表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

669/728

魔術師リアムのアルティメット編・最後の砦攻略、久住社長と早川ユメの続き3

挿絵(By みてみん)

 ユメに未練があるのか。


 祐介の言葉には、容赦がなかった。机に手を付いて立ち上がっている社長は、祐介を睨みつけている。だけど祐介も負けてはいなかった。自分の雇い主であろうが、今の祐介には関係ないらしい。これまで周りとはうまく立ち回る印象だった祐介は、始めの頃の印象とは違い、かなりはっきりと周りに意思を見せる様になってきている気がした。


「いくらなんでも、失礼じゃないか?」

「あなたの所為で僕の大事な彼女が危険な目に遭ってるんですよ。ちゃんと対処すると言ってからもう一週間以上経ってます。このまま話をしないで今度は夏休みですか? どこまで引き伸ばすつもりなんです?」


 なんと、祐介はユメに同情し怒っていたのではなく、リアムのことが心配で怒っていたらしい。


「ゆ、祐介? 今は私の話はいいぞ」

「よくないでしょ」


 祐介はリアムに一瞥をくれ、一言で片付けた。すぐに視線を社長に戻すと、祐介は社長と同じ様に机に両手を付いた。祐介の方が上背がある分、祐介の方が若干押している様に見える。ユメの話をしに来た筈なのに、いつの間にか祐介が会話を主導し始めていた。腐っても営業職である。


「だらだらと引き伸ばしている原因が、早川さんと別れることにあるんじゃないかと僕には思えたんですが、違いますか?」

「……いや、僕は」

「じゃあ、何故早川さんとの話し合いを後回しにしたんです?」

「……か、彼女は」


 社長が、腕組みをして不快げな表情を隠しもしないで立っているユメを見た。


「彼女は、仕事がすごくきぱきしてて」

「……え?」


 祐介がキョトンとした。


「仕事とプライベートはきっちり分けてくれるし、ちゃんと社長として立ててくれるし、彼女が来てからスケジュール管理とかは本当に楽になって、だからそのう……」


 ユメが素っ頓狂な声を出した。


「社長、私に辞めてほしくなくてぐじぐじされてたんですか!?」

「ぐ、ぐじぐじって……」


 社長が上目遣いで三人を見渡す。リアムが祐介を見ると、視線に気付いた祐介の眉が下がり、ふ、と笑った。よかった、そういうことかという表情だ。


「だって、別れ話をしたら辞めるのかな、と……。この会社、今結構波に乗ってきてるところだから、正直一人でも欠けると厳しい状況なんだ。羽田さんと話し合いをするにしても、ここまで暴力や脅迫をしていた以上、僕としてももう彼を庇いきることは出来ない。一気に二人辞めさせるのは、出来たら避けたい。……でも、羽田さんを簡単に首にすると、腹いせに麗子さんに何をするか分からないし」

「――え」


 三人が驚いた表情で社長を見ると、社長がさすがにむっとした表情になった。


「なんだ、その表情は」

「いや、麗子さんのことはどうでもいいのかと思ってました」


 祐介はやっぱり容赦がない。


 更に続けて畳み掛ける様に言った。


「でも資本金の問題もあるし」

「あのねえ!」


 社長が声を荒げた。


「設立当時だったらいざ知らず、今一千万なら僕だって用意出来るよ! お金の問題じゃないよ! 山岸くん、ちょっと僕の印象悪過ぎない!?」

「すみません、正直に言い過ぎました」


 祐介がさらっと言うと、ユメが手を叩いて笑い始めた。なんだ、この状況は。


 社長が大きな声で言った。


「僕は、麗子さんと別れたくないだけなんです!!」


 すると、社長室の扉の向こう側で、何かが当たる音がした。そして、ずるずると引きずる音も。


 四人は顔を見合わせると、扉の方を向いた。

次回はサツキバージョン。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ