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OLサツキのアルティメット編・ユラの追跡

挿絵(By みてみん)

 空は段々と黒味を帯びてきており、絵の具で染めた様な赤色が徐々に塗り潰されていく。


 人々は足早に家路に着き、家屋のあちこちからはユラの空っぽの胃を刺激する美味しそうな匂いが漂ってきていた。


「あの人、ダブルドラゴンスレイヤーのパーティーの人じゃない!?」

「キャー! こっち見て!」


 道行く女性達が黄色い声を上げたが、ユラは一切反応しなかった。ただひたすら、ギルドへ向かって走り続ける。


「どいてくれ!」

「危ねえなあおいっ」


 わいわいと幅広に歩いていた男達の隙間を通り抜けると、慣れ親しんだギルド前の広場が見え始めた。ギルドのドアの前で、ジュリアンが看板を閉まっているのが見える。


 ユラは大声でジュリアンを呼んだ。


「ジュリアン!!」


 大声で呼ばれたジュリアンは、辺りをキョロキョロと見回した後、全速力で走ってくるユラを発見し、――後ろへ下がった。ユラの眉間に皺が寄る。


「よお、ユラ。どうした?」


 ユラはわざとらしくもにこやかに挨拶をしてきたジュリアンの太い両腕を掴むと、ゼエゼエ言う息を整えてから尋ねた。詰問口調で。


「サツキはどこだ!?」

「サツキ? 誰だそりゃあ」


 チッとユラが舌打ちをすると、ジュリアンの頬が引き攣った。


「リアムだよ、リアム! 分かってんだろ!」


 ユラは、ジュリアンの顔をじっと見つめながら尋ねた。何一つ見落とさないという様に。


「リアム? さあて知らないな。そもそもなんで俺が知ってる(てい)になってるんだよ」


 すっとぼけるジュリアンを睨みつけながら、ユラがボソリと言った。


「嘘ついたってお見通しなんだよ……」

「は? 俺が嘘をつくわけ……」

「俺には全部見えてんだよ! しまったどうしようって顔してんのが、俺には見えるんだよ!」


 ユラがジュリアンを前後に揺すぶると、ジュリアンは明らかに動揺した表情に変わった。


「え? 見えてる? お前何言って」

「俺の能力だよ! ソウル・アイズ! ジュリアンならその意味は知ってんだろ!」

「ソウル・アイズってお前そりゃあれじゃねえか……」


 ジュリアンはギルドマスターである。これまでの長年の経験から、様々な特殊能力を見聞きしてもいる立場だ。


「いつそんな能力が」

「最近だよ! 始めのドラゴンを倒した後! そんなことはどうでもいいから、リアムっていうかサツキがどこに言ったか教えてくれ!」


 ユラが必死に訴えるが、ジュリアンはそれには首を横に振った。


「確かに俺は知っちゃあいるが、言わねえ約束になっている。ギルドマスターが簡単に約束を反故にする訳にはいかねえんだよ、分かってくれ」


 諭す様に言うジュリアンをじっと目を細めて見つめていたユラだったが、やがてポツリと言った。


「……金か?」


 ジュリアンの表情は表面上は変わらなかったが、ユラにはバレる。ユラの片方の口の端が、上がった。


「バレバレなんだよ、ジュリアン」

「……恐ろしい能力だな」

「便利だぜ。嫌なものまで見えちまうけどな」


 それでもジュリアンは首を横に振り続けた。


「それでも言えねえよ。分かってくれ。ギルドマスターに信用がなくなっちゃあいけねえんだよ」

「いくらだ」

「は?」


 ユラはもう一度言った。


「サツキはいくら払った?」


 ユラの眼光の鋭さに、ジュリアンはゴクリと唾を呑み込んだ。


「要はそれを上回ればいいんだろ」

「……お前には払えねえよ」

「俺にはまだ未払いになってる二匹目のドラゴンの報酬があるだろ」

「だけど」


 ユラが、ニヤリと笑いつつ言った。


「サツキが払った金額に一割乗せた額を払うから、吐けよジュリアン」


 ジュリアンは、目を大きく見開いた。

次回はリアムバージョン。

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