OLサツキ、初級編二日目の朝
ウルスラの朝は、土下座から始まった。
「そ、そんなに反省しなくても、もうしなければいいから」
サツキが慌ててウルスラの肩を叩くと、ウルスラがずさささっと器用にそのまま後ろへと下がった。
「弁解の余地もないわ! いくら私がサツキとうふふな関係になれたらいいなとか夢想してるからって、やっていいことと悪いことの区別を付けないといけないのが見習い勇者に課せられた責務!」
二箇所程つっこみたい所があったが、さてどちらからしようか。サツキは悩んだ。
というか、うふふな関係ってどういうこと? リアムの中身がサツキという女性なのはウルスラだってよく分かっている筈だ。
それに、見習い勇者程度に課せられた責務って、あ、それは口に出してはいけないかもしれない。
でもそろそろ、ちゃんとパーティーの皆ときちんと話し合う時が来ているのかもしれない。ただ流されてこのままアールとユラ、もしかしたらウルスラにも狙われ続けていたら、いい冒険なんて出来やしないだろう。
「あのウルスラ、この先ダンジョンを潜って行く前に、皆がどういうつもりなのかはっきりしておきたい」
「どういうつもりって?」
ようやくウルスラが顔を上げた。
「リアムと私のこと、それと皆との関係」
「サツキ……」
サツキの社会人生活は、ひたすら惰性と諦観で占められていた。向き合うことから逃げ続けていたのだ。
原因ははっきりしている。父だ。
サツキの家は父子家庭だった。母はサツキが小学生の頃に離婚、気弱な父は、文句一つ言うことなくそれを受け入れた。
サツキが引っ込み思案なのに身体の成長だけ早く戸惑っていたのに、その時期に一番頼れる存在の母親が不在。そして問題に気付いてはいただろうが、それをどうしていいか分からずそのままにしてしまった負い目。
その所為だろうか、サツキのうまくいかない就職活動に、つてのつてを辿って紹介されたのが今の職場だった。その時の、父のほっとした表情が忘れられない。
ああ、この先嫌なことがあっても我慢しなければな、そう思ってしまった。それはサツキにとって枷であり、同時に逃げだった。
うまくいかなくても、それは全て父の所為だと。
でも、ここには父はいない。縛られ続けた環境も関係も、もうどこにもない。
ならば。
自分で、自分が望む方向に持っていかないといけない。
「私は、皆とこの先も一緒に楽しくパーティーを組んでいきたいの」
サツキという異分子が入ったことで、ドラゴンまで倒せたパーティーがぐしゃぐしゃにはなって欲しくなかった。
「分かった。皆を集めよう」
ウルスラが頷いた。
次回はリアムバージョン。




