魔術師リアムの中級編四日目の寝不足
結局予想通り、祐介は、朝まで目を覚まさなかった。時折寝返りを打とうとする瞬間に這い出ようとすると、見ているかの様に腕で引き戻されてしまい、結局朝まで祐介のベッドで一緒に寝る羽目になった。
完全に寝不足である。
時折うとうととはしたが、寝ている時の祐介がどうも際どい部分に触れてくるので、恐らくわざとではない、それは分かるのだが、だがしかし本当の恋人でもない人間同士がこうもあちこち触れ合っていいものではないだろうしと思うと落ち着かず。それにとにかく、何だかゾワゾワしてしまってそれもまた落ち着かないのだ。
現に今など、背後から抱きすくめられた形のリアムの足の間には祐介の足が入ってきている。これは拙い、拙いぞリアム!
リアムはもう後はひたすら目覚まし時計が鳴るのを待った。待って待って、そしてそれがようやく鳴り始める。
ジリリリリ、とかなりうるさい音を立てているが、祐介はピクリともしない。
「祐介、ほら起きろ、朝だぞ!」
「うん……あとちょっと」
「あとちょっとではない、起きろ!」
「……ぐー」
「あーもう! 起きるのだ!!」
さすがに苛ついてしまい、リアムが大きな声を出すと、祐介がびくっと身体を震わせた。
「えっ」
起きた。ようやく起きた。半身を起こし、驚いた様にリアムを見ている。自分の足がリアムの足の間に挟まっているのに気付いたのだろう、そっと抜くと、腰に回していた手をどけた。
ようやく解放だ。リアムは大きな大きな溜息をつくと、起き上がった。寝不足で少しふらふらする。
ぼんやりと座り込みただリアムを見つめている祐介に向き直ると、額を人差し指で小突いた。
「全く、二回目だぞ!」
「あの、いや、その……」
とても驚いた顔をしている。何にそんなに驚いているのか。すると、祐介の顔がくしゃっと歪んだ。
「ど、どうした祐介!? 腹でも痛いのか?」
「……消える夢を見た」
「え? 何が消えるのだ?」
泣きそうな顔の祐介が、リアムに物凄い勢いで抱きつき、肩を震わせた。
「怖かった……」
訳が分からない。だが、この反応が尋常ではないものなのはリアムにも分かった。まるで子供の様に縋り付く祐介の背中をトントンと叩いてやるが、触れる祐介の腕に鳥肌が立っているのが分かってしまい、本当に何かが怖かったのだと思うといたたまれなくなった。
「隣からいなくなった気がして、それで」
「隣? 私のことか?」
祐介がこくこくと頷く。そして、掠れた声で祐介は続けた。
「勝手にどこかに行かないで。お願いだから」
「ははは、何を言っておる。私が一体どこへ行くというのだ。ここの他に行く所などないというのに」
「元の世界に、帰らないで」
「え……」
「帰れる様になったとしても、帰らないで」
「祐介……」
元の世界に戻れるとなった時、果たして自分は何を選択するのだろうか。その可能性について考えたことなどなかったリアムは、それ以上何も言うことが出来なくなってしまった。
次回はサツキバージョン。




