OLサツキ、初級編二日目の昼まではまだ遠い
固そうなイボが色とりどりに光っては変わる不思議な大蜥蜴は、爬虫類らしく時折細い舌を出してこちらを見つめている。
「アール! 最速でいくわよ!」
「合点承知!」
二人は同時に剣を抜くと、アイコンタクトのみで交互に攻撃を繰り出す。さすが一緒にドラゴンを倒しただけのことはあった。目を追うのが精一杯の剣技に、サツキはいつの間にか興奮していた。
いけ! そこよ! 右手!
握り締める拳には汗をかいていた。これだけ連続攻撃を繰り出していると、サツキは魔法攻撃が出来ない。下手すると当たって怪我をさせてしまいかねない。
だが、息をつく間もなく切り込んでいっているのに、なかなか倒せない様だ。
「ほらー! 深さが足りないよ! そろそろ赤が増えてきたからさっさと終わらせて!」
ユラが声を掛ける。ユラの言う通り、身体のイボが殆ど赤に変わってきている。
「ユラ、赤に変わるとどうなるの?」
「増殖する」
ユラの答えはシンプルだった。サツキは慌てて視線を蜥蜴に戻す。あ、全部赤になった。
その途端。蜥蜴の輪郭が歪んだかと思うと、蜥蜴が二匹に増えた。また七色にチカチカと光り始める。
「あーあ、増えちゃった。あいつらアルバ蜥蜴の倒し方知らないのかよ」
「えっ特別な倒し方があるの?」
「初級ダンジョンだから初級魔法使うんだけどさ」
腕組みなんぞして笑って見ている。サツキは思わず怒鳴った。
「だったら先に言いなさいよ!」
「わお。おっかねえの」
ユラは少し驚いた様だった。でも今はどうだっていい。ほら、また段々赤が増えてきたじゃないか。何でこいつは笑ってられるんだろう?
「教えて! 何の呪文よ!」
サツキは杖を構えた。
「え、あれだよ、フリーズ。リアムが俺達にかけたやつ」
「ウルスラ! アール! どいて!」
二人の反応は早かった。一瞬で出来た隙間に魔法を捻じ込む。
「フリーズ!」
一匹が固まった。もう一度、今度は狙いを定めて。
「当たれええ! フリーズ!」
当たった! サツキは横で拍手をしているユラに向いた。杖と共に。
「え、ちょっ」
「フリーズ!!」
ユラが人を馬鹿にした笑顔を浮かべた状態で固まった。よし。
訳が分からないのだろう、唖然としてサツキを見ている二人にサツキが叫んだ。
「フリーズが掛かってる今がチャンスよ! やっちゃって!」
「! 分かった!」
「あ! そういうことか! これで増えないもんな!」
アールも分かったらしい。二人が攻撃を再開した。サツキは魔導書をパラパラとめくる。確か昨日見た。探せ、攻撃力アップの魔法を。
「あった! 『広範囲に掛かる強化魔法です。敵に掛けない様に気をつけましょう』……アグレッサ!!」
杖が赤く光ると、ウルスラとアール、ついでにサツキとユラにも赤い閃光が上から注ぐ。
「うおお! 何か力が湧いてきたあっ!」
「一人一匹、一気に行くわよ!」
「おう!」
そして。
二人は無事に増殖蜥蜴のアルバ蜥蜴を倒したのだった。
次回はリアムバージョン。




