OLサツキのアルティメット編・フレイのダンジョンの隠された通路の穴の先へ
アールは起き上がると、周りをキョロキョロと見回した。そして、サツキを見た。
「すっごい明るいから、外に出たのかと思ったよ」
「ごめん、思ったよりもかなり明るくなっちゃったの」
須藤さんが眩し過ぎて、直視出来ない状態になっている。でもどうやって暗くしたらいいのか分からない。
「ま、暗いよりはいっか!」
そう明るく言ってくれたのでサツキはほっとした。アールは立ち上がってぐぐぐっと伸びをすると、ストレッチを始めた。サツキがキョトンとして見ていると、アールが笑いながら教えてくれた。
「寝起きは身体が固まってるからな、急にバトルになっても動ける様に柔軟体操をしてるんだよ」
「ああ、成程」
「だって、この先は多分いきなりボス戦なんだろ?」
サツキは頷いてみせた。
「多分だけど、リアムの時の話を聞いてそうなんじゃないかと思ったの」
「リアムの時の話のどこからそんなことを思いついたんだ?」
アールはしっかりと足も伸ばしている。サツキもとりあえず真似て身体を伸ばし始めた。それにリアムはそれなりに年齢がいっているから、しっかり温めておかないといきなりアキレス腱断裂とかもあったりしたら怖いし。
「リアムが穴から出て来た時に、ドラゴンがリアムに狙いを変えた様なことを言ってたでしょ?」
「ん? ああ。ウルスラも俺も急に無視して、え? て思ったからよく覚えてるんだよ」
「それだよ。だって敵が目の前にいるのに、普通目を逸らす?」
「逸らさねえな」
「でしょ? とすると、こういった裏の通路を通って別の所から強いモンスターがやって来る、そしてドラゴンはリアムを挑戦者だと思って襲ったんじゃないかと思ったの」
アールは分かってるのか分かってないのか、うんうんとうなずきつつ「成程!」と笑っている。多分分かってないな、とサツキは思った。
「つまりどういうこと?」
ほらね、と言いたかったが、今日はそれを拾ってくれるユラが隣にいない。だからサツキはアールにも分かる様にちゃんと説明することにした。
「だからね、この穴の先がもしボスがいる場所に繋がっているんだとしたら、そこから私達が顔を出した瞬間、多分フレイのダンジョンのボスは私達がボスの座を奪いに来たと思って襲ってくるんじゃないかと思うのよ」
「ああ、そういうことか!」
分かってくれたらしい。よかった。
「だから、ずんずん進まないで、慎重に進んだ方がいいと思うの。それで、ボスのいる階が見えたら、こっそり様子を窺って何とかユラ達がボスと戦う前に合流したいの」
問題はどうやってユラ達とうまく合流するかだ。
すると、アールが尋ねてきた。
「なあサツキ、サツキって今大分強いんだろ?」
「え? あ、うん、何か追加能力で効果が嵩上げされてるみたいね」
「じゃあ初級魔法でも結構効くよな?」
「え? う、ど、どうだろう。でもそうね、集中すれば多分結構効くんじゃないかな」
アールの意図が分からない。サツキが戸惑っていると、アールがニカッと笑って非常に理の叶った提案をした。
「じゃあフリーズでボスを止めちゃってる間に俺達が穴から出ればいいんじゃね?」
「……おお!」
「背中を向けてる時を狙ってさ。要は穴から俺達が出るところを見られなきゃ大丈夫なんだろ?」
「いやあの、絶対って訳じゃないよ? これはあくまで推測だから。――でも、いい考えだね!」
「だろー? 俺だってたまにはいいこと言うんだぜ!」
こんなにアールが頼もしく見えたのは、今が初めてなサツキであった。
次回はリアムバージョン。




