表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/10

プロローグ

プロローグはセリフのみの特殊な書き方をしています。

キャスター:

「今日の議題は霊威れいい差別についてです。

 近年、威者いしゃに対する待遇が見直されています。

 高ランクの威者であっても一般の学校に通えることができ、通常の人間と同じ生活が出来るようになりました。

 Aランクまでの威者であれば、職業選択の自由も現在は守られています

 しかし、学校や職場では威者に対する差別行為が平然と行われているのが現状です。

 これまでは威者専用の学校、威者の適正にあった仕事であったため、このようなことはあまり起きていませんでした。

 この見直しは果たして必要であったのか、疑問視されている方々も多いです。

 さて本日は、この議題についてお話をするお三方をお呼びしました。

 霊威社会学の専門家、朝日丘あさひおか大学 霊威社会学部 霊威社会学科 教授、狐之宮このみやけいさん。

 威者と人間の平等を掲げるThe Same Human代表、水雪みずゆき香奈枝かなえさん。

 俳優でありAランクの威者でもある鶴鳴つるなきりょうさん。

 以上お三方でこの問題について考えていきます。

 さて、まずは狐之宮さん。どうしてこのような問題が起きてしまうのでしょうか?」



狐之宮桂:

「そうですね。現代になってから威者と人間の平等を叫ばれるようになり、このような見直しが実施されたのですが

 やはり一般の方々が威者に対する理解が足りていないのが一番の原因だと思われます。

 Dランクの威者であればこのような問題は小学校を除いてあまりないのですが、Cランク以上の威者が課題でしょう。

 実際、鶴鳴さんのようなAランク以上の霊威は生存、主に戦いにおいて相手を殺すために使われる力であることが多いです。

 そのため、彼らは常に人を殺せる凶器を持ち歩いているわけであり、それを恐れている方々が非常に多い。

 しかし実際に威者が殺意を持って殺人、傷害などの事件を犯した割合は人間より遥かに低い。

 威者というのは個人差はあれど、通常の人間より精神的にも肉体的にも非常に強靭です。加えて社会的にも地位が高いことが多く、余裕を持っている。政府からの補助も多いですしね。

 なので余程のことがない限り、彼らが意図して相手を傷つけることはありませんし、普通の人間以上にその確率は少ないことが知られていません。

 見直しは少しずつ行われていますが、そもそもまだ見直しをすべきでないと思われます。

 威者と人間の平等を訴える声が顕著になり始めて、まだ間もないですから」



鶴鳴了:

「僕もそう思います。

 俳優という仕事柄、多くの人に関わるのですが、疎外感を覚えることが多いです。芸能界では威者が他の業種に比べて多くいますが、僕のようなAランク霊威はほとんといません。

 僕の霊威は狐之宮先生が仰った通り相手を殺すための力と言っても過言ではありません。

 芸能界では一芸できるような霊威がほとんどなので、戦闘に特化の霊威を持つ僕は威者の中でもアウェーです。

 でも僕は霊戦の訓練以外で相手を傷つけたことは一度もありませんし、怒ったとしても、そんな気になったことすらないです。

 なのに疎外されてしまう。

 俳優になりたかったので、職業の自由は非常に有難いものなのですが、現場では環境の整備がされていないのが現状だと思います」



キャスター:

「なるほど。お二人ともまだ早計であったと考えているわけですね。

 法の成立より人々の意識や環境整備がまだ進んでいないとのことです。

 水雪さんはThe Same Humanの代表としてこうした平等に向けた活動を積極的に行っていましたが、お二人の意見を聞いてどう思いましたか?」



水雪香奈枝:

「私は特に早いとは思いませんね

威者も一人の人間なのですから、選択の自由はそもそも当たり前のことなのです。

今までの制度がおかしかったに過ぎません。実際制度が変われば、後は慣れます。

意識も環境も時間が解決してくれる問題だと私は思っていますね」



狐之宮桂:

「これは専門家としてでなく、私個人の意見なのですが、職業選択の自由は私も賛成です。しかし学校に関しては難しい課題が多く、変えるべきではなかったと思いますね。

 威者は幼いうちに霊威の使い方を専門的に学ぶ必要があります。

 こればっかりは普通の学校ではやはり難しいです。

 加えて特異な存在なため、いじめの対象にもなりやすい。

 孤独は威者にとって最大の毒です。それを助長させるような環境に置くことは可能な限り避けるべきです。」



水雪香奈枝:

「使いたくもない力を教える必要なんてないと思いますよ。

 普通の学校で一生徒として学べば、きっと幸せになれるはずです。

 同じ人間として平等に教育を施すことは当然のことじゃないですか?」



狐之宮桂:

「……あなたは霊威についてあまり詳しくないのですか?

 力の使い方を学ばなければ、それをコントロールする手段もわからないんですよ。

 ついカッとなって意図しないレベルの力が発揮されて人を殺してしまうかもしれない。

 その危険性を知った上でそんなことが言えているんですか?」



鶴鳴了:

「僕も霊威の使い方を知るのは重要なことだと思います。

 普通に生きる上でも、霊威の扱い方を知るだけで相当楽が出来ます。

 走ったり、重いものを持ったり、頭を使ったり、あらゆる面で霊威は有利に働きます。

 戦い方を覚えるのではなく、使い方を覚えるのは威者には必須だと感じますね」



水雪香奈枝:

「いや違うんですよ。

 そもそも霊威の力を使うこと自体間違っているんです。

 普通の人間として生きる道として、霊威に頼ること自体よくないと思うんですよ。」



狐之宮桂:

「あなたの話を聞いていると、まるで霊威自体が悪の存在かのように聞こえます。

 使える力は使ってあげることこそが合理的で、健全で、威者としての役割や意義を果たせます。

 そうは思いませんか?」



水雪香奈枝:

「平等のためには不要なものだと思いますけどね。

 あんな戦争のために使われる力をそもそも持つべきではないのです。

 世界一の霊威大国である日本は国際平和のために極力武力を抑える必要があると思います。

 これから生まれてくる威者たちに二度と戦争という悲しい出来事に巻き込まれて欲しくないのです。

 戦闘訓練をしなければ無理に戦場へ出る必要もないです」



狐之宮桂:

「今、日本が平和なのは高ランクの霊威たちが抑止力になっているおかげなんですよ!?

 武力を持たなくなれば、新たな犠牲を生みます。

 日本は世界でもダントツで霊威の質も良く量も多い。

 これほど圧倒的な霊威の力があるからこその平和であることをあなたは理解出来ていますか?

 正直あなたの言っていることはまったく筋が通っていません」



鶴鳴了:

「狐之宮さんの言いたいことはわかりますが、本題とズレ始めています。

 今一度、整理しますと狐之宮さんは霊威の力を活かすことが威者にとって有意義なことであると仰っていました。

 水雪さんは一貫して霊威は不要、普通の人として生活すべきという主張をしていらっしゃいます。

 これは極めて個人的な意見で、威者を代表して言うわけではないことを前置きしておきます。

 私は狐之宮さんの意見に賛成です。

 霊威という神様から貰ったギフトを何も使わずに過ごすなんて宝の持ち腐れも良い所だと思います。

言ってしまえばただの才能なんですよ。

 数学な得意、容姿が良い、面白い話が出来る、霊威が使える、これらに違いはありません。

 それぞれが得意な才能で何かをすることは人間として自然なことだと思いませんか?」



水雪香奈枝:

「でもそんな野蛮な力を使うなんて……」



鶴鳴了:

「そんなこと言ったら現代兵器は数学の塊ですよ。

 でも水雪さんは数学を否定しませんよね?

 水雪さんは霊威を戦争の道具だと吹聴していましたが、身近にいる警察だって威者がいなければ成り立たないレベルで霊威頼りです。

 我々の人間社会というのは常に霊威と共に成長してきたものです。

 霊威の存在そのものを否定するのは人間の歴史を冒涜していると思いますし、霊威ありきの現代社会が成り立たなくなってしまいます。

 そういった現状に見て見ぬふりをしていては真の平等は訪れないと思いますよ?」



水雪香奈枝:

「……」



キャスター:

「議論の途中ですが、ここでいったんCMになります」

ブックマーク、評価、感想、レビュー、いいね等していただけると死ぬほど嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ