OLリアムと魔術士サツキのクロスオーバー
祐介が退院して暫くの後、警察から連絡が入った。羽田の状況についてだ。
これまでの余罪も全て洗いざらい話したらしく、祐介に対する暴行罪に傷害罪、リアムに対する強制わいせつ未遂罪だけでなく、ユメと久住社長に対する恐喝罪も認めたらしい。そのお陰でユメも度々警察に聴取された様だったが、本人の意思ではなかったこと、寝たきりの弟がいたことに対する情状酌量、及び被害者の久住社長とすでに和解していることなどから、書類送検なるものもなかったそうだ。
羽田は繰り返し「化け物が、化け物が」と口走り、まともな精神状態ではないと判断され、警察病院で現在は過ごしているらしい。祐介曰く、これから検察官の取り調べが始まり、刑事裁判なるものがその後に続く為、罪と罰が確定するのにはまだまだ日数がかかるらしかった。
「ちょっとやり過ぎたか?」
リアムがやや反省気味にそう尋ねると、祐介はきっぱりと否定した。
「リアムの一番最初は僕がもらうって決めてるんだから、あれは当然の報いです」
「い、一番……」
すっかり傷も治った祐介は、宣言通りサクサクとサツキの父親に連絡をつけ、いよいよ明日は顔合わせの日だ。リアムは正直何をどうしたらいいかさっぱりだったので、祐介が進めてくれて助かったが、やや急いている気がしなくもない。傷跡が残っているのでヒールライトをかけようかと提案したが、「お義父さんにこの傷を見せようかと思って」とにこにこ笑うので、それ以上は何も言わないことにした。
何が何でもリアムと結婚する為には、自分の傷すら説得の材料にするその勢い。ある意味天晴な心意気である。ここまで突き抜けるといっそ清々しい。
祐介は、事あるごとに婚約指輪のペアリングなるものを眺めては、口元を緩めている。リアムが華美なものを嫌ったので、少しゴツゴツとした指輪である。
「早く勇気を出してね」
「お前はまたすぐそういうことを……」
「だって待ちくたびれたもんね」
「……」
リアムは真っ赤になって黙り込んでしまった。そう、祐介から度々誘われてはいたが、どうしても勇気が出ずに今も二人は清い関係のままなのである。考えるだけで顔から火が出そうである。このままだと結婚の方が先になるんじゃないの、と祐介が少しギラギラした眼差しで言っていた。
祐介が、黙ってしまったリアムを抱き寄せ額にキスをしたその時。
辺りがフッと突然暗くなった。
「こ、これは!?」
「リアム!」
祐介は咄嗟にリアムを腕の中に庇った。
「祐介、く、苦しい」
「絶対離さない!」
祐介の必死の形相に、こんな状況だというのにリアムの心の中は愛しさで溢れ返ってしまい、身を捩って祐介の口にキスをした。と、祐介の肩の力が少し抜け、祐介がリアムに応える。
すると、男の声が言った。
「あっ! 拙いタイミングだった!?」
少し低い耳慣れた声だが、懐かしい。リアムが目を開けると、先程まで暗闇だった空間が渦の様にうねっており、そこにいたのは。
「……サツキ!?」
「あれか、噂のヤマギシユウスケは。やっぱりそいつだったな!」
魔術士リアムの姿のサツキの横にくっつく様にして立っているのは、ユラだった。よく見ると、サツキの腰に手が回されている。
「ユラ! やはりお前だったか!」
すると、ユラはにやりと笑うと軽く手を上げて挨拶をした。
「よおリアム。元気そうだな!」
祐介はリアムを腕に抱いたまま呆然とその様子を見ていたが、突然納得した様に言った。
「ああ! 僧侶の人か!」
ユラについては何度か説明をしている。祐介の中でそれが目の前のユラと繋がったらしかった。
「しかし、これは一体……!?」
リアムが驚きに目を見開いていると、ユラが説明を始めた。
残りあと5話。




