OLサツキ、凹ませる
ウルスラの視線は、サツキの胸に釘付けになっていた。先程身につけたばかりのリアムの服は、リアムが高身長な所為もあり大分ぶかぶかだ。イルミナの魔法でサツキ本来の姿になったはいいが、服まではどうにもならない様で、結果として肩が出て胸の谷間がくっきりと見えていた。ズボンと下着も落ちかけている。
「やだ、恥ずかしい!」
いくら目の前にいるのが同性のウルスラだからといって、恥ずかしいことに変わりはない。サツキは急いでまずは上の服の裾を絞って固結びすると、今度はズボンのウエスト部分についていた紐をパンツの上からぎゅっと絞り、次いでズボンの裾をたくし上げた。
「えーと、『ミラージュ』!」
ブン、と音が鳴り、サツキの目の前に魔法で作られた鏡が現れた。そこに映るサツキ本来の姿。リアム自身に筋肉が付いており姿勢がいいからだろう、サツキも見たことがない位ピンと姿勢がよく、胸を張っていて堂々として見えた。姿勢一つでこれだけ印象が違うのか。そのことに、サツキは純粋に感動を覚えた。
鏡を見ていたサツキの横に、ウルスラがやって来た。ウルスラの方が背が高い。スラッとして格好いい。こういう身体だったら、サツキももっと堂々と生きてこれただろうか。敵わないことを願っても仕方ないことだが、サツキは羨ましくなってしまっていた。
すると、ウルスラはサツキが思っていたことと真逆なことを口にした。
「私もこれだけ出る所出てたら違ったのかなあ」
「ええ? 私、今ウルスラを見て格好よくていいなって思ってたよ!」
「え?」
「え?」
そして、二人で顔を見合わせ、ぷ、と吹き出した。
「ないものねだりだね」
「……うん」
「これがサツキ本来の姿かあ」
「うん。あまり好きじゃなかった。自信なくて、弱くて」
「サツキ……」
「ミラージュ・フィン!」
サツキは鏡を消すと、横に立つウルスラを見上げて笑った。
「でも、リアムさんが凄いから、私も頑張る」
「うう……なんていい子!」
ウルスラが目をうるうるさせ、サツキをぎゅっと抱き締めた。
「うわお、胸……!」
ウルスラが感動している。そこ、感動するとこか?
「いた、イタタタ」
ぎゅう、と押し付けられて痛い。この魔法は幻覚ではなく、変化魔法の様だ。解ける際はウエストを気を付けておかないと、戻った瞬間ぐえ、なんてなりかねないなと思った。
「サツキの胸を見てちょっと凹んだけど、私も頑張るわ!」
「あ、う、うん」
何を頑張るのかはいまいち分からなかったが、やる気が出たのならよかった。
「さあ、じゃあ術が解ける前に行きましょ!」
サツキの手を取り、ウルスラが微笑んだ。サツキは頷いてそれに応えると、呪文を口にした。
「フルールアレ! ウルスラの家へ!」
瞬間。二人の姿はその場から消え失せた。
次回はリアムバージョン。




