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128.受取『海神の白い悪魔』

 流星のお姉さんは現れた時と同様に消える時も唐突だった。


 とりあえず、アドバイスに従いストレートタイプの刃側に重心がある投げナイフを購入し、その後も数日海に潜った。


 時折岩肌にへばりついている〔金属鉱石〕を廃品回収屋に持ち込むと、鉄だったり銅だったり、鑑定してくれた上で店先に新たな商品が増えていく。


 まぁ〔銅線〕とか〔サーキットボード〕とか言われても何に使うのかさっぱりなんだけど、一応購入はしてある。


 あと〔鉄鉱石〕に関しては鍛冶屋に持ち込むことで大型の作業用ナイフをグレードアップしてもらい、妙に迫力のある一品に仕上げてもらった。


 あと、数は無いが〔ヘビーボルト〕という鉄製の重い矢が作れたが、これはクロスボウの方をもう少し強くしないと、まだ扱えないだろう。


 そんなある日、ふとメッセージを確認したらだいぶ溜まっていた。


 とっくに藍染の装備は出来上がっていたらしく、大急ぎで街に戻る。


 すると、ちょうどタイミングがいいのか、はたまた悪いのか、あっさりと女子達と出会えた。


 「あー!!!!素材屋さん!どこ行ってたの?全然見つからなかったんだけど!」


 「街中全部見たはずなのに、どこにもいないから!」


 「すみません。島の方に行ってました」


 「「島?」」


 「何だラビも行ってたのか?何も無いだろあそこ?」


 そう声を掛けてくるのはジョンさんだ。


 多分女子達が自分を探して、自分の居場所を知ってそうなジョンさんを引っ張り出したのだろうが、ジョンさんも島にいた?


 「ねぇ!島って何?」


 「いや、ここから船で少し行ったところに島があるんですよ」


 「何があるの?」


 「何もないな」


 「海に入れば貝とか魚とか捕れますよ」


 「貝?魚?お寿司とか食べれる?」


 「基本焼いてましたね」


 「ちょっと待て!海なんか危険じゃないのか?銃は使えないし、どう猛な魚が多いって聞いてるぞ?」


 「どう猛って言うか、猛毒って言うか、危険なのは確かですね」


 「あの……そろそろ品物の方を……」


 カスミさんだったか、女子二人組の師匠がおずおずと青に染まった布を渡してきた。


 「これが藍染!」


 「はい、素材屋さんの服装から何となくアフガンストールにしてみました。一応綿100%です。首に巻くもよし、顔に巻くもよし、肌触りも良ければ丈夫で洗濯もしやすい一品です」


 「洗濯?」


 「それは、冗談です。ゲーム内で洗濯の必要はないです」


 早速首にざっくり巻くと、なんかこう……砂漠の兵士とかゲリラを思わせる感じだ。嫌いじゃない!


 首に巻いたそれをメープルシロップ屋のお姉さんがしていたように顔に持ってくると、どうやら何かがダメらしい?


 「あっ!それ仮面と干渉してるから顔に巻けないんじゃない?」


 どうやらずっと装備していた犬面と干渉してしまっているようだ。


 SNSが上がる使いやすい物なのに、外すのはもったいない気もする。


 あれかな?普段は狼犬マスクにして、必要な時だけ外してストールを口に……面倒だな。


 諦めて狼犬の面は一旦鞄にしまい、ストールを口元まで持ってくると、何かしっくりくるというか、安心する。


 暑くもなく寒くもない、程よい感触で首元を隠し、口を覆っても呼吸が楽な感じ。


 悪くない!


 「あの、本当にそれだけで良かったんですか?他にも何かご要望があれば……」


 ドーーーーーーーーーン


 唐突に鳴り響く腹の底に響くような重低音。


 「白い悪魔だーーーー!!」


 どこからともなく聞こえる声、そして鳴り響くのは大砲の音。


 よくよく見ると一列に並んだ大砲が、左から順に撃ちだす様はまるで大砲が波打っているかの様。


 そしてその先には、大きな白い影?


 およそ生物とは思えない巨大すぎるその姿に、全容が分からず、まるで壁が迫ってきているかの様な錯覚を抱く。


 「素材屋さーーん!」


 白く巨大な何かに目を奪われている内に、女子達とジョンさんがいつの間にやら走り出していた。


 訳も分からず走ってついていくと、お店とお店の間の壁に何やら扉がある?


 一斉に人々が押し掛ける中で、女子達がどうやったのかスルッと滑り込んでいく。


 「ラビ!早く!」


 そう言いながら、大きく手招きをしつつ、ジョンさんも入っていった。


 自分も何とかついていかねばと、人ごみに紛れ込もうとした瞬間……。


 「邪魔だ!」


 知らぬ声の主に突き飛ばされて、その場に転がってしまう。


 大急ぎで、立ち上がると既に大混雑は扉に吸い込まれていた。


 そして、ゆっくりと閉まる扉。


 「おい!ラビがまだ!」


 「素材屋さん!」


 「もう限界だ!あれを見ろ!」


 何か自分の後ろの方を指さしていると思い、そちらを見ると大津波が頭上に迫っていた。


 そのままあっという間に飲み込まれ、押し流される。


 一瞬の間にゴーグルを下ろせたのは、ただただ反射のなせる技と言うか、偶然の出来事。


 泡立つ白波に結局視界を奪われたまま、どこまでも流されていく。

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