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100.『???』ロディ

 『勝者!レオ!』


 そんなアナウンスなど聞くまでもなく自身の敗北を悟る。


 暗く塗りつぶされる思考に頭が重くなり、ただ項垂れるほかない。


 敗北こそ、これまで多く重ねてきたが、それらはすべて成長の糧……その実った力をすべて刈り取られてしまった。

 

 「ロディ?約束だ」


 一時の過疎とは見違えるように増えたゲーム人口、そして大会に集まる人々の中からどうやって先に死に戻った自分を見つけたのか、レオが声をかけてくる。


 「素直に大円に入ればいいさ。俺は最強を求めてる。理由は知ってるだろ?」


 大円……日本にはやや合わないフリーダムなPKを旨としたこのゲームに、日本独自のルールを盛り込むべく実力重視で集められた精鋭達。


 などというのを目標にしている変人どもの集まり。はっきり言ってそれだけが目的なら自分が参加するのも悪くはない。


 実際に力づくで言うことを聞かせ、新人に手出し無用を順守させたお陰でプレイ人口が増えているのは確かだろうし、その他にもまだまだ変えていけることはあるはずだ。


 だが少々……いやかなり独善的なきらいはあるし、何よりメンバーそれぞれが身勝手を力で押し通す事を黙認している。


 元々自分自身がフリーダムすぎるPKに嫌気がさしたところで、街をはじめとした居住地の一定ルール化にある決闘というスタイルにたどり着いた口だ。


 弱者を守るだけなら言うまでもなく手を貸すが、そもそもレオの奴とぶつかったのは大円のメンバーのやり口が気に入らなかった事が発端にある。


 そうなればそうやすやすと下風に立つ訳にもいかない。


 「ヘイ!大円(うち)の枠はまだ幾らでも空いてる。最速の決闘者なら最初から幹部でいいと誘ってるんだ。ここは素直に従った方がいいんじゃないか?お前だって面倒見てる奴らがいるんだろ?そいつらもまとめて守れるんだ。こんないい話はない」


 レオの奴のいう事は本当だろう。


 自分が下につけば、自分が面倒見てきた連中も平和にゲームができるし、大円の連中とのぶつかり合いもなくなる。


 俺がこいつの下につけば……街中でのルールに対しても睨みが効くわけだ。


 ただでさえ、ルールに縛られる街中で更に制限をかけるのか?


 そりゃ違うだろ?フリーダムなゲームに秩序をもたらそうなんてちゃんちゃらおかしい。


 ルールなんて最低限でいい筈だ。プレイヤーが嫌にならない程度、好きに殺し、好きに笑うそんな程度のルールでいい。


 どこでもかしこでも気に入らないから粘着するとか、そんな訳の分からん荒らし行為さえなくなれば十分なんだ。


 でも、自分は負けた。


 敗者は差し出さなければならない。


 「そのピースメーカーは正真正銘のお前の相棒なんだろ?そりゃぁ差し出しちゃいけない。俺はお前が弱くなるのを見たくないんだ。黙って俺についてこい。ただ最強であってくれればいい」


 ガンベルトから引き抜いたSAAには跳ね馬の文様が刻まれている。


 初期の頃からいつも話し相手になってくれる変な奴。


 フリーのガンスミスとして活動しつつも、しょっちゅうそこらでPKされては文無しになって困ってるソイツが、俺の為に仕上げてくれた最高のSAA。


 黙ってレオに押しつける。


 「おいおい!そいつは違うだろ!なぁ?最速の……考え直せ!お前は孤高の男だ。誰もお前に追いつけねぇ……跳べる漢を縛り付けるような真似はしないぜ?」


 「いい……お前とは相容れない。そいつは必ず取り返すから大事にとっておけ」


 「馬鹿が……無理に決まってるだろ?相棒を失ったお前と戦って負けるわけねぇ」


 「お前だっていくら仲間を集めたところで一人だろ?」


 レオも孤高の男だ。力で抗い、力で従わせてきた。


 それがカリスマとなって今があるそんな男のはずだ。


 「俺にも守るべき小獅子がいるんだよ。これからはそいつとタッグマッチに出る。いつまでも一人のお前じゃ、俺には届かない。しかもプライドの為に相棒を渡すお前なんかには、な」


 「タッグマッチって……ジェミニは?」


 「あいつらは結局スナイパーとスポッターだ。少し規模の大きい戦闘に出させる方がいい」


 訳が分からん。


 頭が混乱し、意識が混濁する。


 同じだから戦って、同じだから負けたんじゃないのか?


 じゃあ、今まで自分が間違ってたって事か?なんで俺は負けた?俺はどうすればいい?相棒ってなんだ?


 ふと気が付くと、手にはブラックホークを握っており、目の前にはすべてを失った負け犬の顔。


 一度ホルスターにブラックホークを戻し、


 そして抜き撃つ。


 乾いた音が鳴り響き、目の前の負け犬が粉々に砕かれた。


 「またかジョン?」


 声をかけてくるのは変人ガンスミス。顔を確認するまでもない。


 「あのよ。余計なお世話なのは分かってるが、ラビを相棒と呼ぶんなら……なんつうか……」


 「悪い……分かってる」


 いまだ相棒が何なのかよく分からない癖に、自分の為に新人を巻き込もうとしてる。


 義理を忘れちゃいけない。他人を好きに利用していい理由なんてもんは存在しないんだから。


 「なんつうか……ちゃんと信用して、信用されるようにな……違う気もするけど、分かんねぇや。悪い……説教する気はないんだけどさ」


 何言ってんだ。お前はずっといい奴だよコット。

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