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137.拠点『町の相談屋さん』

 オープンテラスと言えば聞こえのいい、パラソルと丸テーブルが並べられた町の一角。


 白い建物から、草を編んだと思われる小振りの帽子をかぶったおじいさんが、調理した魚を持ってきてくれた。


 よく日に焼けて、深い皺に目が隠れてしまっているものの柔和な笑顔のNPCだ。


 そして向かいに座っているのは、さっき海で会ったばかりのやたらデカい男の人。


 こちらは何となくジョンさんにも似た雰囲気の恰好か?


 ざっくり言ってしまうなれば西部劇に出てきそうな、皮ズボンに皮ベスト、皮コート、皮ブーツ、そして腰には銀色のリボルバーを挿している。


 「さ!食いな!あんたが獲った魚だ!」


 「じゃあ、いただきます」


 「まぁそう不審な目で見るなって……俺はこの町の相談屋、ベルってもんさ」


 「相談屋ですか?」


 「ああ!この町の事で困りごとがあったら何でも相談に乗るぜ?解決できるかどうかは別としてな」


 「そこは別なんですね」


 「まぁな~できもしない事を約束するのも信用無くしちまうしな。とりあえずなんでも安心して相談できる相手がいるって、大事じゃないか?」


 「言われてみればそうかもしれないですね。ところで何で相談屋なんてやってるんです?」


 「話せば長くなるが……」


 「じゃあいいです」


 そう言いつつ、皿に盛られたカレイに目を移すと、いろんな種類の香草とトマトに一口サイズのジャガイモなんかと一緒に、火を通したみたいだが、中々おいしそう。


 「そう言うなって!食べながらでいいから聞けよ!」


 「いいですけど」


 「実はさ……俺はこう見えてもJPサーバー出来て割と初期からのプレイヤーなんだが……」


 「ここって割と序盤の町じゃないんですか?」


 「その通りだ。まぁ俺もいろいろ巡り巡って、この地を拠点に決めた訳だ。んで、まだ初期の頃ってこのゲームはもっと殺伐としててな~何だかんだ色々世話になって、何とか一人でもやっていけるようになったら、やりたい事がなくなっちまってな」


 「どういう事です?」


 「なんつうか、意地になって何とかゲームを続けてる内に、それが目的になっちまって、何がしたいとか無いまま、ある程度天井って言われるレベルに達しちまった訳だ」


 「天井ですか?」


 「まあ、最大レベルは分かってないんだが、それでもこれ以上レベルを上げるにはえげつない量の経験値を稼がにゃならんって、ラインの事さ」


 「なるほど、自分のビルド的なものが完成しちゃったんですね」


 「そういう事だ。それで、俺も散々いろんな奴らに世話になったし、何か出来る事ないかとは思ったんだが、あっちだこっちだとか、あれもこれもって程、器用でもなくてな。それで一番好きなこの町だけ守ろうって決めた訳だ」


 「それで、町の相談屋ですか」


 「理解が早くて助かるぜ。それでな……あんたに声を掛けた理由なんだが……」


 「海に入ろうとしてたからじゃないんですか?」


 「声を掛けたきっかけはそうだが、それだけでわざわざ飯について来たりしないだろ?」


 「言われてみればそうですね」


 「まぁ、なに……今すぐどうこうって話でも無いんだが、俺は変わった奴とは出来るだけ知り合いになるようにしてるんだ」


 「何でまた?」


 「変わった奴ってのは、大抵が一芸特化だったり、普通のプレイヤーがしない様な事をやるもんさ。そして時としてそれを必要とする奴もいるからな。さっきも言った通り何でも解決できる訳じゃないからさ」


 「ああ、それで。確かに海に入る人が珍しいなら、自分は変わってるのかもしれないですね。一応知り合いには素材屋って呼ばれてますよ」


 「へ~!そいつはいいな!是非名前を教えてくれ!」


 「ラビです」


 「そっか!よろしくな!何度も言うが、何かあったらいつでも相談してくれ、何ならこの町の観光案内でもするか?」


 「いや、別にこれから見て回ろうと思ったんで、大丈夫です」


 「おう、そうか~それならまずは時計台だな」


 「時計台は見ました」


 「中も入ったか?時計台で聞く鐘の音も、趣があるぞ」


 「いや、外から眺めただけですね」


 「勿体ないぜ~時計台から見る海の眺めも悪くないしな~。夜は夜で船着き場の灯台が遠く海の先を照らしててな~雰囲気あっていいぞ」


 「なんか広い町みたいだし、見どころはありそうですね」


 「勿論さ!俺はもう、この町長いからな~何でも聞いてくれ!店の場所からちょっとした町中クエストまで、何でもござれさ」


 「あ!じゃあ一個知りたい事があります!」


 「何だ?」


 「なんで、外は赤い砂が舞ってるのに、この町はこんなに白いんですか?」


 「え?ええぇっと……壁を白く塗ってるからかな?」


 「でも赤い砂が舞ってたら、砂をかぶって赤くなりません?」


 「そうだよな~そうじゃないかとは思ったんだが、なんでだ?今まで気にしたことなかったな。それについては調べておくから、他に何かないか?」


 「いや、別に?……あっ!クロノスって聞いたことあります?」


 「そりゃ……この町に住んでれば、誰しも耳にしたことはあるだろうが……」


 「何か近々イベントがあるとか?そこに町の絶対王者が出るって聞いてて……」


 「そうか……まぁ、それについては飯を食い終わってから話すか」


 なんか急に雰囲気が変わった?そんな気もしたが、今は目の前に新たに出されたキスのフライに集中しよう。

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