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136.入水『デカい人と海』

 よく白い砂浜という表現が使われるが、目の前の砂浜は明るいベージュって感じ。


 とはいえ、白い砂浜よりも綺麗に見えるのは自分だけだろうか?


 何しろ余計なものが何もない、本当に砂だけのビーチだ。


 なまじ観光用にあれやこれやとあるよりも、ぽっかりと空いた汚れのない自然の空間に清浄さすら感じてしまう。


 多分、よっぽど人が寄り付かないのではないか?火星の海って本当に危険だし、浅瀬ですら毒だらけだ。


 遠くには整備された船着き場があり、漁船らしき船が何艘も係留されているものの、船が出ている様子はない。


 目の前の砂浜も、別に釣り人がいるわけでもなし、って言うか人っ子一人いない。


 これは砂地の魚を捕るチャンス!


 ちなみに、コットさんとジョンさんは既にどこかへ行ってしまった。決闘見たら満足したのか、はたまた腕がうずいたのか?


 ジョンさんが何を思ったかは分からないけど、イベントまでは日数があるらしいので、自分がやる事と言えば素材集め、森も草地もないこの町で採れる物と言えば海産物のみって事で、GO!


 砂浜から波打ち際に入り、濡れた砂の感触を靴の裏で感じながら、ずんずんと海に入っていく。


 「うぉぉぉぉい!危ないぞ!」


 どこからともなく野太い声が聞こえてくるが、何かあったのだろうか?


 まぁ、今は海だ。他人に関わるより自然と一体になる事の方がよっぽど心地いいし、生きてるって感じがするんじゃないか?そうでもないかもしれないけど、思いついたからさ。


 しかし砂地っていうのは意外と歩きづらいというか、思ったほど進めないな。


 現状で膝くらいに水が来ているのだが、腰まで浸かったらもう泳いじゃったほうが早そうだな。


 一歩思い切って踏み出すと、急に体が浮き上がり、何事かと見回すとでっかい顔が目の前にあった。


 「おい!命を大事に!ゲームの中で入水自殺しても死に戻るだけだぞ!」


 「自殺してません」


 あまりの迫力に思わず答えてしまったが、この人誰だ?


 「もしかして海初めてなのか?火星の海は危険だから、安易に泳ぐもんじゃないぞ?」


 「いえ、初めてじゃないです」


 「じゃあ、やっぱ自殺じゃ……」


 「いやあの……漁ですけど?」


 「りょう?……あっクロスボウ……魚獲れるのか?」


 「はい、まぁ。ここの海は初めてなんですけど、大きいのじゃなければ多分」


 「そ、そっか……じゃあ、俺向こうで見ててもいいか?」


 「どうぞ、別に隠すものでもないし」


 そう言うとやたら大きな男の人は砂浜の方に帰っていったので、反対に自分は海へと向かう。


 腰辺まで水が着たところで思い切って泳ぎだし、ゴーグルをかけて海の中を覗くと、かなり透明度の高いきれいな海だ。


 そのまま、ゆっくり泳いでいくと、ふと透明な小魚が砂地ギリギリを泳いでいるのが見えた。


 ゆっくり追いかけると、時々砂をつついているのは、砂の中の餌でも食べているのだろうか?


 すると突然、砂が舞いあがり視界が悪くなる。


 そして砂が落ち着く頃には小魚は消えていた。


 一旦海面に息継ぎの為に戻って、銀藻の強化薬を飲んで砂地を睨みつける。


 何となく違和感を感じる一角にクロスボウの照準を合わせて矢を発射すると、またもや砂が舞いあがり、視界が悪くなる。


 いつの間にか自分が撃ったはずの矢が少し離れた砂に突き立っていた。


 もう一発自分の矢めがけて撃つと、また砂が舞いあがり、落ち着いたらまた一発。


 プカッと浮いてきたのは小さい座布団みたいな魚、自分でも知っているヒラメだ。


 〔カレイ〕


 カレイだった。どうやら丸ごと素材って事らしい。


 まだ呼吸は大丈夫だが、一旦海面に顔を出すと、


 「大丈夫か~?!」


 さっきの大きな男の人が、声を掛けてくる。


 「一匹獲れました~!カレイです~!」


 「おお!凄いな~!カレイなんて結構大物だろ!」


 「貝とかって獲れませんか~?もしくは毒~!」


 「貝だったら砂掘ればすぐ出てくるぞ!毒は危ないからやめとけ~!」


 一旦深くまで潜り、砂を適当に掘ってみると、白い巻貝が出てきた。


 更に近くを掘ると形の違う巻貝に、大きなあさりみたいな二枚貝?次から次へと出てくる。


 面白くなって掘り進めている内に、目の端を魚影が通り過ぎて、ハッとした。


 危うくゴンズイに突っ込む所だった。毒棘の魚なんかに触れた日には……まぁ毒消しを飲むだけだけど、あまりよくない。


 折角なので一匹撃つと、近くの砂地から別のゴンズイも出て来たのでそいつも撃つ。


 今度はさっき見た透明な魚がいたので、それも撃つ。


 〔キス〕


 中々センシティブな名前の魚じゃないか。


 でも、名前だけで丸ごと素材って事はこれも食材用の魚か?


 楽しくなってきたところだが、海面から顔を出すとまだ大きな男の人がこっちを見ていたので、一旦戻る事にする。


 「本当に漁出来るんだな」


 「はい、まぁ?特別なスキルが必要な訳でもないし、誰でも出来そうですけど?」


 「そんな事ないと思うんだがな?まぁ、なんだ?邪魔しちまった詫びって程のもんじゃないが、飯でも食わんか?この海が初めてって事は、この町も初めてなんだろ?」


 「さっきついたばかりですね」


 「いい飲み屋があるぜ!」


 「未成年なんでお断りしますね」


 「飯屋もいい所がある!持ち込み可能でリーズナブルな店さ!」


 「海入る人いないのに持ち込み可能?」


 「釣り知らないのか?」


 釣りは知っているが、この海で釣りができるのは知らなかった。

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― 新着の感想 ―
キミ釣り餌採集したでしょうに……まあ犬猿の森そこそこ前だから忘れてるんだろうけど
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