144.材料『必要なものが増えていく』
その後のドローン狩りは順調そのものだった。
自分達が担当した通路は例の二種類のドローンのみで、相手の感知方法さえ理解して動けば然程危険な事もなく、素材も大漁と言ったところ。
ある程度の所で切り上げ、非正規警備員用宿舎に戻った。
素材の配分はスッキリ割り勘とさせてもらう。
レアドロップと言われた〔M134〕に関しても運よくもう一個出たので、それも1個づつとし、その他細かい部品類がわちゃわちゃと出てきたが、大まかに半々だ。
リスクを取って囮をしてくれた相部屋の人と偶々たくさん持ってた〔白粘液〕を消費した自分、どっちが出費が大きいかと問われても正直自分には分からないので、これが一番もめなくていいのだろう。
ちなみに出た素材は種類が多すぎてあれなんだが、まずHM系重金属の素材とLM系の軽金属素材。
回路系がなんか諸々に、メモリにCPUみたいなパソコンに使いそうなやつ。
あとは、何とかサイトとかバレルとかトリガーとかグリップとかは銃に使うんだろうけども、なんで手のないドローンから握る部分が落ちたのかは不明だ。
急に増えた素材の数々に目もくらむばかりだが、相部屋の人はあっさり全部売ってしまった。
「使うものは無かったんですか?」
と聞けば、
「別に買おうと思えば買えるものばかりだしな」
との事だ。自分は売ってる所を見た事ないのだが、もしかしたらもっと先の街なんかには売ってるっていうヒントなのだろうか?
一応NPCだし、なにがしかのヒントをくれるとしてもおかしくはない。
とりあえず作業机を出してみて手に入れた素材を並べて何か作れる物はないか確認していく。
「俺はちょっと出てくるぞ」
「……出るって、どこへ?」
「え?いや、何でカップルでもないのにそんな事を聞かれるんだ?」
「でも、この辺ってただの荒野ですよね?」
「いや、外ってそこまでは出ねぇよ!そもそも俺もお前も町でやらかして連れてこられてるんだから、成果上げるまで、出られないだろ?」
「え?でも出るって?」
「いや、壁の外には行かないが、そこらをうろついて日に当たって来るって事だ」
「ああ、そういう事ですか。っていうか自分も出れないんだ……イベント間に合わなかったらどうしよう……」
「イベントって、町のなんかアレだろ?撃ち合いみたいな」
「そうですね。決闘のイベントです」
「まぁ、それならまだ日数もあるし大丈夫なんじゃないか?」
それだけ言うと、本当にふらっと部屋から出て行ってしまった。
まぁ、確かにカップルでもないし深く事情に突っ込むのもおかしいか。
正直、外は今日も赤い砂が舞ってて日に当たるって感じでもないとは思うが、感覚は人それぞれだしな。
素材を並べると、結構作れそうなものがいっぱいあるが、同時に必要な素材もぽこぽこ抜けている。
これまでの一種類二種類で簡単に作れる段階からは明らかに一歩進んでいるのだという事は分かるが、さてどうするか。
完全に新しい物だと何に使える物かもわからないし、一旦は今の自分の装備のグレードアップを図るべきだと思うが、候補は三つ。
一つ目はディテクティブスペシャル。これはHMもLMも使用可能だが、出来ればHMで強化したいところ。
問題は二つほど謎の素材が必要っぽい。
二つ目はクロスボウだが、こちらは重くならないようにとりあえずはLMで強化と思っているが、これも素材が足りてない。
三つめがイヤーマフで、こちらは素材は足りてるものの手順がちょっと複雑か?
それでこの不足の素材だが、何気に購買部で見かけた気がしたので行ってみる。
購買部は頑丈そうな金網と分厚いガラス、その先にはこんな厳重な壁を必要としなさそうな筋肉のおじさんが一人立っている。
「いらっしゃい!儲けた金で何でも買っていきな!」
そう言って大きめのタブレットの様な物を指さす。
ガラスの向こうとこちらは完全に隔てられ、注文はガラスのこちらにあるタブレットを操作して行うのだが、尚更筋肉のおじさんの必要性が疑われる。
まぁあいいかと、先ずは素材の項目を選び、そこからスライドしていき不足の素材を探していくと、多分これだろうというものが見つかった。
〔C切削液〕〔C研磨剤〕
この二つで間違いないだろう。使う鋼材のレア度もCだし、多分大丈夫のはず。
とりあえず、適当な数を買って部屋に戻る。
作業机に並べれば案の定、これで正解。
グレードアップに必要なミニゲームが始まり、何とかディテクティブスペシャルとクロスボウをグレードアップ。
あくまでグレードアップなのである程度上昇しただけで、根本的な改造とまではいかないが、一旦これで満足しよう。
そして問題のちょっと複雑なイヤーマフ改造?グレードアップ?いずれにせよイヤーマフをいじるのは初めてなので、どうなるか慎重に進めてみよう。
まずは、半導体を半導体回路から分離し、次に集積回路と基板を組み合わせて小型集積回路を作る。
さらにそこに半導体と音センサーを組み合わせて〔初級音感デバイス〕を作成する。
なんか分解したりくっつけたり面倒だが、一応の流れは作業台で分かるので、一個づつ進めていく。
途中何個か失敗作が出来たのは自分のDEXが低いのかはたまた<製作><製造>スキルが低いせいか、もしくは熟練度が足りないのだろう。
何とかできた〔初級デバイス〕とイヤーマフをくっつければ、
〔賢者の耳当〕・・・防音
音感センサー
となっている。防音は多分元々だと思うが、音感センサーはどう考えても戦車のアレだ。
そんな物が付いてどうなるのだろうと、何となく装備してみる。
「HQこちらアルファ、まだ対象の位置は把握できていない。引き続き任務を続行する。安心しろ相部屋は素人だ。大した武装もしていないし、疑われてもいない」
相部屋の人の声がどこからともなく聞こえるのは、音感センサーの所為なのか?




