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5.夕見原学園高等部3年Aクラス

「み、み……見鏡雅です」


「れ、麗兎。なんだあの美少女は」


「聞こえなかったのか馬鹿。見鏡雅だって言ってんだろ」


「そうか。見鏡雅か」


 歓迎会に集まったのはAクラス全員プラス見鏡、計6名。

 俺こと氷狼麗兎、見鏡雅、空見蒼衣、藤風紅音、水流京也みずながれ きょうや時田海斗ときた かいと

 水流みずながれことスイリュウは俺の言うことに疑問も持たず納得していた。

 馬鹿……なわけではない。大馬鹿野郎である。


「スイリュウと海斗は初めましてになるな。俺から紹介しよう。こっちの金髪アホ面が水流京也、霊威水猫、Aランク。通称スイリュウ。んで、こっちの強面坊主が時田海斗、霊威闇鬼、Sランク」


「よろしくゥ! 雅ちゃん!」


「……」


 まぁ予想通りの反応というかな。

 スイリュウはお喋りが過ぎる。

 海斗は無口ではないが、無駄口は叩かない。


「見鏡雅。霊威光龍、Sランク。実際に剣を交えて戦ったわけじゃないが、相当強いらしい」


「ほう?」


 強者は力を求めるものである。

 時田海斗は言ってしまえば戦闘狂だ。常に戦いを欲し、強者を求める。彼より強い学生は空見蒼衣を除いて他にいない。学園No.2の実力者。

 暁市には4つの霊威学園があるが、暁市内の学生でトップ5は夕見原高等部3年Aクラスの5人である。

 相性はあれど、強い順番に、蒼衣、海斗、俺、紅音、スイリュウ。


 そしてそこに突然やってきたバランスブレイカー見鏡雅。それには海斗も口を開かざるを得ない。


「ダメだよ海斗。雅は転校してきたばかりなんだから、いきなり霊戦なんで申し込まないでよね?」


 それを見かねた蒼衣。予め釘をさすのは流石生徒会長。学園の平穏が守られているのは蒼衣のおかげだと常々実感する。


「そんな規則はない。互いの同意とアリーナの使用許可さえあれば、問題はないはずだ」


 そして学園の平穏をぶっ壊すのはこの時田海斗だと重々理解できた。


「もう! 霊戦はその内授業で出来るでしょ!」


「……」


 海斗はそれ以上口を開くことはなかったが、虎視眈々と見鏡との霊戦の機会を伺うだろう。

 ルールは守る男だが、遠慮を知らない。何の躊躇もなく霊戦を申し込みアリーナの申請を堂々と行うだろう。無論、そんなことが実現するはずはない。


「でも霊戦したくないって言ったらウソになるよね」


「わたしも雅と戦いた~い!」


「ま、明日は霊戦の授業もあるし誰か一人は戦えるだろう」


 あの突発的な街中での手合いと公式戦では戦い方はまるで異なる。実際まともに戦って勝てるとは断言できないが、俺は初戦に限って見鏡雅を倒せる秘策があった。


 なんにせよ最初に戦える奴は役得だな。


「授業ではクラスメイト同士で霊戦をすると聞きましたが、本当にみなさんお互いに戦っているのですか?」


「うん! 戦績で順位付けして武暁霊祭に向けてみんな精進してるんだよっ」


 紅音が真っ先に答えた。


「武暁霊祭は5月にあるイベントなんだけど、暁市内の4つの霊威学園で交流戦をするイベントだよ。二人一組でチームを組むんだ。2on2で戦うの。各校で8チームまでだから予選はやるんだけど、私たちS/Aクラスは問答無用で本戦行き! 私たちの代は圧倒的に強いからで1年生の時も2年生の時も優勝しちゃってるんだよ!」


「俺たちは第二次戦争遺児だぜ? 強くて当たり前よ!」


「第二次……なに?」


 スイリュウの言葉に見鏡は困惑。この様子を見て答えない世話焼きの蒼衣ではない。すかさずフォローに入る。


「第二次戦争遺児。この世界は何でかわからんが、世界の霊力量を一定に保つ性質があるらしくて、戦争とかで威者がいっぱい死ぬとそれを補うように、強力な霊威を持つ子どもたちが生まれるんだよ。私たちは18年前の戦争の影響を受けてるから強い霊威が多い、ってお話。第一次は40年前の人たちね」


「そう……なんだ」


 光龍はイギリス固有の霊威である……はずだった。40年前の戦争で奪ってきた霊威が今見鏡に憑いている。18年前の戦争で前任者が死んだのは自明の理である。それが何故イギリスではなく日本の見鏡雅に憑いたのかは謎だが……。


 特に言及はせず、話を逸らす。


「とにかく俺たちの代は強い。ただ見鏡が加わったことでチーム分けも例年と違うことになる」


「た~しかに! 海斗の一人出場伝説もこれで終わりになるかも!? ぼっち卒業だね! おめでとう、か~いと!」


「俺は俺より弱い奴とは組まない」


 茶化してきた紅音を海斗は軽くあしらった。


 改めて言うが海斗は夕見原No2である。つまるところ蒼衣と組まなければ一人で出るということだ。

 例年の組み合わせとして俺と蒼衣、スイリュウと紅音だ。そして海斗は2年連続で頑なに一人で出ている。

 ちなみに昨年は決勝まで海斗は残り、一人で準優勝という偉業を成し遂げた。要は一人でも威者二人を下せる実力者なので、割と受けいられていた。


「今年はどうなるんだぁ? 海斗が一人ならだれか一人はBクラスの奴と組むか一人で出ないといけないのか!?」


「なんで2、2、1、1なんだよ!! 普通にAクラスで2、2、2だろ!」


「じゃあ俺と紅音は確定として……海斗が組むのは蒼衣? じゃあ麗兎と雅ちゃんが……があああああああああ!?」


 スイリュウは勝手に自己解決して泡を吹き倒れた。脳が破壊された奇声と頭を床にぶつけた鈍い音が響く。スイリュウの奇行は然程珍しいことではないので見鏡を除く全員がスルーしていた。

 滅茶苦茶小さい声で「だいじょうぶですか……?」と聞こえた。


「え~蒼衣れーとペア解消なんてやだよぉ~。二年連続の優勝コンビだよ~? 今年もみんなが二人に期待してるんだからさ~」


「スイリュウの妄想でまだ何も決まってないわ! 海斗が見鏡より強い前提だが、去年のコンビを崩さないなら海斗と見鏡、俺と蒼衣、スイリュウと紅音か」


「「うーん」」


 俺と蒼衣が同時に唸った。考えていることは間違いなく同じである。顔を見合わせ、私が行くと蒼衣が表情で伝えてきた。


「雅を海斗を組ませるくらいなら私が海斗と組むよ。知り合って1か月で海斗と一緒は流石に無理があるね! うん! いろいろ難がありすぎ!」


「俺が海斗より弱い以上、やむを得ない」


「仮だけど、これで決定かな。私と海斗、スイリュウと紅音、麗兎と雅。明日以降の霊戦授業でもしかしたら変わるかもしれないけど、それで行こう!」

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