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133.『自分だけの怖さ?』タツ

 今回のフィールドは、自然豊かな住宅街。


 いかにもアメリカンな大きな庭のある家々は日本人からすればとても羨ましい物ではあるが、同時に木々や茂みも多く、自分の様なスナイパーからすれば開けている割に隠れやすいフィールドだ。


 自分が所属する『大円』は古参の影響力の大きいプレイヤーが多いお陰か、他所のクランとの交流戦も組みやすく、自分の様な新参が勉強するにはとてもいい環境が整っている。


 今は、相手TEAMが一軒の白い家屋に立て籠もったのを偶然見つけた為、仲間に連絡し遠巻きに監視しているところだ。


 近隣の家屋にて、土台によさそうなチェストを見つけ、バイポッドで固定し、チラチラと窓際を横切る影を見つめる。


 今回のルールはいわゆるドロ警っていうゲーム感覚の交流戦。


 片方は目的の物を集めて逃走、片方はそれを捕まえるというか、殲滅するみたいな感じ。


 交代制でより多くの物を盗み出せた方が勝ちみたいな。かなりライト目なルールだが、他所との交流ならこれ位がもめないらしいので、素直に遊ばせてもらう事にした。


 さっきからチラチラと窓に映る人影を撃てば、自分もKILLのポイントは貰えるのだろうが、TEAM戦である以上、それぞれの役割を果たさねばならない。


 結局のところ盗み出す収集物を持ってるプレイヤーを倒せば倒すほど、こちらが有利になるのだ。


 皆で分け合って分散するリスク回避型や、一人を徹底的に守って逃がす一発型など、やりようは色々あるらしいのだが、今のところ進行中のゲームについてその辺の情報は無い。


 とりあえず目の前の建物に敵TEAMの内3人がいるという事だけが確かだ。


 じっと状況の変遷を見守るほかない。


 「タツ!こっちは二人やったけど、そっちの状況は?」


 「三人入った所までは変わらず、ちらちら見える人影は一つ。残り二人の状況は分かりません」


 どうやら臨時のTEAMメイト達はすでに二人やったらしい。とはいえ、あまり焦るのはいけない。自分の仕事はKillレートを稼ぐことではないのだから。


 数秒が数十秒に、数分が数十分に感じるほど長い監視時間。


 自分のTEAMメイト達が、建物の前後から突入するのが見えた。


 屋内で行われる銃撃戦と思わしき銃声が鳴り響き、時折窓越しに爆ぜるマズルフラッシュ。


 そして、地下室の出入り口なのか?家の縁から謎の木扉が開き、中から大きな鞄が放り出されるのが見え、スコープを覗き、焦点を合わせた。


 すると続いて、細身の人物が上半身を出したところで、撃つ。


 細身の人物はあっという間に力を失い、地下に戻っていく。


 そこで慢心せずに、すぐさま引きで建物全体を俯瞰するように観察する。


 すると間もなく、パリン!と妙に響く音と共に一階窓から飛び出す影が一回転してすくっと立ち上がった。


 その立上り狭間の一瞬動きの止まったところに、発砲。


 その人物もその場に倒れ、ゲーム終了となる。


 一旦待機画面に戻り、臨時TEAMと言葉を交わす。


 「ナイス!タツ!前より待てるようになったじゃん!」


 「いやいや、前以上だろ!何だかんだ2Killじゃんか!やっぱ持つべきものはスナイパーの仲間だって!」


 そこに相手TEAMも合流する。


 「やべ~やられたわ」


 「いや強くね?まだそっち始めて間もないのばっかりなんだろ?どうやってこっちの動き見つけてんだよ」


 「そこはほら!うちにはスナイパーがいるもんで!目端効くんですわ」


 「いや、別に俺は……」


 「何謙遜してんだよ!スナイパーなんて一から目指す奴なんて珍しいし、皆顔見知りになっておきたいんだから、ここで顔売っとけって!」


 やっぱりここでも、スナイパーは珍しい扱いらしい。


 まぁ、そうじゃなければ今更先輩が自分を敢えてTEAMに入れようなんて思わないだろう。


 やっぱり多少遠回りでもスナイパーを選んで良かったのかな?なんて思っていると、最近のスナイパー事情に話が移っていた。


 「そういえば、この前のゴルゴン三姉妹の動画見たか?」


 「見た見た!なんだよアレ、サイレントキラーのスナイプ!」


 「あ~あれな~森の中で枝の間10㎝足らずを抜いて、動く敵に当てた神業だろ?」


 「そう!それ!あそこは皆ヤバいけど、やっぱサイレントキラーのあの、スナイプはちょっとおかしいよな」


 「それ言ったらジェミニの所だって相変わらずヤバいじゃん?『大円』の幹部なんだから面識あるんじゃないのか?」


 「いや無理無理!俺らみたいなぺーぺーが一緒にプレイできるレベルじゃねぇって!やっぱさ~タツみたいのがちょうどいいって」


 「確かに癖もないし、一人で片っ端から薙ぎ倒すんでもないし、じっと監視して状況に圧掛けるのが、良いスナイパーよ」


 「後はもうちょい怖さがあればな……」


 「怖さっすか?」


 「いいんだって!TEAMプレイなんだから無茶せず丁寧に味方のフォローに徹する方が先だって」


 「今回は2Kill出来てたけど、既に削られてたからな~。確かに万全だったら逃げられてかもしれないよな」


 いつの間にか自分の評価に話が移ってるが、これってどういう評価なんだ?


 確かに言われてみれば、今回二人倒せたのは運でしかない。


 でも発砲のタイミングは間違ってなかったと思う。


 何しろ早ければ自分の居場所が見つかって、寧ろ囲まれて殺られていただろう。


 スナイパーはとにかく距離詰められると弱い。武器の特性上AGIを上げにくいのだから、鈍足だしそこは仕方ない。


 逆に遅ければ当然ながら逃げられていた。敵TEAMがまだ5人存命中ならいざ知らず、残り3人と分かってる状況なら撃っても良かったっていう判断なんだけど。


 そうなると、自分の評価がいまいちなのは、もっと正確にヘッドショットでぶち抜ける正確さを言われているのか?はたまた銃の威力を上げるべきなのか?


 先輩に追いつくには、どうにもまだまだやらなきゃいけない事が多いようだ。

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