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123.海蛇『海を飛ぶ化け物』

 クラゲにカサゴ、フグにオコゼ……海は猛毒パラダイスだ!


 目の前をふらふらと縞々の魚が泳いで通り抜けたが、これはゴンズイだったかな?


 とはいえ、夜漁はやはり安全なのか、寝ぼけてふらふら泳いでいるような魚ばかりなので、素材集めがはかどってしょうがない。


 いろいろと手に入ったが、大まかに二種類だ。


 いわゆる内臓系の毒だが、これは抽出して〔白粘液〕例の固まる粘液に混ぜ込んで塗布毒として扱う。


 もう一つが針系の毒だが、これは<製作>で罠やなんかに使えそうって感じ。


 特殊なのが〔灼粘液〕とタコ墨なんだが、これらはどちらも直接ぶつけるようっぽい。


 海中で使うともわっと広がって、火傷をばらまいたり視界を塞いだりできるものの、地上はあくまで粘液なので、扱い方は今後考える必要があるだろう。


 ちなみにタコ墨で緑と薄い緑のポンチョに黒を足して、より迷彩らしくなった。


 そして毒類とは別に新たな強化薬が手に入った。


 夜間にうっすら銀色に光る藻を<調合>するとやたら息が続くようになる。


 海に入る以外何に使うのか全く分からないが、とりあえず今はめちゃくちゃ重宝している。


 更に更に変わり種としては、海中の砂を手に入れる事が出来たので何に使うか聞いたところ、廃品回収屋に持って行けと言われて持っていったら、ゴーグルが店に並んだ。


 どうやらガラスの原料が多分に含まれてるんだとか。


 おかげで視界もよくなり、息も続き、漁にも慣れてきた。まさに絶好調とはこの事か!


 大体そんな風にうまくいっている時が一番危ない。


 本当に一瞬の出来事、急に足場を失ったような不安を感じ、下を見たら深淵が広がっていた。


 浅瀬からはみ出たのだと自覚したのが先か、全身の血が凍るように冷たく感じたのが先だったか、ただ反射でクロスボウのトリガーを引くと、何かに当たる。


 手ごたえの直後、ものすごい質量の物に弾き飛ばされ、浅瀬に押し戻された。


 距離を取って、その正体がやけに長くて太くてうねる化け物の様な何かだと気が付き、すぐにも逃げなきゃと頭は思っているのに、中々体が思うように進まない。


 まるで何かから逃げる夢を見ているかのように、重い体を引きずるように海面へと向かう。


 そうこうしている内に、化け物が一直線にこちらに向かってくるのが見えた。


 クロスボウを再装填して、再度撃つ。


 化け物の口の中にボルトが突き刺さり、またもや暴れる化け物に弾き飛ばされた。


 何か……何かないかと体をまさぐり出てきたのはウエストバッグに登録したての〔灼粘液〕。


 鮫にも効くと聞いた気がするこれならと、クロスボウをしまい左手にもって、泳ぎだす。


 すると間もなくさらに追いかけてきた化け物に流すように瓶の中身をぶちまける。


 下手をすれば自身も火傷を負うだろうが、幸い自分は赤い海藻から作れる〔赤粘液〕を常備しているので、それで何とかすればいい。


 粘液に頭から突っ込んだ化け物は、先ほどまでのボルトを食らった時とは大違いの大暴れを始めた。


 それを尻目に船まで逃げ切り、乗り込むと荒い呼吸が止まらない。


 「お、おい!大丈夫か?」


 「ゼヒ…ゼヒ…ハァハァハァ……化け物が出ました」


 「化け物だ?どんな?」


 「あれです」


 海面からでもよく分かる巨大な姿がうねっている。


 「シーサーペントか。浅瀬から出たのか?」


 「うっかり、ちょっとだけ」


 「あれほど言ったんだがな~。どうしたもんか」


 「とりあえず〔灼粘液〕が効くみたいなんで、流してみます」


 そう言って、海にもう一瓶ばらまくと、またもや大暴れするシーサーペントと、それに伴って大揺れに揺れるボート。


 少しの間が開き、プカッと巨大な蛇が浮いてきた。自分の知る限りの知識ではアナコンダと見まがうほどだ。


 とりあえず<解体>してみると〔大海蛇皮〕〔海蛇牙〕〔海蛇肉〕が大量に手に入った。


 「いい形だな。あいつの所に持ってけばいいものが買えるかもな」


 多分アイツとは食堂のお兄さんの友達である皮毛骨肉店の店主の事だろう。


 まだ、夜が明けるには大分時間があるが、どっと疲れたので島へと戻り、皮毛骨肉店に行くことにした。


 「おっ!恩人殿!今日も大漁かい?なんてな!こんな時間に引けてくるんだボウズだったんだろ?飯位おごらせてくれ!」


 何とも気のいい感じのお兄さんは太め男子と真逆のガリガリ長身で、なんていうかこう……もっと食べた方がいい。


 「おいおい!お客人の腕前はお前もしてるだろうが!まぁ見てみろって今日の成果をよ!」


 〔大海蛇皮〕を取り出して渡す。


 「おっと!こりゃあたまげたな!そんじゃうちも秘蔵の品を出さないとな!」


 そう言って、店先に並んだのは人型のまだらの抜け殻?


 「何ですか?これ」


 「これはアンダーアーマーの部類なんだが、一応ウェットスーツだ。泳ぐスピードが上がるぞ」


 成る程、海グッズなら買いかもしれない。何しろシーサーペントから逃げるのに体が重くて仕方なかったしな。


 皮を売ったお金で即買い。


 装備してみると、何やら制限にかかってる?


 「VITが足りないみたいだな。アーマーかその服かどちらか外すしかなさそうだ」


 え?服がないと寒暖差を防げないし、防具がなきゃ撃たれた時困る……滅多な事じゃ撃たれないし、防刃ベストと脛当てを外すか。


 ツナギの下にウェットスーツと言う何とも珍妙な取り合わせの様な気もするが、意外と着心地は悪くない。


 しかもウェットスーツと言う割に、かなり体にピタピタで、まるで全身タイツみたいでちょっと恥ずかしいし、ツナギ着用でいいのかもしれない。

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