魔術師リアムの中級編四日目のサツキ宅
サツキの家に移動して、今度はリアムが支度をする番だ。
祐介曰く、会社は金曜日まで。よって今日行けば明日から二日間休みだ。木佐ちゃん殿に会えないのは少々寂しいが、今週もリアムの面倒を見るのに駆けずり回ってくれた祐介には、是非ともゆっくりと休んでもらいたかった。
いつもはベッドでうつ伏せになり待機している祐介だが、今日はスーツをもう着ているので玄関で待機している。スマホを片手に何やら熱心に見ていると思ったら、明日買う予定のコーヒーメーカーを調べているらしかった。
「あんまり大きいと邪魔になるよね。どこに置こうかな。僕の家のキッチンだと調味料置いてあるしなー」
祐介はそう言うと、中身がリアムになってから殆ど使われていないこの家の台所を見た。
「ここでいいか。空いてるもんね」
リアムは最後の難関、ストッキングを履きながら尋ねた。
「この家に置く気か?」
「だって使ってないでしょ、台所」
「いやまあそうだが、祐介が買うと言っている物を私の家に置くと、何だか買ってもらってしまった様に」
祐介は隙あらばリアムに何かを与えようとしている気がする。
「じゃあ飲みたい時に好きに来ていい?」
「当たり前だ」
今も割と好きな時に来ている気がするが、それについては意見を述べるのは控えた。
祐介が続ける。
「それに、サツキちゃんがいれてくれる珈琲も飲みたいな」
小さな呟きが玄関から聞こえてきた。
支度を終えたリアムは玄関に向かうと、玄関に座り込んでいた祐介の肩をポン、と叩いた。
「料理は結局祐介任せだしな。味噌汁の研究もまだまだ始めてもおらぬし、せめて珈琲を用意する位は勿論やらせてほしい」
「はは、言ってみるもんだね」
リアムはパンプスを履きつつ微笑みながら、祐介に言った。
「私はどうも鈍感らしくてな、細かいところまで気が回らん。なので、そうやって要望をきちんと口に出してもらえると助かる」
「まあ、大雑把だよね。思ったよりも大分」
「そうであろう?」
扉を開けると、そこには蒸し暑い朝の光。今日も暑くなりそうだ。
「綺麗好きなのがまだ救いだよね」
祐介がリアムの手に指を絡ませ握る。
「そこの境界線を超えると、師と同じになるからな」
「はは、お師匠さんって片付け出来ない人だったんだ?」
リアムは深く頷いた。
「研究熱心な性分故か、やたらと物を溜め込む収集癖があってな。亡くなった際、どうすべきか分からずまとめておいただけの物がまだ山の様にあった」
「研究者って感じだね」
「そうだな。今頃サツキが苦労しているかもしれん」
ふふ、と笑うと、二人は商店街の駅まで続く道を行くのであった。
次回はサツキバージョン。




