10億円の報酬【3】
車に乗せられ、到着したのは高層ビルだった。
エントランスはかなり厳重なセキュリティがかかっており、容易に外部の者は入れない。
窓のない部屋を案内され、俺は所持品を全てチェックされた。
身分証明は偽造したものなので、その辺りは問題なかった。
それこそ、俺はアメリカの護衛機関に勤めていると偽造していた。
ナイフについても「まあ、その仕事なら所持はしているか」と納得された。
結果的に、俺は怪しいものではないと判断された。
この部屋は、テーブルと椅子が置かれているくらいだった。
監視カメラは天井四隅に設置されている。
後は空気清浄機が置かれていたが、見たところ変わった様子はない。
そこが余計怪しいが、この状況で俺に危険を及ぼすものであれば美槻も巻き添いを食らう事になるため、その線は薄い。
「これで分かっただろう。この人は危険人物ではないんだ」
美槻がスーツの男に説明した。
「彼には、僕の事をまだ詳細説明出来てないから、二人で話させてもらえないかな。いきなりこんなことになって、彼も驚いていると思うし。彼とは信頼関係を築きたいから盗聴もやめてほしい」
驚くというか、理解が出来ないの間違いだな。
「いいでしょう。ただし監視カメラは設置させて頂く」
俺と美槻を残し、スーツの男たちは部屋から出ていった。
「す、すみません。こんなとこまで来てもらって。ジャックさん、でしたっけ?」
「身分証明上はそれで通している。それで、状況を説明してもらおうか」
「はい……。まず、彼らは僕の会社が雇っている警護組織の人たちなんです」
ええとですね、と美槻は続けた。
「自分で言うのもなんですが、僕は記憶力と仕事の要領が良いんです。有名な企業で平社員として普通に働いていたんですが、仕事の早さから情報処理関係を任されるようになり、いつの間にか明るみに出てはいけない機密事項にまで触れてしまった。その情報が僕の頭にも記憶されているんです。そんな人材だから、当社の機密事項の掌握と僕の業務処理能力を活かした経営促進のために他社からスカウトがかかるようになり、次第に僕の取り合いになってきました。僕がどこかに雇われると、それ以外の会社は僕の存在が邪魔になる。我が社は他社に情報漏洩する事になりかねないし、僕がいなくなった後の穴埋めがきかない。そうなると他社としては、いっそ僕を殺すか拉致して働かせるかになるんです」
監視カメラに映らないように、やや顔を伏せて話す美槻は疲れた表情を浮かべた。
「そんな僕は四六時中、命を狙われる状況下にあるため、我が社から盗聴器やカメラ、GPSでの監視をされ、プライバシーもなにもない環境になりました。パソコンや携帯電話すら中身をチェックをされる。それならばボディガードをつけたらどうかとの意見もありましたが、それだと逆に目立って狙われやすくなるから却下になってしまい……。そんな事情を知らずに僕に関わってしまった人は、僕の監視機器を通して身元を調べられたり、存在が邪魔になりそうな人は組織員に因縁をつけられたりする。目の前で関係ない人が自分のせいで次々と処理されるのは苦痛でしたよ。でも次第にそれに慣れていく自分もいて嫌になって。実際に命を狙ってきた暗殺者もいましたが、監視機器や組織員によりすぐに捕まり、組織員に秘密裏に殺されました。その状況も目の当たりにしてきたんです」
美槻はため息をついた。