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145.疑惑『変だよな』

 ここ数日、ログインする度に相部屋のNPCとドローン狩りをしているのだが、成果は順調そのもので、事務の人があと数日で満了と教えてくれた。


 何なら相部屋の人は既に成果としては十分だとか。


 と、言うのもそもそも自分は悪い変態を殺しにかかったのに対して、単純に揉め事を起こしただけの相部屋のNPCは罪が軽かった事に加え、素材を売る事でお金も出来たので、いくらか支払ってしまえばそれでいいらしい。


 にもかかわらず、全く出ていく気配がない。


 一応尋ねてみたが、もう少し稼いでいくとだけ言っていた。


 怪しい……。


 確かに自分と組んでる間は弾を使わずに素材が手に入るので、それなりに稼げているのかもしれないが、正直な所もっと効率のいい仕事もありそうなもんだ。


 道を少し歩いて行って、一体倒す。また歩いて行って一体倒す。安全ではあるものの稼ぎとしてはもっと集中して敵が出る方がいいに違いない。


 更には自分よりもずっといい装備をしているようだし、もっと強い敵を倒した方が身になるだろう。


 なぜ自分よりいい武器を装備していると分かるかと言えば、素材で武器を強化しないのか聞いたら、この辺の素材じゃ物足りないとはっきり言っていたからに他ならない。


 まぁ、NPCなのでプレイヤーとは行動パターンが違うのだろうが、適性の狩場でないことは確かだろう。


 とまぁここまではこじつけに近い疑いなのだが、もっと怪しい事がある。


 それは時折、誰かとは話している風なのだが、誰と話しているか分からない事だ。


 イヤーマフの性能が上がってからというもの、これまで<聞き耳>だとそこらじゅうの音を集めてきてしまっていたのに対して、イヤーマフ装着時は大きな音だけ減らして、人の声がよく聞こえるようになった。


 その所為か、ちょくちょく相部屋のNPCが話している声が聞こえる。


 しかし、誰かと世間話をしているようでもないし、毎回HQと言っているので調べてみた。


 何でもヘッドクオーターの略で本社って意味らしい。


 つまり、相部屋のNPCは会社に連絡しているって事になるのだろう。


 さすがに電話を盗聴するのはよくないかと思ったのだが、先日は誰もいないければ何もない建物の日陰でHQに話しかけていた。


 どうやら何かを探しているらしいが、そうなるとわざとこの鉱床に来たんじゃないか?という疑問が生まれる。


 そう……探し物をするためにわざと揉め事を起こして捕まった。


 何なら探し物が見つかるまでは寧ろ出る気もないって事なんじゃないか?っていうのが今の自分の予想だ。


 それこそ、自分と組んでしまった所為で釈放に必要な成果を満了してしまい、ちょっと慌てている様子すら受け取れる。


 それでもドローン狩りに毎度付き合ってくれるのは、実はいい人なのか?


 否だと思う。


 ただ出来るだけ疑われないように、一定の成果を上げ続けるだけっていうのが自分の印象だ。


 そこまでお金に執着する風でもなく、それでいて疑われないように程々に協力してうまい事稼いでいくそんな感じ。


 以上の事から自分の今の興味は相部屋のNPCの不審行動に集中していると言っても過言ではない。


 ちなみに一番最近のHQとの会話は、


 「HQこちらアルファ、対象の所在はいまだ不明。もしかするとこの身分ではたどり着けない可能性も出てきた。作戦の再検討を願う」


 だった。


 作戦の再検討って事はつまり、ちょっと無理かもしれないって事なんだろう。


 相部屋のNPCの目的は何で、何を探しているのかとても気になる所ではある。


 内容によっては手伝ってもいいかもと思うのだが、こっちから切り出したらどこで聞いたんだ?って話になるのもちょっと嫌だ。


 何しろ完全に盗み聞きなので、印象が悪いだろう。


 ふと窓から外を見ると眼下を相部屋のNPCが歩いていく。


 探し物をしているという割にはのんびりとした足取りだが、もしかしたら出来るだけ疑われないようにさりげない歩き方をしているだけかもしれない。


 車で入ってきた門と宿舎の間をのんびり歩き、時折遠目に何かを見ている気もするが、何が目的なのかは分からない。


 「怪しいですな」


 「怪しいです……ふぇっ!」


 唐突に後ろから話しかけられ思わず返答してしまったが、そこにいたのは事務のおじさんだった。


 「どうして怪しいと思いましたかな?」


 「いや、何かずっと探してる風なので……」


 「ほぅ……それは面白い情報ですな。それでは私からもお礼に情報を……」


 「何か話し方がいつもと違いますか?」


 「ええ、普段はこちらですな。大人数に喋ろうとするとこうなります」


 「へぇ」


 「情報はそれだけで良かったですかな?」


 「え?あ!いえ、そういう訳じゃないんですけど気になったので」


 「そうでしたか。じゃあ私から彼を怪しむべきポイントを申し上げますと、彼……偵察兵ですな」


 「偵察兵?」


 「はい、小型の武器を持ち、素早く敵陣に潜り込み、厄介な対象を刈り取る事で安全を確保する役目ですな」


 「偵察っていうくらいなんだから、情報を持ち帰ったりとか罠発見とかじゃないんですね」


 「そういう事が出来る方もいますな。ただどちらかというと地球の兵は力押しの傾向が強いですから、高性能の武器を持つ精兵で一気に制圧する戦術を好むのですな」


 「それが何で怪しいんですか?」


 「地球側の正規兵のような動きをした偵察兵が、喧嘩でこんな所に送られないでしょうな。よしんば送られてきたとしても、すぐに持ち場に戻らねばならない筈だし、こんな所で稼いでもたかが知れている筈です。それ位、地球側の正規兵は稼いでいるのですな」


 「それで、自分になんでそんな事を?」


 「どうにもあなたは怪しくなさそうなので、これからも彼の動向をそっと見張っていただければと思いましてな」


 「それは構いませんけど……」


 「勿論報酬は十分に払いますとも」


 それよりも、イベントに間に合うようにしたいのだが、これは時間との勝負になるか?

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