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殺せない依頼人  作者: 修壱
2/13

10億円の報酬【2】

その日の夜、俺は埠頭のコンテナに隠れていた。

この時間帯は、埠頭には誰もいない。

しばらくすると、ターゲットの部長が姿を現した。

俺は狙撃銃を構え、狙いを定めた。



引き金を引く瞬間、部長がこちらを見た。

バレたか。だが、もう遅い。

俺は速やかに頭を狙撃した。

見事的中し、部長はその場に倒れた。



さて、死体を海に捨てなければ。

俺は念のために周囲に気を付けながら部長のもとに行き、死体に重りをつけて沈めた。

あとは現場から離れて依頼人に報告……。


ジャリ、と足音が聞こえた。

振り向くと、一人の若い男が立っていた。

しまった。見られた。

人の気配なんてなかったのに。

それに今の時間は人の出入りはないはず。

とにかく、コイツを口封じに殺すしかない。

俺はナイフを構えて一気に距離を詰めようとした。

その瞬間、男は自身に取り付けられていた小さな機器を外し、踏みつけて壊した。

その行動が怪しかったので、俺は動きを止めた。

「あなた……暗殺者ですよね。お願いです!僕を殺してください!お金は払いますから」

男は携帯電話を取り出し、俺に尋ねた。

「いくら払えばいいですか?10億円までなら問題なく払えます」

「何者だ?さっきの機器は何だ」

「あまり話をする時間がないんです。ほら、口座を教えてください」

胡散臭いと思ったが、俺には依頼を拒否する理由もない。

振込先を伝えると、男は携帯電話を操作して「出来ました」と言った。

確認すると、確かに10億円振り込まれている。ドルにしとけよ。

「さあ、僕を早く殺してください」

懇願するように男がすがってきた。

不気味に思いながらも、俺はナイフを握り直し、男の心臓めがけて振り下ろした。

その時、複数の足音が遠くから聞こえてきた。

「あ!もうバレた!ちょっと待って」

突き刺す寸前で、男は制止した。

どういう状況だ?

よく分からないが、ここは現場を離れた方がよい。

俺は逃げ出そうとしたが、男が俺をがっしりと捕まえた。

「お前、最初からこれが目的か?俺を捕まえようと……」

「違うんです!今逃げたら、貴方が殺されちゃう。ここにいて話を合わせてください」

いや、ここにいるからこそ捕まるだろ。俺は部長を殺しているんだから。

それだと依頼人にも危険が及ぶ。

全員一度に殺すか?だが、数が多いと分が悪い。



この男は、自分に話を合わせろと言っている。

俺を捕まえる気はないらしい。嘘を言っている様子もない感じがする。

それならば依頼人も守られるか?

俺はこの男の言うことを信用し、狙撃銃を海に捨てた。

銃を持っていたら確実に怪しまれるが、ナイフ程度ならば、護身用に所持していたといっても通用するだろう。

そうこうしているうちに、スーツを着た男たち数人が駆けつけた。

「美槻様!大丈夫ですか?カメラと盗聴器が壊されましたよ」

「その男は何者ですか?カメラが壊される前に姿は押さえてますが」

男たちは俺を取り囲んだ。

シークレットサービスの類か。

「や、やめてくれ!この人は新しい護衛だ。さっき雇ったんだ」

……どういうことだ?

「では、盗聴器とカメラが壊されたのは何故?」

「こんな埠頭に、その男がいたのは何故?そもそもあなたもどうして此処に」

美槻という依頼人は、混乱した様子で考え、口を開いた。

「彼は、その、休暇で観光しているところでここに迷い込んだんだ。僕はちょっと、下の方が我慢の限界で慌てて海に」

そんな話を真顔で聞くスーツの男たち。プロだな。

「そこで彼に出会った。彼は凄腕の用心棒になれる。僕ならそれくらい見分けがつく。僕に盗聴器とカメラが仕込まれていると思い、身の安全を考えてすぐに壊してくれたんだ」

「……まずはその男の身元を調査する必要があります。一緒に来てください」

スーツの男たちは、ここまでの移動に使用した車へ、俺と美槻を案内した。

車までの移動も、俺たちの前、両側、後ろと護衛した状態での移動だった。




何故、これほど美槻を守るのか。

美槻は何者か。

事情を確認したいが、スーツの男が厳重に護衛をしているため、会話すら難しい。

それに美槻に盗聴器を仕掛けるほどだ。隙をみて会話しても、それが録音されている恐れもある。

そもそも、何故俺を見つけることが出来たのか。

薄々勘付いていたが、部長殺害の依頼人と美槻は手を組んでいる可能性が高い。

嵌められたか。

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