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121.夜漁『夜の海は怖い』

 事情は一応聞いたものの、とりあえず今は夜だ。


 多分このまま話の流れで、一旦休みなさいとかそういう感じに……。


 「それで?夜間装備は何があるんだい?」


 「確かにな!松明は海じゃ使えんから、光源になるものを何か持ってくるか?」


 「え?え……ブルーベリーの強化薬ならありますけど?」


 「ほぅ……中々準備がいいじゃないか。じゃあ行きな」


 「よし!じゃあ、船でポイントまで連れてくから付いてきな!」


 「いや、でも夜ですよ?」


 「夜の方が魚も大人しいし、おあつらえ向きだろ?昼間じゃ向こうから襲い掛かってきかねないからね」


 うん、どうやら火星の魚ってのは相当に狂暴らしい。


 それならまぁ、仕方がないと太め男子についていき、再びボートに乗り込む。


 「ところで、あんたの装備を念のため見せてもらえるか?」


 と尋ねられたので、素直にクロスボウを差し出したがどうやらこっちじゃないようだ。


 「ボルトの方だよ。クロスボウ使いって事は仕掛け矢使ってるんだろ?」


 と、言われたので適当に毒矢と麻痺矢を差し出した。


 「こりゃダメだな」


 「え?何がです?」


 いきなりのダメ出しに、思わずムッとしてしまうが、本当に何がダメなんだ?


 「ああ、悪気はなかったんだが、海じゃ毒が溶け出して使い物にならんよこの構造だと」


 「そう……なんですか?じゃあ、どうしましょう」


 「とりあえずは、アレだな赤い海藻だけに狙いを絞って、明らかに不気味な顔の黄色い魚がいたら、空のボルトを撃ち込めばいい。小さい魚ならすぐに体液が抜けて死んじまうだろうから、倒せるはずだ。問題はでっかい奴が出た時なんだが、それはもう一旦逃げるしかないな」


 確かに毒が効かないとなると自分に打つ手はないんだけども、じゃあなぜクロスボウを海で使える仕様にしたのか?


 「海の中でも剥がれ落ちない様な毒を使うのさ。液体で筒に収めるんじゃなくてな」


 表情から察せられてしまったのか、自分の聞きたい事を答えてくれた。


 「それだと効果が薄くなりませんか?」


 「血液に入らないと効果が出ない様な毒ならそうだろうが、海の毒ってのは本当に強力なのさ。それこそ触れるだけで火傷を負う程にな」


 これが海と陸との違いなのか?


 液状のものは海に流れ出てしまって使えない。今までとは勝手が違って絶対に不利なのに、妙に楽しくなってきた。


 モータボートがゆっくり速度を落とす。


 「この下に赤い海藻がある。ここから島に向かっては比較的浅瀬だからデカい魚は来ない。逆に島の反対に向かうと一気に深くなって、何に襲われるか分からない」


 「つまり、進むなら島側にって事ですね」


 「ああ、でも慣れないと水中じゃ方向を見失いやすい。適宜浮いてきて船に戻るといい」


 それだけ言うと太め男子が黙ってしまったので、ブルーベリーの強化薬で夜目を強化し、そろそろと海に入っていく。


 夜の海は、真っ黒に染まり、底なし沼に引きずり込まれるかの様な幻視をしてしまう。


 徐々に呼吸が荒くなるが、無理やり息を止め思い切って頭まで海に浸かると、思っていた以上に明るい。


 勿論強化薬の影響だとは思うが、海の外から見ていた時の異様な黒さは、もしかしたら空を映したものだったのだろうか?


 ほとんど目と鼻の先と言っていいほどすぐ近くに赤い海藻がうっすら光って生えていたので回収する。


 点々とそこら中に生えているが、自分はそんなにすぐに忠告を忘れるほど抜けてはいないので、一旦船に上がる。


 すると、自分ではその気はなくとも肩が上下し、大きな呼吸が止まらない。


 よくよく見ると、視界の端にうっすらゲージの様なものが出ている?


 そのゲージが回復すると呼吸が直ったという事は、いわゆる酸素ゲージってやつか?


 「赤い海藻はあったか?」


 「一応、一個は回収しまししたけど、点在してる感じなんで方向確認です」


 「そうか、頼む。あともし余裕があったらでいいが、細長くて海底から水上までまっすぐ伸びるような海藻があったら、ついでにもぎって来てくれないか?」


 「余裕があったら、見つけてみます」


 そういいつつ、手近な赤い海藻を回収すると、ユラユラと揺らめく黄色い姿。


 クロスボウを引き抜き、よく対象を確認すると黄色くて、今にも転がり落ちそうなほど目の飛び出た小さい魚が、ユラユラと揺れている。


 寝ているのだろうか?近くの岩にへばりつくようにしているが、念の為撃つ。


 一発撃つと、ゆらっと、こっちを向き目が合った。


 まるで、死を恨むかのような尋常じゃない目に思わず悲鳴が出そうになるも、ここは海の中口から空気が漏れるばかり。


 一旦海上に顔を出し、すぐさま戻ると腹を上に向けてぷかぷか浮いている不気味な黄色い魚。


 <解体>すると〔灼粘液〕と〔高級白身〕が手に入った。


 高級と言うからにはきっとおいしいんだろうが、それを守るために酷い火傷を負わせてくれるんだからたちが悪い。


 とりあえず、赤い海藻の回収を進め、不気味魚も5匹ほど狩った。


 あとついでで頼まれていた細長い海藻も回収したが、いったい何に使うのだろうか?


 不気味魚以外にも、結構生き物がいる気配がするが、海はまだ謎が多いし、十分情報収集してからの楽しみにしよう。

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