130.大漁『ボーナスタイム!ボーナスタイム!』
「くっくっく!大漁!大漁!なにこれ!凄い凄すぎる!神様の贈り物?」
思わずニヤニヤが止められない程の大漁にテンションが上がりっぱなしでしょうがない。
津波に飲まれたと思った筈が、気が付くと3層の店の屋根の上にいた。
すぐ横には二層の通路いっぱいに張られた水が流れている。所々店の隙間から水が流れ出しているものの、まだ当分はこの状態だろうと分かるかなりの水量だ。
ふと足元を見れば、小さい魚が自分の足元に集まってきていたので、クロスボウで撃つと、見慣れた浅瀬の魚達だった。
どうやら魚達の方は水から出られない様なので、店の屋根の上から撃ち放題。
いくらやられても次から次から集まってくる魚を熱中して倒しまくり、とうとう魚影が見えなくなったところで、回収中っていうのが今の状況。
いや、本当に凄い。
今まで夜漁で集めてきたのとは桁違いの水揚げに、これで当分毒やなんかには困らないという安心感が心に満ちる。
そんなこんな楽しんでいると、だいぶ水量も減ってきたので、何とか一つ下の階層に行ってみたいと欲が出るのも致し方がないだろう。
屋根の上を伝ってケーブルカーに辿り着くものの、案の定運航はしていない。
どうにか降りれる方法はないか、いろいろ見ていると作業用なのか、はたまた緊急用なのか簡素な鉄階段が設置されていた。
錆びているように見えるが、そう古そうでもないし大丈夫だろうと一歩踏み出す。
カン!と甲高い音が少しうるさいが、行ける気がする。
そのまま真っ直ぐ降りていき、4層の屋根の上に移ると、3層の通路はまだ十分な水量があり、まだまだ漁は続行できそうだ。
少し歩いていくが、どうやらさっきの様に小さな魚はいないらしく、足元に集まってくるような事もない。
そんな中、ふと遠くに白波が立った気がしたので警戒していると、すごいスピードで近づいてくる魚影。
多分それなりのサイズだと察し、すぐさま先端に麻痺薬を固めた矢を装填して、撃ち込む。
一発では決まらなかったので、二発目、そして三発目……唐突に飛び跳ねたそれにほとんど偶然としか言いようのないタイミングで3発目が当たり、更に飛び跳ねた勢いで体当たりしてきたそれを伏せるようにぎりぎり回避できた。
何とも、自分でも何故できたか分からない程、一瞬の判断とも言いえない反射行動に、驚きで息が上がる。
ゆっくり立ち上がり、飛んできたものの正体を見ると、一抱えはありそうなデカい魚だった。
麻痺状態のまま<解体>してみると手に入ったのが、
〔砲弾鮪赤身〕〔砲弾鮪トロ〕
となっている。魚ヘンに有ってなんだっけ?まぁいいや。これは島の食堂に持っていこう。
その後も歩いていると時折飛んでくる魚だが、既に対処は覚えたので問題ない。
ここは、読み方は分からないが鮪ばっかりなのかな?と思っていたら、足元についてくるやたらキラキラ光る魚影があった。
クロスボウを向けてみるとプカッと浮かび上がってきて、こちらに顔を見せるものの、これと言って害を感じない?
なんか口をパクパクしてるけど、餌でも欲しいのかな?
適当にさっきまで大量に拾っていた小魚達の切り身を取り出してあげてみると、案の定お腹が空いていたのか、パクパクと食べていく。
そした食べるだけ食べると、一旦水の中に潜り、また出て来た時には口に白い物を咥えている。
何となくお礼かな?とそれを受け取ると、また水の中に消えて行ってしまった。
その後は浮いてこないので、多分なんか餌と交換で何やらもらえるクエストだったのだろうと勝手に納得する他ない。
ちなみに貰ったのは魚の骨の様な何か?〔鯛中鯛〕との事だが、これが何なのか全く思い当たらない。海の不思議ってやつか。
とりあえずそのまま鮪を捕りつつ、街の反対側のケーブルカーに着くころにはすっかり水も減っていた。
そして、その減った水の中、残り少ない水に何とか全身を少しでも浸けようとしてるかにも見える体勢で、じっとしている蟹がいた。
蟹と言うにはサイズが尋常じゃないのだが、いや、でもタカアシガニだって4mになるとか水族館で見た事あるかも?
そうなると外国の成人男性位のサイズの蟹なら、常識の範囲なのかな?
それにしても、随分と青い蟹だ。形状も平べったくて、なんかこう……いつも食べてるやつと違う。
多分日本産の蟹じゃないんだろうな~なんて思っていると、蟹の目が動き出し、唐突にその場に立ち上がる。
そして、ちょこちょこと横歩きをし、ふと蟹の手が水の中に浸かり、そのまま何かを投げつけてきた。
何とかその何かを避けて、飛んできたものの正体を探ると、どうやら魚のようだ。
そして再び蟹の方を向くと、いつの間にやら反対の壁まで走っていった蟹が、すごい勢いでまた戻ってきてそのまま壁に激突。
その衝撃で店が揺れ、思わず屋根を踏み外して3層の通路に落ちてしまう。
まだ水が張っていたおかげか、ダメージにこそならなかったが、目の前には明らかに背の高さだけでも自分より大きな青い蟹の姿。
そして、膝くらいまで浸かる水の中にはまだ魚がいる可能性がある。
これはピンチかもしれない。




