魔術師リアム、初級編再開
インドカレー屋を出る時も、祐介がまずは顔を出し、辺りの様子を窺ってから表に出た。
「アリガト、マタネー」
人の良さそうな店員がわざわざ外に出てきて会釈をした。祐介が笑顔で会釈で返したので、成程そういうものなのか、とリアムは学んだ。
リアムの手を取ると、祐介が見下ろしつつ笑う。もうあの羽田はこの近辺にはいないと思ったのか、肩の力が抜けた祐介の顔だった。
「インフラ系はやったから、次は時間とか和暦とか日本の成り立ちとか世界の国とか、まあ俺も詳しくないけどその辺りを説明するね」
「何から何まで済まぬな」
「僕が楽しんでやってるから気にしないでいいよ。勉強にもなるし」
くす、と笑いながら祐介が言った。
「私が気負わぬ様にと気を使えるなんて、祐介は本当にいい男だ。自信を持て。な?」
「人に自信がないみたいな言い方……」
「どうした?」
「何でもありません」
リアムは首を傾げるが、祐介は微妙な笑みを浮かべるばかりだ。それにしても、と思う。
「いつまでも祐介に匿ってもらうのも忍びない。万が一に備え、抵抗出来る様身体を鍛えるから」
「そう?」
リアムはにこやかに頷いた。
「この胸の重みで肩が凝るのだ。それに姿勢も悪い。背筋が伸びているとそれだけで周りの印象も変わるしな」
「え、何、印象変わってどうしたいの」
何故そこでむっとする、祐介よ。
「羽田の様な種類の男は、大抵征服意欲が強いものだ。だからか弱く抵抗しなさそうな女子を組み敷こうと考えるのだろう」
「組み敷……」
リアムは続ける。
「サツキの見た目は弱々しい。姿勢の悪さは自信のなさにも見える。そういう者は狙われやすい」
「成程ね、納得」
ようやく祐介に笑顔が戻った。
「なので、今日から鍛えてみようと思う」
祐介が賛同した。
「うん、いいと思うよ。僕はそれには協力しようがないけど」
「いや、あるぞ」
「え?」
「腹筋の際足首を持ってもらいたい」
「……はい、喜んで」
祐介が目線を逸らす。どうしたのか。
「じゃあまあ夕方の買い出しまで、頑張ろうか」
「頼んだぞ祐介。しかし覚えることが沢山あって大変だな」
「サツキちゃんは飲み込み早いから」
「ふふ、嬉しいことを言う」
家に到着すると、祐介が辺りを再度確認する。祐介には苦労ばかりかけている。好んでやっているなど詭弁であろうが、その心根が嬉しい。リアムは、そんな祐介に出会えて本当に幸運だったのだと今は思えた。
鍵を開け中に入ると、リアムは祐介の聞き心地の良い声の説明に耳を傾け始めたのだった。
次回はサツキバージョン!




