魔術師リアム、説明を受ける
ようやくリアムの目をちゃんと見て、祐介が話し始めた。
「とりあえず、勝手に出歩くのは当分禁止ね」
「何故だ? フルールアレの魔法を使えばいつでも帰宅出来るぞ、心配はない」
ひく、と祐介の頬が引き攣った。笑顔が歪んでいる。
「そのフルールアレとかはよく知らないけど、サツキちゃん突拍子もないことするから、駄目」
「過保護だな、祐介。そんなだと恋人にうざがられるぞ」
「恋人はいません」
「そうか……」
「憐れむ様な顔、やめてくれる?」
コホン、と祐介が咳払いをした。
「とりあえず明日から三連休あるから、その間に家のこと、一般常識、会社のこととかを一通り説明するから」
「私に常識がない様な言い方をするな」
「ないでしょ」
即答された。
「大体魔法魔法って、本当にそんなのあると思えないし」
呆れた様な祐介の言い方に、リアムはムッとした。
「祐介、私は長年その魔法で生計を立ててきたんだぞ、さすがにそれは失礼だろう」
「じゃあ見せてよ」
「……さっき服を片付けるので使ってしまって、今日はちょっと」
「ほーらね」
そら見たことか、といった顔をされ、リアムはムキになった。腰に手を当て、もう片方の手の人差し指でビシッと祐介を指した。
「明日! 明日は回復している筈だから見せてやる!」
「ふうん? じゃあ僕が言ったことやってよね」
「任せろ! 私は名のある魔術師だぞ!」
「……ふう」
「そこで溜息をつくな」
何だか調子の狂う奴だが、今頼れるのがこいつしかいない以上あまり無下にも出来ない。
「とりあえず今夜は遅いから、お風呂の入り方とか、冷蔵庫とか使いそうな所の説明をしたら寝よう」
すると祐介がリアムに顔を近付けてきた。
「な、なんだ」
あまりジロジロと見られると気持ちのいいものではない。ムズムズしてきた。
「サツキちゃん、お化粧してるよね?」
「化粧か……知らん」
がく、と祐介が頭を落とした。
「えーと、多分してるけど、それは化粧落としをきちんとしないと肌荒れします」
「ほう」
「……多分化粧水したりもしてると思うんだよね、さすがに」
「それは一体どういった物だ」
「ていうか、次の出社の時にお化粧ってどうするの?」
「私に聞くな」
「……まだまだ寝れないな……」
また独り言だ。よく分からないが、この世界で守らないといけないルールでもあるのだろう。それにしても疲れた。リアムは足を組み直すと、伸びをしながら大きな欠伸をした。
「あのさ、短パンで胡座かかないでよ」
段々うるさく感じてきた。
「家で寛ぐ位いいだろうが」
はあ、と祐介の大げさな溜息がした。こいつも仕事終わりの様だし疲れているのだろう。
「祐介、風呂は明日でいい。今日はもう寝たい」
なんせ一回ドラゴンに焼かれて死んでいる。
「じゃあ、顔は洗った方がいいよ。荒れるから」
「分かった。どうすればいいんだ?」
祐介の頬が、またひくっと引き攣った。
次回はサツキバージョンです。




