143.金属『確かにそろそろ防具も武器も強くしないと』
相部屋の人とさらに奥へと進んでいく、薄暗いようでいて、周囲を知覚できない程でもない微妙な明るさの中、綺麗に均された道を行く。
多分誰かの為ではなく、繊細な機材の為にぴっちりと綺麗に金属の埋められた道は、相変わらず坑道内に甲高い音を反響させる。
キュルキュルキュルキュル……
先ほど聞いたばかりの音が聞こえ、その場で足を止めてスリングを準備すると、
「次は俺の番だろ?」
肩を叩かれ止められた。
しかし、その直後、
ヒュィィィィン!!!!
「危ない!」
何故そう思ったのか自分でも分からないが、何となくゾッとしたその感覚だけを頼りに相部屋の人を突き飛ばしながら、その反動を利用して自分も転がる。
バラバラバラバラ……!!!
すると、ちょうど自分達の頭辺りを薙ぎ払うように銃弾が連射された。
思わず呼吸が荒くなり、相部屋の人を見ると自分同様に顔を引きつらせてへたり込んでいた。
さっきと然程距離は変わらないのに今回は先制攻撃されたという事は、なにがしかの索敵方法に触れたという事なのだろう。
とにかく地面に伏せたままじゃ反撃もできないので、出来るだけゆっくりと、尚且つ小さい戦車ドローンの様子に細心の注意を払いながら立ち上がる。
どうやら立ち上がる動作には反応しない。
そのまま、相部屋の人が一歩踏み出すと……
ヒュィィィン!
すぐさま自分が首を大きく振ると、相部屋の人がその場を横に転がっていく。
すると今度は、地面を穿ち火花を散らせる銃弾に思わず、目を細めつつ、体がのけぞってしまう。
花火が弾けるかのように明るくなった地面が静かになったところで、再び相部屋の人を見ると、何か口を動かしてる?
ロト?……ノロ?……桃?……頬?……ココ?……外?……音?
音か!
ならばとその場で、スリングを振り回すも攻撃は来ない。
そのまま〔白粘液〕を投げつけると、暴れるかのように上部についた砲塔らしきを振り回すも徐々に動きが遅くなり、遂には止まる。
ゆっくり一歩づつ警戒しながら踏み出し、小さい戦車に近づいて<解体>する。
〔HM C鋼材〕〔HM C鋼板〕〔M134〕〔C集積回路〕〔C半導体回路〕
「鋼材と鋼板って何が違うんだろ?」
「そりゃ、鋼材は骨組みで鋼板は板材だな」
分かるようでわからない説明に首をかしげる。
「まぁ、どっちも金属素材って事だ」
「成る程!ちなみにこのHMとかCて何か分かりますか?」
「HMはヘビィメタル、Cはレア度だな。レア度並みの重金属って事だ」
「重いって事は、軽い物もある?」
「勿論!軽い金属を使えば低い筋力で扱えて保持もしやすい、その代わり集弾性や命中率が落ちる。重ければその逆だ。筋力が必要になって保持時間が減る代わりに、命中率や集弾性が上がる」
「一長一短って訳ですか」
「まぁ、ハンドガン程度のものだったらHMの方がいいだろうけどな」
「サイズ的に差がつきづらいみたいな?」
「そんなところだ」
そんな話をしつつ〔M134〕を持ち上げようとするがうんともすんとも言わない。
「まさかミニガンをドロップするなんて、あんた運がいいな」
「そうなんですか?」
「ああ、ガトリングの一種だが、そうそう生半可な筋力じゃあ使えない代物だ。バギーなんかに設置して使う連中もいなくは無いんだろうが、中々希少な武器だぜ」
希少と言われても持ち上がらないんじゃどうしようもない。無理やりアイテムボックスにしまい込む。
「さて、ここから役割分担をどうする?」
相部屋の人が急に聞いてくるがどうすると言われても?
「普通に狩ったんじゃ駄目ですか?」
「そりゃ、空中ドローンは動くものを検知するから、あんたみたいに足を止めてたんじゃ、あっという間にやられる。逆にあのキャタピラのは近づけないんじゃ俺の手に余る」
「じゃあ、それぞれ空中はそちら、キャタピラは自分にしますか?」
「いや、それより提案がある」
あるならサッサと言えばいいのに、何で一回話を挟んだ?
「空中にせよ地面を移動するにせよ動かず音を立てなければ狙われない。しかしそんなことしてたら日が暮れる」
「確かにそれはその通りですね。逆に全力で動きつつ攻撃を避けながら戦います?」
「それよりも囮を立てて、その間に倒す手法が良さそうだ。勿論の事言い出しっぺの俺が囮になるから、あんたはこれまで通り敵を倒して素材を回収してくれないか?」
ちょっと腕を組んで考える。一見すればとてもいい条件の様な気がする。
敵の攻撃にさらされず一方的攻撃なんて都合がいい事この上ない。
しかしそうなると、この相部屋の人が何を考えているのか、ちょっと疑わしい。
「そんな目で見るなって!あんたのその武器は破壊せずに敵の動きを止められるんだろ?」
「まぁ、初めて試しましたけど、ちゃんと止まりましたね」
「だったらそれで敵を倒した方が、多くの素材が取れるつまり稼ぎもいい」
稼ぎの為にあえて危険に身を投げ出すなんて、よっぽどお金に困ってるのか?
とはいえ、自分的にはすごく助かる提案なので、乗ることにした。
そのまま道なりに進み、ドローン狩りを続けていく。




