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小説家になろうラジオ大賞投稿作品

屋根裏の悪意

作者: 熱湯ピエロ

『屋根裏の悪意』


「なんで、憎い相手を殺しちゃうんですかね」


 その男は、純粋な瞳でそう語った。



 荒井 三四郎。39歳(当時)、男。無職。

 罪状は住居侵入罪、器物損壊罪、窃視罪、迷惑防止条例違反、ストーカー規制法違反。

 行為は極めて悪質で反省の意も無し、と判断され、求刑通り執行猶予無しの懲役7年の実刑判決。


 この男が行ったことは、簡潔に述べるなら『他人の家に4年6カ月住み続けた』である。

 だが、私はこの事件は決して風化させてはならないと思っている。

 だから、荒井が出所したタイミングで独占インタビューを申し込み、それを記事として世に出すことに躊躇いは無かった。



「住んでた場所? ありきたりですよ。屋根裏です。意外と見つからないんですよね、あそこ。掃除して、毛布の一枚でも持ち込めば快適に過ごせます」

「やったこと、ね。まぁ、色々……イタズラと観察。落書きとか、勝手に冷蔵庫の中身を失敬したりとか……虫を飲み物の中に入れたりとか、シャンプーのボトルに×××入れたり、歯ブラシ舐めたり、アソコの毛をベッドにばらまいたり。あいつには直接的に手は出してません。でも、面白いんですよ。手に取るように狼狽していくのがわかります。最終的には家にほとんどよりつかなくなっちゃったんで、つまらなかったですね」

「理由は復讐です。あいつは俺の人生をむちゃくちゃにした。だから、俺はあいつの人生をむちゃくちゃにした。単純でしょ? 心? 痛みませんよ。当然の報いなんで」

「あいつは俺の影に怯えて暮らすんです。これからの人生全部ね。殺すより、そっちの方が遥かに気分がいい」

「他の人って、なんで、憎い相手を殺しちゃうんですかね。もったいない」

「単純に、殺すと最低15年はムショに入るでしょ? 最悪死刑だし。でも、イタズラするだけなら、どれだけ悪質なことをしても、ほら、10年以内に出てこれる。世間的にも死者もいない事件なんてすぐ忘れる。よくアンタ、俺の事覚えてたね」

「気分も、殺しちゃうと楽しめるの一瞬だし。精神ぐちゃぐちゃに追い詰めた方が、一生楽しめる。俺はこれからの人生が楽しみでしょうがないよ。出所したし、あいつに手紙の一つでも出そうかな……はは」



 荒井は饒舌にインタビューに応じた。

 吐き気を催すような悪意とは身近にあり、それは現代においては防ぎようがないのだ、と荒井の純粋な瞳を見て、私は思わざるを得なかった。


【屋根裏の悪意 おわり】

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