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125.決闘2『詐欺師と騙しあい』

 お姉さんが何やら入り口と真反対に向かうのでついていくと、そこには太めとも違う筋肉の上から脂肪もつけたようながっちりとした巨漢のNPCがいた。


 「なんだ?賭けに参加するなら下のカウンターで賭札を買いな。当たれば払い戻しがあるぜ」


 「いや、決闘がしたいんだけどね」


 「出場者って訳か。それなら分け前は参加料5000クレジットと勝者には報酬として掛け金の1%が支払われるが?問題ないか?」


 「そうじゃなくて、プライベートの方さ」


 「何だい姉さん!金網デスマッチに出場しねーのかよ!」


 突然横合いから金髪モヒカンのチャラそうなプレイヤーが、割って入る。


 と、同時にその特徴的な髪をこそぐかの如く頭皮ぎりぎりをナイフが抜けて、柱に突き刺さった。


 自分はこの詐欺師がナイフ使いだと知っているから抜く手が見えたが、どうやらモヒカンの男性は何をされたか分からなかったらしく、そのままその場に尻もちをついて動かなくなった。


 「(おい!あれ!流星の!)」

 「(だよな!死を告げる流星の女だ)」

 「(あちこち渡り歩いてるって話だったのに、この島に来てたのかよ!)」


 ざわざわと周りの声が聞こえるが、まさか本当にこの女の人は有名な古参で、詐欺師じゃないのか?


 「プライベート決闘(デュエル)ならむこうだ」


 親指で指さされた所には、扉が一枚あって、これまた大柄な人物がその扉を隠すように立っていた。


 「(うわー……あの決闘見たかったな)」

 「(分かるわ。流星に挑む奴なんて最近じゃ全然いないって話だし、何者なんだアイツ?)」

 「(とんだ身の程知らずなんじゃないか?)」

 「(多分違うだろ。流星は何だかんだJPサバオープンから面倒見がいいので有名だし、見込みのある新人って所じゃないか?)」

 「(いやパッと見、生産職じゃねぇか?なんで決闘なんか……)」


 なんだかよく分からないが、どうやらこのお姉さんはかなり信用されているらしい。


 これは、危険だ。


 三人これを疑わしむればだったか、三人も他人があなたの息子が人を殺したと言えば、どれだけ立派な慈母でもそれを信じちゃう的なあれだ。


 この詐欺師、かなり大規模なねずみ講の可能性が出てきた。


 みんな信じてるから安全なんだ。


 そんな事に騙されるわけにはいかない!じゃあ、どうやってこのお姉さんと縁を切るか……殺す。


 腹が決まったところで、慣れない雰囲気にのまれて、上がっていた心拍数がすっかり正常に戻った。


 どこまでも心が冷たくなり、頭の中がスッキリする。そんな感覚を感じていると、小部屋に通された。


 立会人らしきNPCが一人いるだけの小部屋の四方の壁にはそれぞれ蠟燭のランプが設置され、何となく揺らめく影に緊張感を感じる。


 「さてと、ハンデだ。アンタは先に得物を手に持っていていいよ」


 詐欺師の意図はよく分からないが、先ずはポンチョを装備し、その下で左手に強酸の瓶と右手に投げナイフを持つ。


 ちなみにポンチョを装備していなかったのは、海に入る時何となく邪魔だったからだ。


 「ふーん……ナイフ使いの最低限のセオリーは知ってるって訳かい。抜く手を見せないってのは大事な事さ」


 そうなのか?もしかして、このお姉さん既にこちらの意図を察してる?


 「勝負方式、先に気絶または硬直を受けた者が敗者となる。フリー決闘」


 「フリーってなんですか?」


 「開始合図は無いって事さ。お互いのタイミングで始めろっていう……」


 言葉が終るかどうかのタイミングで酸の瓶とナイフを放り、そのまま腕で顔と喉の急所を塞いで体を丸める。


 まず右腕に一撃衝撃が走り、続いて左手に何かが突き刺さった。


 同時にパリンッと瓶の割れる音が響き、


 「ぎゃぁ!」


 という叫び声を聞きながら、次のナイフを引き抜こうとするが、左手が動かない。


 やむなく右腕で次のナイフを引き抜くと、体勢を崩して今にも倒れこみそうな詐欺師が、ナイフを抜いているところだった。


 考える間もなく、詐欺師の眉間めがけてナイフを放る。


 逆に詐欺師が下から地面を擦るように投げ上げたナイフを無理やり体を捩じって肩で受けた。


 そのまま〔灼粘液〕を取り出し投げようとすると、NPCに止められる。


 「勝負あったねぇ……薬持ってるとは思ったけど、一手目で置きに来るなんて……」


 「どういう事です?」

 

 「自分でやったことに自覚無いんだ?誰だって決闘となれば、少しでも早く相手に一撃当てたいだろうに、酸ぶっかけるなんて変な事する相手初めてだったって話しさ」


 「絶対何か狙ってたので、避けられない攻撃で始めただけですけど?」


 「お陰で回避できずに、体勢崩しちゃったし、あんたの掌の上だったんだろうね。仕方ないつまらないものだけど、賞品をやろうか」


 そう言って取り出したのはガンベルト?ならぬ以前羊の村で見かけたナイフのベルトだった。


 素直に受け取り装備して、投げナイフをセットしてみると、すごくしっくりくる。


 「分かったかい?決闘の場合適したガンベルトにするだけで、抜くスピードが変わるのさ」


 通常の薬瓶やクロスボウのボルトを差し込んでいるサイドバックを装備する腰のベルトより少し下に、ナイフのたくさん挿さった太いベルトを撒いて、抜き加減を確かめると、確かに凄く滑らかと言うか、楽にナイフを抜ける。


 「何で、勝ったからってこんなものくれるんです?」


 「そりゃ、ナイフ使いの後輩にちょっとくらい手を貸してやるのが、古参ってもんだろ?」


 この人もしかして、詐欺師じゃなくていい人なのか?

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