11.成長『そしてドブネズミに』
ついこの間、上手くいかなかったばかりのドブネズミ狩りだが、今度こそは何とかする。
SNSにステータスを3つ振り、これ以上ステータスボーナスにも期待は出来ないし、お金も持ってないので、武器にも期待できない。
あとは、プレイヤースキルのみがモノを言う。
そんな事を思いつつ、例の下水道に向うと、早速暗い遠方にドブネズミの赤い目が見えた。
かなり遠いが、一射目は当らずとも二射目で当てればいいと、クロスボウを構えて、矢を放つ。
まぁ、案の定と言うかなんと言うか、とりあえずドブネズミを掠めただけでも上出来だろう!そのまま、次の矢を番える。
前と比べれば、かなり距離があるし、何より思ってた以上にドブネズミの動きが遅く、冷静に二射目の体勢を整え、ドブネズミの頭に矢を突き刺した。
散々クロスボウは攻撃力が低いと言われたが、ドブネズミはそれだけでコテンと転げ、動かなくなる。
大きく息を吐いて、ドブネズミに触れると肉と皮を手に入れた。
アイテムボックスに入れて確認すると、
〔鼠肉〕・・・臭みが強いが火を通せば食べれない事もない
〔鼠皮〕・・・最低限防寒能力のある皮
一応アイテム情報を見れたのだが、やはり弱い獣だけあって、本当に最低限のドロップアイテムらしい。
これで先制攻撃さえ取れれば倒せない事もないと分ったが、餌も試したい所ではある。
何しろ折角SPを振って使い物になりませんなんて言われた日には、ショックを隠しきれないし、DEXを切る選択すらありうる。
とりあえず、罠の設置と言うのがまだしっくりと来ないが、丁度隠れられる曲がり道の前に餌を置いて待ってみる。
すると入れ食いと言うのだろうか?どこからともなくドブネズミが3匹集まってきて、鼠の肉団子を食べ始めた。
同族食いとか気にしないのかな?とも思ったが、今からそれらを殺す自分が言う事でもない。
一匹のドブネズミの頭に矢を突き刺すと、他の鼠は逃げていった。
その鼠に触れると相変わらずのアイテムが手に入り、少し下水道を歩いていると、またドブネズミに会ったので、殺す。
少しづつ、落ち着いてドブネズミ駆除を出来るようになってきた。キチンとステータスを上げて、尚且つ冷静に狩ればどうという事はない。
何匹狩ったか忘れた頃に、矢が尽きたので地下水道から保安官舎へと戻った。
「ほう、どうやら最近の地球人にしては骨があるみたいだな。よしお前を溝鼠と認めよう。肉と皮を出しな」
言われるがままに、保安官と思われる人物が足を乗せている机にそれらを並べる。
「よし、これらは今後食料や服となって、大いに役に立つだろう」
「え?!ドブネズミの肉って滅多な事じゃ食べないって……」
「まぁ、人は食べないが、家畜の餌にはなるぞ。お前は今の所歩きで移動している様だが、その内移動用に家畜が欲しくなる」
「あの~車とかバイクとかで移動するんじゃ?」
「そういうのも可能だが、燃料が高くつくぞ?それなら溝鼠の肉食って満足する家畜の方が、ずっと楽だろう」
うーん思った以上にこの近未来FPSRPGは原始的なのかもしれない。
そもそも保安官って言う所からして、西部劇をイメージしているように思えるし、動物に乗って移動なんて、正にその時代のそれだろう。
今一つ世界観がしっくり来ないまま、話を進めると、赤いスカーフを差し出された。
「それは溝鼠程度に相応しい、新人の証だ。別にそれを着けようと着けまいと自由だが、今後お前は新人火星開拓者として、アクティブスキルが2つ、パッシブスキルが2つ装備できるようになる。その記念品だ」
そう言われると同時にレベルが上がった。
更に、1500クレジットを渡され、それが今回の報酬と言う事らしい。
一先ず首にスカーフを装備して、更にSNSを上げる事で<聞耳>も取得した。
残り3つのステータスはDEXに振ったが、スキルに関しては一旦保留としておこう。
そしていざ<聞耳>をセットしようとすると、どうやらこれはPでもAでもあるようだ。
ちなみにPはパッシブ、Aはアクティブの略でスキルを見れば表示されている
とりあえず、耳がよく聞こえるに越した事はないとパッシブスキルにセットすると、あら不思議、周囲の音が本当によく聞きとれる。
最初は補聴器の様にも思えたが、リアルの音はこんなものじゃない。もっと雑然としてて意味が分からなくなる程だ。
それに対して、確かに色んな音が入って来るものの、とてもクリアで集中すれば誰が何を言っているか分かるほど、高性能な集音スキルに感心しかない。
コレはいいスキルを手に入れたと、二番街区に向って、適当な所に腰を下ろして他人の声に耳を澄ます。
ちなみに二番街区は商業地帯……と言っていいのだろうか?商業施設や宿屋が立ち並ぶ一角となっている。
非常に雑然としていてちょっと悪い雰囲気が寧ろ心を昂ぶらせてくるが、取り敢えずはトラブルにならないように街の片隅に腰を下ろした。
……殆どは他愛もない話、それに喧嘩の声ばかりだ。
選んだ場所が悪かったかな?と思い、腰を上げると、不意に話し声が聞こえてくる。




