし、さらにそこから先に広がる海の広さに圧倒される。


 あの海にはきっとまだ見ぬ危険な魚が泳いでいるのだろう。


 「そういえば、この前はクロノスの話の続きだったか?」


 「そうでしたね。この町のイベントですごく強いとか、負け知らずとか?」


 「誰から聞いたのか知らないが、確かにそうだな。今回のイベントじゃどうなるか分からんが……」


 「何でまた、今回に限って?」


 「そりゃあ……決闘じゃ最強とも最速ともいわれていた男が、帰ってきたからな」


 「じゃあその人が、この町元最強だったみたいな?」


 「違う違う!ん~どう説明すりゃいいんだかな~……その最強は全決闘者の中で一番強いって言われてたんだが、クロノスはこの町のイベントに限っては、そいつすら跳ね返してたんだよ」


 「じゃあ、負ける理由ないですよね?」


 「いや、あるだろ!一度挫折した男が帰ってきたんだぞ?絶対パワーアップしてるに決まってるだろ!」


 「……相談屋さんも限界まで育ててビルドが定まってるんですよね?多分最強とか言われるレベルの人達は皆同じだと思うんですよ。つまり、前と違った事は出来ても、そこから強くなるって事は無いんじゃないですか?」


 「実も蓋もない事言いやがる………ロマンとかそういうの、どこに置いてきちまったんだ?」


 「ロマンは別に嫌いじゃないですけど、そもそもクロノスは何でこの町でなら最強なんですか?」


 「それは、言えないな~!いずれ己で気が付く奴がいて、屍を越えて行く事でJPサーバー全体のレベルが上がるってもんだろうからな~」


 「タネを知ってるなら相談屋さんが越えればいいのに、屍?」


 「そりゃあ越える気はあるさ。今日の自分より明日の自分……エフンエフン!それで?そういうあんたは何でクロノスに興味があるんだ?まさかイベント参加者って訳でも無いだろ?流石にクロスボウじゃ早打ちは無理だろうし」


 「いや、一応参加予定ですけども」


 「いやいや!いくら海で漁が出来るからって、ほとんど生産職みたいな奴が勝てるもんじゃないって!」


 「そうですよね。自分もそう思うんですけど、何か詐欺師みたいなお姉さんが出ろって……」


 「詐欺師の言うこと聞いちゃだめだろうが!」


 「そうなんですけど、詐欺師風の割に悪い人でもないみたいで……」


 「大抵の詐欺師はいい人のふりして近づいてくるもんなんだから、注意しろって学生の時に習わなかったか?」


 「この前、朝礼で聞いたし、道徳とか社会の授業とかでもチラホラ聞きます。あとプリントにも書いてあったし」


 「現役の学生かよ!尚更気を付けないと駄目じゃねぇか!なんか知り合いの大人とかプレイしてないのか?」


 「いや、それがいつもお世話になってる人が、お世話になったとかで……」


 「グルって事か?」


 「違うと思うんですけどね……あっでも相談屋さんも古参だったら知ってるかもしれないです。流星の何とかみたいなお姉さんなんですけど」


 「姉御かよ!別に詐欺師でもなんでもねぇよ!変な人だけど……って姉御!なんでこんな新人にイベント出ろとか勧めてんの!」


 なんか大きい人が一人でどこか見えない人物につっこみ始めたので、とりあえず放っておくと、


 ガチャン!……ゴゴゴゴ……ゴーン……ゴーン……ゴーン……


 機械仕掛けの時計台の鐘が鳴り響く。

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