127.流星『どうやらすごい人だったらしい』
「何だい無粋だね~折角のデート中に……」
「デートじゃありません」
「だろうな。どうせ姉御が無理言って決闘でも仕掛けたんだろ?」
「無理は言ってないよ」
「無理言われました」
「だろうな……何でラビって、こう……女運がないってか、癖のあるのばかり引き付けるんだか」
「類は友を呼ぶって事なんじゃないかい?」
「類じゃないです」
「類なんだよな~」
とても心外だが、コットさんの中では自分はこのお姉さんと同類に見られているらしい。とても心外だが!
「っていうか、そもそもラビは姉御の事なんだと思ってるんだ?」
「詐欺師か不審者です」
「どっちも違うって言ってるだろ!」
「ああ、まぁほぼほぼ正解だが、一応JPサーバー初期の決闘王だぞ」
「決闘王?」
「昔の話さ。今は一人寂しくナイフを磨いてるだけの厄介古参だよ」
「いや、今だって大会でりゃそれなりまで行けるだろうに……」
「大会ですか?」
「嫌なの!あいつは特別だからとか!私はもっとみんなでワイワイ楽しみたいの!」
「だったら普通に銃使えばいいじゃん」
「ですね」
「銃はしっくりこないんだっての!あの反動とか音とかさ!だから頑張って一時はナイフ使いも増えたってのに……」
「いや、ナイフは難しいだろ。ナイフ一本持つより銃の弾10発持ってた方が絶対効率良いんだしさ。よっぽどの変人じゃないと使わんって」
「変人じゃないです」
「そうだよね!ナイフは変人の武器じゃないよね!いや~分かってるね~アンタ!よし!何か名前を付けよう!」
「何で急にそうなった?」
「分かりません」
「分かってないね~これからこのゲームでナイフの有用性を証明する人物に二つ名がないなんて、あっていいのかい?いやないね」
「ないないないない、よく分からんけども、二つ名ならもうあるぜ」
「素材屋って呼ばれてます」
「地味だね~っぽくはあるけど、でも確かに<解体>にナイフがあると便利だし、似合ってはいる?」
「そっちじゃねぇって!二代目サイレントキラーの方だろ!」
「「二代目サイレントキラー?」」
「いや、姉御は分かるけど、何でラビまで心当たり無いんだよ!」
「何の事かさっぱり分かりません」
「サイレントキラーって事はエウリュちゃんが、譲ったって事かい?」
「そう聞いたぜ。ああ、一応内密にな。姉御だから言っておいたけど、現状正体不明の二代目サイレントキラーが、新人の中に混ざってるとだけ噂が流れてるんだからよ」
「何でまたそんな変な噂が流れるんだろ」
「ふーん……いいね~それ!正体不明のサイレントキラーが、実はナイフ使いでしたって!話題性もあるし、胸が高鳴る展開だわ!」
どうやらお姉さんは納得したらしいが、自分は今一つ状況がつかめていない。
まぁ、それはそれとして、一個ずっと気になってるんだけども。
「ところで二人ってどういう知り合いなんですか?」
「ああ、一言で言ったら恩人だな。昔のこのゲームってPKし放題って噂ばかり独り歩きしてて、それはもう殺伐としてたんだわ。俺もジョンも散々狩られてな~そこでいろいろと面倒見てもらったって訳だ」
「別に面倒って程の事もないけどね。似た境遇の連中集めて街中でもレベル上げる方法教えたりね。その内に決闘強者が育って、PK専門の連中もうかつに手が出せなくなったりとか、その程度の話さ」
「へ~」
「まぁ、今ほど落ち着いたのはその後に『大円』ってクランが有力者集めてJPサーバー内の大まかなルール決めをして取り締まったからなんだけどな」
「あれが堅苦しくってねぇ」
「ルールなんてあったんですか?」
「一応な。赤襟狩り禁止なんかはラビも知ってるだろ?まぁ、ラビは赤襟の時にPKKし返したけどな。あと、姉御は堅苦しいとか言いながら平然とルール破って大円の連中返り討ちにして遊んでるだろうが」
「はいはい!いつまでもデートの邪魔してんじゃないよ!」
「デートじゃありません」
「はは!まぁいいさ。二人が何の話をしてたか知らんが、ウマが合うならそれでいいさ」
「私はこの二代目に決闘の大会に出るように説得してただけさ」
「すぐには無理ですよね?」
「そりゃな!ラビはまだ初めてどれくらいだよ!せめて5つ目のクラスになってスキルとアビリティを揃えてだな……」
「回りくどいね~アンタも環境だのなんだのと言うようになったのかい?大事なのはいつでもKKDだって言ってるだろ!気合!根性!努力!」
「もう、5つセットできますけど?」
「はぁ?何で森で自給自足してるだけでそんな事になってるんだ?」
「ほぉら!コットは昔からそうさ。自分の常識を超える相手なんてそこら中にいるって事をもっと知った方がいいね」
「よく分かんないですけど、大会目指した方がいいんですか?」
「いや、もう俺もよく分かんねぇよ!」
「目指しな!二代目は見込みあるよ!何なら一番近いイベントなら時計台の町だろ?いっそクロノスでも殺っちまえばいいのさ!」
「クロノス?」
「いや、無理だろ!あの町の絶対王者だぞ?ジョンでも一度も勝ったことない相手だってのに……」
「あの子は無理でも、二代目なら勝てるね!私には分かる!」
なんか勝手に分かられた。




